第7話 誘われる
僕たちは一緒にお昼を食べた後、真面目に午後の授業を受けた。いや、僕だけ真面目に授業を受けた。
彼女はもうクラスに馴染んでおり、授業中も騒がしいタイプの人間だった。
コミニュケーション能力が欠けている僕にとっては、1番苦手なタイプの輪に入っている。
でもなぜだか、彼女だけは普通に話すことが出来るが。
……そんなこんなで今日の授業が全て終わり、僕がカバンを持って帰路につこうとしていた時、後ろから誰かに勢いよく押された。
「うわっ!」
僕はそう言って前につんのめる。人をいきなり押すなんて、すごく非常識だ。僕はそう思って後ろを向いた。
目の中に入ってきたのは、あの彼女だった。
「……君か。なら納得できる。うんうん。」
僕は自分を押してきた犯人が彼女だと知り、ひとりで腕を組んで納得した。彼女ならどんな変な事をやってもおかしくない。
彼女はそんな僕の様子を見て、笑いながらバシンと強く、僕の肩を叩いた。
「もう!なんで納得してるのよ!!!」
彼女は楽しそうに笑っている。僕の肩は彼女に叩かれたおかげで痛むのに。僕は彼女と目を合わせて、「君は本当に自由だ。君に叩かれたおかげで僕は肩が痛いよ。」
僕はわざとらしく肩を擦りながら言った。
彼女は僕を見て、
「嘘!そんな強く叩いてないつもりだったー!ごめん……」
と悲しそうな顔をして言った。僕はなんだか罪悪感に苛まれ、逆に謝った。
「え、えっと、責めるつもりじゃなかったんだ、ごめん……なんか……」
僕がそう言うと彼女は直ぐにいつもの笑顔になった。全く、ほんとに切り替えが早い。
僕が肩を竦めると、彼女がポンと手を叩いた。
「そうだよ!君に言いたいことがあったから呼び止めたんだ!!」
「何を言いたかったの??」
「今週の土曜!!つまり明日!出かけようよ一緒に!」
彼女はキラキラした目で僕に言ってくる。
僕はいきなりの事に驚いて目を丸くする。まさか彼女のような人が僕を誘うなんて。
「え、僕の聞き間違いじゃないよね?君は僕と遊びたいって言ったの?」
「聞き間違いじゃないよー、君も素直に受け取ればいいのにー!!出かけよ!いいよね?」
彼女は一応僕に聞くような形で誘ってくれているが、ほぼほぼ強制のようなものだ。第1、僕はちょうどその日なんの予定もないし、断る理由がない。
「丁度予定がないし、いいよ。」
僕がそう言うと、彼女は元から大きな目をもっと大きく見開き、キラキラと輝いた顔で喜んだ。
「ほんと!?ぶっちゃけ断られると思ってたから嬉しい!!んじゃ、決まりね!また明日ー!」
彼女はそう言いながら、走って僕の前を通り過ぎる。
彼女の自由奔放さには少し呆れるが、それに慣れつつある自分もいる。なんだか複雑だ。
……でもまあ、明日の楽しみが出来たかもしれない。
「今日は早く寝よう。」
僕はそう独り言を呟いて、自宅へと歩みを進めた。
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