迎えに来てくれる女子っていいよね(筆者の個人的な感想です)
寮の前で坂上さんと別れたころ、俺はエレベーターに乗って自分の部屋に向かっていた。
とりあえず自分の部屋を鍵で開けて中にはいる。でっか。マンションみたいな感じの部屋を想像してたけど、もっとでかい。そして綺麗。いつも住んでた家が小さい一軒家だったから余計に興奮する。最高かよぉぉぉ!!とりあえず中を探検する。
「とりあえず荷物はっと。」
自分の荷物とか全て家に置いてきてしまった。仕方ないけど……。探検している途中に見つけたけど生活必需品は全て置いてあった。無茶苦茶大きくて画質のいいテレビ。横たわって見るとふわふわのベッド。エアコン。台所。なにこれ。最高かよ!
部屋を一周してきて、ようやく気が済み、ベッドに座り込み今の自分の状況を頭の中で整理する。
この状況になったのは不本意だけど、俺が異能を使えて、ヴィランと戦う日が来るなんて夢にも思っていなかった。だけど唯一気掛かりなのは、母親の存在だ。母親はシングルマザーで女手一つで俺のことを育ててくれた。だからこそ俺のことを本気で心配してくれていると思う。迷惑かけたなぁ。謝らないと。
ただそれが叶うのはここで三年間を終えてからになると思う。今頃どうしているかととても心配になる。
そんなこんなで思案していると、玄関のチャイムがなる。俺は急いでベッドから飛び起き、少し服を整えてから玄関を開ける。
そこにいたのは―――
男子とも女子にも取れる中性的な顔立ち。背は小さめ。とても優しそうで、坂上さんが着ていた制服と同じ服を着ていた。手には、大きな紙袋を持っている。
「あの。今日引っ越して来たんですよね?」
「そうですけど」
「学院長に制服を渡すように言われて来たんですけど。」
そういえば制服はどこにも置いていなかった。紙袋を素直に受け取る。
「あぁはい。ありがとうございます」
「そういえば、特別クラスに転入するんですよね?」
「いや、何も聞かされていないです」
「学院長がそうおっしゃっていたので。僕も一緒です」
「そうなんですね。これからよろしくお願いします」
「こちらこそです。あと、朝は迎えが来るらしいので来るまで用意して待機するようにと」
「分かりました。ありがとうございました」
「いえいえ。では失礼します」
パタンとドアがしまった。それにしても可愛くて、喋り安い人だった。ズボン履いていたけど。まぁ男子だけど。男子だけど。
それからテレビを見たり、風呂に入ったりして時間を過ごした。いつのまにか10時になっていたので、電気を消してふとんの中に入る。ベッドの性能が良かったのか、張り詰めていたのかは知らないが今日はぐっすり寝むれた。
朝、8時俺は起床した。いつ迎えに来るかは分からないので、とりあえず顔を洗ったり、やるべきことをやって制服に着替える。テレビを見て時間を過ごしていると、不意に玄関のチャイムがなった。俺は急いで出る。
「そろそろいく」
「分かったけど、迎えって坂上さんかよ」
「私じゃ不満?」
「そういうわけじゃないけど」
俺は苦笑する。坂上さんが来るとは思っていなかった。
「ならいいけど」
そうぶっきらぼうにいってエレベーターに乗る。
「なにしてるの?」
「あぁ悪い」
俺は坂上さんを追いかけ、俺もエレベーターにのる。
坂上さんはエレベーターのボタンをぽちぽちと押す。何て言うか可愛らしかった。エレベーターは扉が閉じ、下に向かって下降し始める。その間俺達は何も喋らなかった。こういう無言は不思議と嫌いじゃなかった。
エレベーターを降り、寮の自動ドアを通り抜けると、学院へと向かう生徒がちらほらと見受けられる。当り前だが全員聖徳の制服を着ている。
坂上さんと昨日一緒に通った通学路を通っていく。不意にちらほらとこちらに視線を向ける生徒がたくさんいることに気づいた。
「坂上さん」
「なに?」
「なんか、見られてる?」
「気にする必要はない」
坂上さんはそういうけど正直に言って無茶苦茶気になる。通学路を歩いてる7割の生徒が俺達のことを見ている。ヒソヒソ話をする生徒もいる。ヒソヒソと話している生徒に聞き耳を立てる。
「おい!あれ。氷姫じゃねぇか!?」
「え?ほんとだ!」
「隣にいる生徒は誰だよ!!」
「見たことないよ!」
「だよなぁー!」
「僕の氷姫がぁぁぁーー」
危ないことを言っている奴もいる。ってお前のじゃねぇよ。俺のでもないけど。
「坂上さん氷姫ってなに?」
「気にする必要はない」
とさっきと同じ抑揚の付け方で話す。坂上さんの方を見ると、頬をぷくーと膨らまして、怒っている。あんまり触れないほうがいいと勝手に判断して。話題を変えようとする。
「ごめん」
「気にするひつよ―――っぐへ」
と横から女の子らしからぬ声が聞こえる。見れば、女の子が抱き着いている。
「ひなたちゃーん!!」
「もうまたですか。やめてくださいと言ったはずです」
そういいつつも、顔が緩みきっている。あぁ坂上さんって友達がすくなかったんだなと一瞬で理解する。坂上さんの表情の変化に驚きつつも、会話を見守る。
「だってーひなたちゃんがかわいかったんだもん」
「……はぁ。分かりました。次からは声をかけてください」
顔は嬉しそうにしていて、声もちょっと上擦っている。何て言うか俺との差別が酷い。いつもならもっと無表情にぶっきらぼうに喋るのに。敬語とか使わないのに
「百合ぃぃーーーー」
とか後ろで言いながら失神している奴もいる。気持ちはちょっと分かるけど次からは自重しような。
「分かったよ!ん?あれ、ひなたちゃん彼氏出来たの?」
俺の方を見てそういう。彼女じゃないしな。訂正するか。
「ち、ちち違います!!」
「違うぞ」
坂上さんの訂正の仕方にちょっとだけ気持ちがへこむ。
「んー?そんな訂正しなくても……怪しい!」
坂上さんに抱き着いていた女の子は俺と坂上さんをじーと観察しはじめる。
「違いますよ!」
「まぁ、いいけど!それでどうしたの?」
「この人が特別クラスに転入するので案内ですよ」
「へー。私達と同じなんだね!私は天崎翼だよっ!翼って読んで!」
私達ってことは坂上さんも同じクラスなのかよっ!そういうことは全く話してくれなかったしなぁ。
「俺は月影壊。三年間よろしく」
「それにしても壊くんいきなり特別クラスに転入って凄いね!!」
「そうなのか?」
「そうだよ。普通は特別クラス以外の所からスタートになるんだもん」
「そうか。まぁ異能もそこまで強いものでもないんだけどな」
「同じクラスなら異能はだいたい分かっちゃうし……楽しみにしておくよ!」
「期待に添えたらいいけどな」
喋ってなかった坂上さんが気になったので見ると、涙目になっていた。あぁ、喋りたかったのか。一瞬で理解する。以外と可愛い所あるんだよな。
今度は坂上さんを入れて話していると、そんなこんなで学校についた。
「じゃあ私はこれで!」
と翼がいって小走りで駆けていった。
「じゃあ私達は学院長の所へいく。ついてきて」
一瞬で喋り方が戻り、頬が緩んでいたのを直す坂上さんに俺は苦笑する。歩き始めた坂上さんに俺はついていく。階段を2階上がったところで右に曲がる。するとすぐに学長室っていうものが見えはじめた。坂上さんはノックして
「連れてきました。」
と短く言う。
「分かったはいってもいいよ」
と学長がいうと、「失礼します」といってお辞儀する。それに習って俺もお辞儀する。学長室に入るとそこにいたのは、スーツをピッタリ身につけた美人な大人だった。
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今回の話は少し長くなってしまいました。描きたいところが多かったためです。ここまで読んでくださったかたありがとうございます!!
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