第4話 頑なに動かない
家に着いてから、僕は制服を脱いで部屋着に着替えてスマートフォンを開いた。
そこには彼女からのメールが届いていた。
『今日はごめんねぶつけちゃって!ちゃんと冷やしてね!!また明日学校でね〜!!』
また謝っている。僕はため息を着きながら返事のメッセージを打った。
『大丈夫ですよ、また明日。』
そう送って僕は夕食を食べに行った。
ー次の日の朝
僕は今日は早めに学校に着いた。
なぜなら今日は委員会の仕事がある日だからだ。
僕は生活委員で、週に一回、朝のあいさつ運動というものをやっている。内容的には、生徒たちが登校する時間帯に下駄箱に行き、朝来た生徒におはようございますというだけだ。
狙いは生徒が挨拶するようにするためなのだろうが、ぶっちゃけ無視する人の方が多い。
別にこの仕事をやっていても楽しくはないが、引き受けてしまった以上、最後までやりきらなければならない。その思いだけでやっている。
僕は溜息をつきながら階段を上がり、荷物を置いてまた階段をさがる。まばらに真面目な生徒が学校に到着しているのがわかる。朝から勉強でもするのだろうか。偉いなと感心しながら僕は、ぼーっと下駄箱に立った。
まだ朝早いからか、あまり人は登校してこない。
僕は退屈になって横にあった柱に寄りかかり、うとうとしていた。
「………おーい!おはよーございまーす!!」
「うわっ!!!!」
僕は廊下中に響き渡るほどの悲鳴を上げた。
僕を驚かした張本人は逆に僕の悲鳴に驚いたのか肩を竦めている。
さっきまで半分寝ていたせいで視界がぼやけているため誰かわからない。
僕が目をこすって誰が驚かしたのか確認しようとすると、先に相手が名前を名乗ってきた。
「もう!驚きすぎ、蒼空だよ!寝てたでしょ、遥人君。」
あぁ、彼女か…と僕は謎に安心してしまった。
「君か、驚かせないでくださいよ。」
「だって寝てたじゃーん、起こしてあげたんですぅ〜感謝しなさいよね!」
彼女は手を腰に当てて僕に言った。
「それと!敬語やめてよ!」
「だから、落ち着かないんですってば!!」
僕も彼女の真似をして手を腰に当ててみる。
「あぁー!真似したな、このっ!」
彼女は僕を殴るフリをしてシュッシュッと自分で言いながら拳を振りかざしてくる。
僕はその時、久しぶりに笑った。
やっぱり彼女はおかしいが面白い。
そんなこんなしていると、ぞろぞろと人が校舎に入ってきた。僕はハッとして彼女に言う。
「そうだ、僕委員会の仕事中なんですよ。教室行ってください。」
彼女は不思議そうに首をかしげ、
「知ってるよ~、私遥人君が終わるまで待つから。」彼女はそう言って、僕が引き離そうとしても頑なに離れようとしないため、諦めて待っててもらうことにした。
「おはようございます、おはようございます」
僕は通り過ぎる人全員におはようございますと言う。それと一緒に彼女も「おっはよーございまーす!」と言っている。
「僕より君の方がいいんじゃないですかね。生活委員。」
「そんなことないってば!」
彼女はぺしぺしと僕の肩を叩いて笑った。
朝の仕事が終わり、待っててもらっていた彼女と一緒に教室に戻る。
彼女は1人で楽しそうに話している。僕はそれを相槌を打ちながら聞いた。
彼女は時々大きく笑ったり、少し悲しそうな顔をしたと思ったら怒ったような顔をして。とにかく喜怒哀楽がはっきりしている。
僕には喜怒哀楽の感情さえないというのに。
彼女といると、僕まで一緒にその感情を共有できるみたいで、嬉しかった。何より楽しかった。
前まで人と関わりを持ちたくないと思っていた僕だったが、彼女と出会い、彼女になら心を打ち明けられる気がしていた。
そんなことを思いながら歩いていると、直ぐに教室に着いた。
もうほとんどのクラスメイトが席についている。
僕たちも焦って急いで自分の席に着いた。
まだ、気持ちはワクワクしている。
こんなの、初めてだった。
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