第8話 初めてのお出かけ
いつもより軽い足取りで家に帰り、素早く風呂を済ませてからふとスマートフォンを開くと、1件の通知が入っていた。
誰だろうか。
僕がパスワードを解除し、メッセージアプリを開くと、そこには先日追加した彼女のアカウントからのメッセージが入っていた。
僕は彼女とのメッセージ画面を開く。
『明日、時間は10時に〇〇前ね!遅れるなよー!?
じゃ、おやすみっ😴』
僕はそのメッセージを見て、
『君の方こそ遅れないでね。おやすみ。』
と送った。初めて女の子とメッセージで会話をした。直接顔を見合って話せないからこそ、僕はメッセージに苦手意識を持っていたが、彼女はメッセージ越しでもどんな表情をしているのか容易く想像できるため、他の人とメッセージをするよりも緊張しない。
僕はスマートフォンを閉じ、ベッドにゴロンと寝転がる。
明日はどこへ行くのか、僕から提案してみるのはありか。そんなことを考えていると、次第にウトウトし始め、僕は気が付かないうちに寝てしまっていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
そして今日、僕は初めて女の子と2人で出かけるのだ。昨日の夜ちゃんと心の準備をしてから眠れなかったため、朝起きてから、今の今までずっと心臓がバクバク言っている。
どうやら僕は珍しく緊張しているようだ。
僕は今日、いつもより早く起きて、いつもの休日よりは何となくオシャレをした。歯だってちゃんと磨いたし、髪の毛だっていつもよりかはしっかりセットした。
僕だって高校生だ。女の子と出かけるとなればそれなりに意識はする。
……のだが。
今の時間は10時半。
僕はちゃんと10時にここに着いていた。
真夏の炎天下の下、僕は30分もここでずっと彼女のことを待っている。もうそろそろ限界だ。ただでさえ運動不足なのに、急に外に放り出されて30分も放置だなんて、僕にとっては地獄でしかない。
彼女から僕に遅れないでねと言ったのに、やっぱり彼女には振り回されてばっかりだ。
もうあと10分待ってこなかったら帰ろう。僕はそう思い、あともう10分ここで待つ決心をした。
……五分経った丁度その時、揺らぐ景色の中、彼女の姿が見えた。彼女は僕に大きく手を振っている。
35分も遅刻しているのに、よく悪びれもなく笑顔で手をふれるものだ。
彼女は白のタンクトップに白のジーンズ、そして上にオレンジのシャツのようなものを着ていた。
なんとも涼しげで、明るく、彼女らしい服装だなと思った。
だが、彼女はそれを無駄にするほど汗をかいている。
「ごめんー!ほんっとにごめん!わざとじゃないのっ!」
彼女は額に湧き出る汗を拭きながら言った。
「いや、大丈夫だよ…。」
僕も、彼女の汗だくな姿を見ていたら、怒りの感情はどこかへすっ飛んでいってしまった。見るからに僕より彼女の方が疲労困憊なのだ。
「いやさ、本当は電車で来ようと駅に行ったんだけど、スマホ忘れた事に気付いて家に取りに戻って、もっかい駅に着いたら今度はSuica忘れて!もー最悪だよー!!」
彼女は疲れていそうだが喋ることは辞めずに一方的に僕に話してくる。僕は相槌を打ちながら聞いた。
「それは災難だったね。可哀想に。」
「可哀想にって!他人事でしょ完全に!」
「うん。所詮は他人事でしょ?」
「もー、本当に遥人君は意地悪だよねー。」
彼女は僕を意地悪だと言っておきながら笑っている。意地悪だと面白いのか?僕は疑問に思ったが、聞いたらまた面倒くさくなると思い、心に封じた。
「じゃ、本題!今日私が遥人君を呼び出した理由!!それはぁ…………」
彼女は僕の顔をちらちら見ながらニヤついている。
「そんなにためなくていいよ、早く言って。」
「じゃもう言うよ?ジャカジャカジャカー…ジャンッ!映画を見るためです!!」
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