第1章5話:キャンピングカーをつくろう!



(まず作るのは……移動手段だね)


歩いて移動するのは時間がかかる。


この世界の一般的な移動手段は馬車だ。


しかし、私は馬車など作るつもりはない。


馬車を作っても馬を買う余裕がないからだ。


ならば馬がなくても走行できる自動車を作るしかないだろう。


旅をするための自動車といえば―――キャンピングカーである。


(キャンピングカーなら、車の中でアイテム錬成をすることもできるしね)


今後もどんどんいろんな道具を錬成していかなければならない。


そのためのアトリエが必要である。


旅も、生活も、アトリエも、全てのニーズに応えてくれる車。


それがキャンピングカーであった。


「というわけで……」


製作開始だ……!


前世でも車なんて作ったことはない。


しかし、作りたいものの構造をある程度把握していれば、錬金魔法がそれを補助してくれる。


前世の私は工学部生だったし、何より小さいころから、この手の製作には慣れ親しんできた。


自動車の原理や構造に関する知識は記憶してある。


問題なく作ることができるだろう。


「まずは……」


――――自動車づくりに当たって、最初に必要なものは何か?


そう、設計図である。


どんなものを作るにあたっても初めに製図をしなければならない。


前世の大学でも死ぬほど図面を書かされたことを覚えている。


しかし異世界では、一から製図をする必要はない。


錬金魔法を使えば、一瞬で図面を作成することができるからだ。


頭の中に完成形のイメージがあることが前提となるが、それさえあれば製図自体は一瞬で終わるのだ。


私はすでにキャンピングカーの設計図が頭の中に出来上がっていた。


それを錬金魔法で、羊皮紙のうえに投写する。


これで製図は完了だ。


(次は材料だね……)


自動車の材料は何か?


自動車は、鉄で作られている。


アルミが使われることもよくあるが、基本はやはり鉄である。


しかし、ただの鉄ではない。


炭素を混ぜた鉄を使う。


実は、鉄に炭素を混ぜることで強度が上がることが知られている。


これを炭素鋼といい、自動車に使われるメインの素材である。


なので、まずは手持ちの鉄を炭素鋼に変えなければならない。


(でも、炭素鋼以外にもたくさん素材が必要なんですよね)


たった1台の車を作るのに必要な部品の数は膨大である。


街で買い集めた素材だけでは自動車の部品は作れない。


しかし錬金魔法を使えば、素材を揃えるのはそこまで難しいことではなかった。


錬金魔法は「素材の変換」をすることができるのだ。


たとえば鉄、銅、鋼、真鍮はそれぞれ相互変換が可能である。


つまり鉄があれば銅に変換できるし、銅があれば鉄に変換することができるということだ。


この処理を【素材変換】という。


このように、一つの素材があれば、他の素材も手に入れることができるわけだ。


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