転機
俺は目を覚ました。あの時心臓を貫かれて死んだはずだった。俺の目の前にはトイレや水などのいろいろな生活用具がおいてあり、小さなひとつの部屋に俺はいるようだった。ドアは鉄以上の硬度の素材を使っており、開けれる気が一切しなかった。閉じ込められているみたいだった。
『起きたかね?』
その時、何て言うかアナウンス?みたいなものが聞こえた。一応はいと返事をする。
『そうか。それはよかった。じゃあ今の君の状況を説明しよう』
『君はヴィランとして捕縛されたんだよ』
「は?」
ヴィラントシテホバクサレタ?ないない。俺は生まれてからこのかた一度も悪いことはしていないと自負している。というかヴィランの人質となっていた女の人を助けようとしていた。逆だろ逆。普通表彰があってもいいものだろ。
「いや、捕まるって?」
『君は人を殺したんだ。まぁヴィランだがね』
「へ?ヴィランに殺されかけてたんですよ?」
俺が?ヴィランを?あの時は無我夢中でヴィランを殴ったのだが、それで死ぬようなやつではなかった。
『それについては、見ていた人に話を聞いてある。』
「じゃあなんで!?」
『一般人がヴィランを殺すことは法律で禁止されていることだ。これを許可すると憎しみの連鎖になってしまうからね。まぁ正当防衛の話ならオッケーだが』
殺されかけていたから殺す。これは正当防衛に値するはずである。それも相手はヴィラン。殺した記憶は無いのだが。
「正当防衛なはずです。ていうかそういった覚えがないです」
『正当防衛か。君はヴィランに殺されかけていたと言ったがその後の記憶はどうだね?そしてその中でヴィランは一瞬で跡形もなく死体になったと。』
記憶。もやのようなものがかかっており、なぜだか知らないが思い出すことは出来ない。
「先ほども言った通りないですが。何かの間違いです」
『私が思うに君は暴走状態にあったと考えられる。記憶がないのもそれで頷ける』
「暴走状態ってなんですか?」
『暴走状態とはね、異能を使うときたまに起こる現象なんだよ。怒りや悲しみや死にそうな状態になったとき魂が一時的に体を乗っとることを指すんだ。そうなることで記憶はなくなり、自分の魂が持つ最大限の力を出せると言われているよ』
「それはおかしいはずです!だって俺は―――無能力者何ですよ!?」
『いいや、違う。君は無能力者のはずがない。異能を使えるはずだ!!私が作り上げた機械で調べた。君はきちんと能力をもっている。』
「使えません。生まれてから一度も使ったことがないんですから」
『使えるはずだ。使ってみなさい』
俺はそれを聞いて頭の中で違うと思いつつも使おう念じてみる。すると――
「え?」
俺は炎を纏っていた。
「いや、そんなはずはないんだよ!!」
炎に命じると炎は弾丸のように打ち出された。まるで――最後に戦ったヴィランと同じ異能を使えていた。現実ではないと思い、思いっきり頬をつねってみる。え?現実だ。
『やはり、使えるようだ。そこでだ。君の能力を見込んで君に二つの選択肢をあげよう。君の命は私が握っていると思ってもらって構わない』
『一つ目だ。君を今から処刑する。まぁ簡単だ』
――処刑。おかしいだろ。ひとを助けようとしただけで殺されるなんて。
『二つだ。君は異能学院の生徒として、ヴィランと戦う。ただまた同じように暴走して人を殺そうとしたり、裏切ろうとした場合、遠慮なく君を殺す。』
『君の選択肢は二つに一つだ。さてどうする』
俺からすればこの選択肢はひとつしかない。正直いって怖い。怖くて堪らない。だがあの時、人質を助けようとしたとき、気持ち良かった。その気持ち良さが愛しくて愛しくて堪らない。だから俺は――
「分かった。俺は異能学院の生徒としてヴィランと戦う」
『その答えが聞けてよかったよ。期待しているよ。ただ一応確認はしないといけない。君が裏切るかどうかだ。別室で取り調べを受けれる。話はそれからだ。とりあえずはドアを開けよう』
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読んで頂きありがとうございます!星やレビューが筆者の励みになります!
ここから次の戦闘シーンに入るまで五話ほど先になります!
新作のVRMMOを書きました!!
『最強の生産職~ユニークスキルのせいで不運過ぎます!!~』
というものです。評価して頂けると幸いです。
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