第陸話 ダンボールをかぶれば良かったと思う
急いでいるし、リシュナちゃんから「すぐに脱ぐのじゃ」と言われたので脱いだと言うのに、当のリシュナちゃんは着慣れないパジャマだからかモタついているせいで、あたしは全裸待機する羽目になった。
焦っているせいか余計に引っかかり脱げなくなっているリシュナちゃんを脱がせてあげて準備完了。
「で、どのくらいの時間透明でいられるの?」
「わからぬ。この世界の魔素の少なさによってどう影響されるのかまったくわからぬのじゃ」
「うーんしょうがないわね。
で、あたしはどうすれば良いかしら?」
「妾と手を繋いでおれば良い。
逆に妾から離れたら、その瞬間に解けてしまうから気を付けるのじゃぞ」
「え!?それリスク高すぎない!?」
「緊急事態じゃ、そんな事を言っておる場合じゃなかろう。急ぐぞ!」
「う、うん。絶対に手を離さないでね」
「と言うか、妾は場所が分からぬから
「そうよね。そうしないとよね」
いきなり、制限時間不明のあたしの尊厳と人生を賭けたハードモードミッションが始まった。
~~~~~~~~~~
野次馬が群れて障害になるかと思っていたけど、まだ時間が早かったからか、警察がちゃんと誘導をしているからか、壁になるような人混みもなくすんなり目的の魔王が立て篭もる民家へたどり着けた。
建物に入るや否やリシュナちゃんは透明化の魔法を解いてしまった。
「なんで魔法を解いちゃうの?
この家の人に裸を見られちゃうでしょ!」
声を抑えつつも責め立てるようにリシュナちゃんへ言った。
「中に入ったのだから別に良いじゃろうと思ったのじゃが、まったく奏は気にしいじゃのう」
「日本人ならみんなそうなの!
せめて身体を隠せる何かを拝借するまでは透明にしてよ」
「まったく緊張感のないやつじゃ。
ここには魔王がおるのじゃぞ?」
「そうだけど・・・ちょっと、そこお風呂場みたいだからバスタオルがあるかも」
思った通り、お風呂場の手前の脱衣所にバスタオルのストックが有ったのでお借りすることにした。
リシュナちゃんはそんなものは邪魔だから要らないと言い出したものの、日本では最悪の場合だと警察に捕まって処罰されると言うと渋々だけどバスタオルで胸からVIOラインにかけてを隠してくれたのでホッとした。
~~~~~~~~~~
更に中へ進むと、数人の人影が見えてきた。家の人達は憔悴しきっているようだけど、魔王からわからない言葉で捲し立てられているせいか落ち着いていないようでもある。
「リシュナちゃん、魔王以外の人を眠らせたりなんてできないかな?」
「できるぞ」
「それじゃあ、家の人を眠らせてから部屋へ踏み入りましょう」
「わかったのじゃ」
リシュナちゃんは少し鋭い目つきになってから部屋の中に目を向けるとこの家の人達が倒れていった。
「急に倒れちゃったけど、ほんとに寝てるだけ?」
「ああ、寝てるだけじゃ。
ほれ、そんな問答をしてないで中に入るぞ」
特に警戒することもなく部屋に踏み入っていくリシュナちゃんが魔王へ向かって話しかけた。
「○▼※△☆▲※◎★●○▼※△☆▲※◎★●」
「☆▲※◎★●!○▼※△☆▲、※◎★●○▼※△!!」
「☆▲※◎KANADE★●」
「※△☆КАНАДЭ▲※◎★●○▼?」
「◎★●○。
▼※△☆▲・・・
・・・おい、奏。これから魔王が意思疎通の魔法を使って、お主にも理解できるように話をするから聞いてくれ」
「うん、わかった」
リシュナちゃんから説明を受け、魔王の方を見たらリシュナちゃんと昨夜会った時のような感じで脳内に声が響いてきた。
『貴様が黄金の魔女リシュナ・レヴェルトのこの世界での守護者カナデだな?』
「名前は奏であっているけど、守護者ではないと思うわ。
昨日の夜リシュナちゃんと会ってから一緒に行動しているけど、それは守護ではないでしょう?」
『それはそうかもしれぬな。ところで、折り入って貴様に頼みたいことがある』
「聞けることなら良いけど・・・リシュナちゃんも良いかしら?」
「妾は構わぬぞ。妾もかなり力が抑え込まれているが、魔王の方が深刻じゃ。
今なら妾ひとりでも魔王を退治してやれるぞ」
『リシュナ・レヴェルト。停戦する約束をしたばかりであろう』
「そうじゃな。まぁ、この通り今の魔王は魔素のないこの世界では妾ですら脅威に感じるくらいには弱体化しておる。
だから奏の安全は妾が保証してやれるぞ」
『その、リシュナ・レヴェルトの言う通りだ。そんな状況なこともあり貴様に頼みたい』
「まぁ、内容によってだけど・・・とりあえず、言ってみて?」
『うむ、しばらく吾を匿って欲しい』
「は?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます