第1章4話:森へ
「さっそくですが、お嬢様? 一つ説教をしてもよろしいでしょうか?」
「……なんですか?」
「一人で旅に出るつもりだったのですよね? 護衛の一人もつけずに、フィールドに出てはいけないでしょう!?」
ああ、そのことか。
アリスティの心配はもっともだ。
一応、軍人の娘として育った私はそこそこ戦闘能力がある。
とはいえ才能がないと断じられるぐらいだ。
凡人の域を出ず、フィールドを気ままに歩けるほどではない。
しかし、今回に限っては、どうやら誤解があるようだ。
私は弁解することにした。
「護衛はあとで雇うつもりでしたよ。ちょっとそこの森に用があったんです」
私は視界の右側に広がる森を指差した。
そこは魔物が生息していない森。
なので護衛ナシでも安全に散策することができるのだ。
「森……ですか。いったいどんな御用で?」
「ふふ。それは見てのお楽しみですよ」
私がにやりと笑う。
アリスティは怪訝そうに首をかしげた。
「とりあえず森にいきましょうか」
私がそう言って歩き出す。
アリスティが私の斜め後ろをついて歩いてきた。
森に入る。
明るい陽射しが差し込む、穏やかな森である。
聞こえてくるのは小鳥のさえずり。
緑豊かで、澄んだ空気に満ちていた。
「あ、見えてきましたね」
前方の木々が終わる。
現れたのは、森に囲まれた小さな草原である。
半径300メートルほどの草原。
草原の入り口で立ち止まった私は、周囲に人がいないことを確認する。
それからアリスティを振り返った。
「ここで【アイテム錬成】を行います」
アイテム錬成とは、錬金魔法を用いたアイテム製作のことである。
アリスティはきょとんとして尋ねてきた。
「こんな場所で錬成ですか?」
「ええ。まあ、アトリエも失いましたしね」
いまさら屋敷に戻ってアトリエを使う、なんてことはできない。
私はアリスティに命じた。
「アリスティは、見張りをしていてもらえませんか? ここは魔物がいませんが、万一、現れたりしたら厄介ですからね」
「はぁ……承知いたしました」
アリスティは困惑の色を示しつつも、素直に従ってくれる。
そして周囲の警戒をはじめた。
さてと。
私はアイテムバッグからシート代わりの布を取り出す。
それを地面に敷いた。
さらに工具と素材を出して、布の上に置いていく。
準備は整った。
さあ、いよいよアイテム錬成の開始だ……!
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