第3話 くノ一しくらの夢

くノ一の⦅しくら⦆は、任務の悪徳商人の暗殺を終えて漆黒の衣服を身にまとい、屋根伝いに現場から逃走中だった。

瓦を踏む音も一切立てず、まるで地上を走っているような軽やかな足取りで闇夜をひた走る。


もうここでいいかとふわりと地上に降り立った。

「ふむ、血の匂いがするのう」

ギクッとした。誰もいないと思っていたそれがどうだ、血の匂いまで知られてしまった。殺らなければ!


短剣を構える。だが声の主は見当たらない。

焦った。お頭様に次ぐ腕前の持ち主と言われている我が見つけられない相手。

(我はここで死ぬのか?)


「心配するな。儂はそなたを殺そう等と思っていない」

「心を読むな!」

「ハハハ、それより追手が来るぞ早う行け」


「お前は誰だ‼一体」何者だ!!」


答えは無かった。

追手の足音が聞こえてきた。

[いたぞ!屋根の上だ。北に向かって行ったぞ‼」

それはさっきの男の声だった。

「我を逃がすために反対方向に追手を導いているのか……」


くノ一しくらは、その後何度かその声に助けられた。

そしてしくらは夢に見る。もっともっと修業を積みいつの日かあのお方のお姿をこの目に焼き付けられることを!。


(しくらよ、それは無理なことじゃ。儂はそなたの10代前の所謂先祖。今はそなたの守護霊として生まれ変わった存在じゃ。そなたがいくら強くなったとて儂に遭うことなど絶対に有り得ないことなのだから)

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