第25話 レイラが外に出ちゃった件

 戦利品の分配は愛姉と愛姉のカーヴァントが倒した分について、僕がまとめて魔石を換金した後に現金で渡す事となった。


 最初は何も受け取らないと言っていたが、せめて直接倒した分は貰ってよと妥協して貰った。

 愛姉が自分で売らず僕がまとめて売る事についての理由は、僕がギルドにて換金すると換金額の2割がボーナスとして愛姉の懐に入るからそれが1番得になるからだった。


 で、装備はどうするか・・・盾はゼッチィーニに渡し、ゼッチィーニに渡した盾は僕自身が持つ。


 鎧はこの場でアレクが着る事にしたが、服だけよりマシだ。

 基本的にラビリンスのドロップ品で装備が充実するならそちらの方が良いと思う。


 ドロップを回収し終わり次第ラビリンスを出る事にした。


「そうそう、斗升君はカーヴァントがそのままラビリンスを出ようとしたらどうなるか、実経験はないわよね?」


「カードになるんだったっけ?」


「出口にポトンと落ちちゃうから、斗升君は後ろから拾ってあげてね。悪いけど、レイラちゃんには付き合ってもらうわ。安心して。念の為私が手を繋いで外に向かって歩くから」


「レイラ、僕がちゃんと拾うから頼める?」


「勿論です。他の者はカードに戻しますか?」


「そうだね。レイラは警戒をお願いしたいな。モーモンは普通のナイトだから出口近くまで付き合ってね。それとドロップの武器と予備武器を渡すから」


 そこから次にラビリンスへ来た時に新たなカーヴァントに渡すであろう服や装備とするのに今僕がバトルスーツの上に着ている服と僕自身の剣、それと父の使っていたコンバットナイフ以外の武器を分散して託した。


 出入り口付近は他の人がいるかもなので、愛姉はラビリンスの外で色々話すと言っていた。


 愛姉もゼッチィーニとムミムナのスリーサイズを把握したとかで、もう少しマシな服を用意しよう!となった。


 僕はレイラとモーモン以外をカードに戻し、レイラとモーモンの手を引きながら魔法陣の中心にあるホールに飛び込んだ。


 勿論出た先はラビリンスの出入り口で、他の人は見えなかった。


「モーモン、レイラ達のようになりたいかい?」


 レイラが通訳してくれた。


「なりたいと言っていますが、ゼッチィーニが何故成長したのか不思議です。それでは暫しのお別れですね」


 僕はモーモンとレイラの頭を撫で、取りあえずモーモンをカードに戻す。


 カードに戻ったモーモンのカードをカードホルダーに入れ、腰に装着する。

 愛姉もカーヴァントをカードに戻したようだ。


「レイラちゃん、名前を呼んで貰えないけど、名前を呼んで貰ったのと同じようになるから怖がらなくても良いのよ」


「愛莉様、かたじけない。頭で分かって入るのですが、正直怖いです」


「じゃあ後ろに手を出して。僕もレイラの手を繋いで行くから、カードを紛失なんて事にはならないから」


「ありがとうございます!」


 そうして3人で手を繋いでラビリンスの外に出る。

 無事に【3人で】外に出られ、僕と愛姉はロッカーにて荷物を出す。


「斗升君、先ずはギルドに寄るわよ!さあ車に乗りましょう!」


 僕と愛姉は現実逃避して急いで車に行った。

 ラビリンスの出口付近で3階に降りて直ぐに出くわした探索者達が僕達をちらっと見たようで、ぎょっとしていた。


 愛姉は助手席側からレイラを911の狭い車内に押し込み、僕になるべくシートを前に出すように言っていたが、他の探索者が見えると愛姉は慌てて車を発信させた。


 少ししてから国道を逸れ、国道から見えない所で車を停めた。


「斗升君、た、大変よ!レイラちゃんが外に出ちゃった!出られちゃったわ!」


「愛姉、落ち着こうよ!ほら、ヒィッ、ヒィッ、フー!ヒィッ、ヒィッ、フー!」


「そうね。ヒィッ、ヒィッ、フー!、ヒィッ、ヒィッ、フー!って人を妊婦にすなー!」


「落ちついたようだね。でもどうしよう・・・レイラ、体はなんともない?」


「少しこの体勢は辛いですが、それ以外は大丈夫です。それより何故私はカードに戻らなかったんでしょうか?」


「分かってはいると思うけど、ここはラビリンスの外で人間の生活圏だよ。次にラビリンスに入るまでどうしよう・・・愛姉は家族と暮らしているの?」


「駄目よ。私の所だと母がいるから。斗升君の所に泊めてあげなさい」


「まあ、客間が1つ空いているから良いけど、そのう・・・下着とか買わないとだよね?」


「その辺は何とかするわ。ラビリンスに戻ればまたカードに戻す事ができるかしら?でも折角外に出て来たのに直ぐにカードに戻すのも可哀想よね」


「夜だと外に出ても大丈夫だと思うけど、確かに目と肌の色以外は人にしか見えないよね。それとこれは愛姉の力だよね?愛姉は二世なの?」


「どうかしら?私の母は初期のスタンピードの時に自衛隊の方と愛し合い私を身篭ったの。その後のスタンピードで記憶をなくしたのだけど、身元の手掛かりになる物は身に着けていなかったらしいの。数年後に記憶を取り戻した時にはその方は自衛隊の死亡者リストにあったそうよ」


「その人の名前は?」


「とてもではないけど聞けなかったわ。確かに最初のスタンピードってあの0号様がカーヴァントを発現した少し後の事よね。それならもうラビリンスに入っているわよね・・・そうかぁ私も二世だったか・・・じゃあ私の能力はカーヴァントを外に連れ出す力?」


「僕のはカードを合成する力だよ。レイラは10枚、ゼッチィーニは7枚。ムミムナは数枚、アレクも9枚だったかで合成したんだ。理屈や分かっている事でまだ話していない事は後で話すよ」


 道すがら愛姉がマスクとサングラスをホームセンターで買ってきた。

 また、化粧品も買ってきて、即席でレイラにラメなどの化粧をする。

 また、戦闘用のグローブを安物の探索者が買い物をする店で買い、あまり怪しまれない姿にした。


 探索者はぶっ飛んだやつもおり、パンク系の者もいる。

 顔を真っ白に染める者もいるから、サングラスをしていればそれ程怪しまれないはずだ。


「レイラ、外では僕の事を斗升さんと呼んで欲しい。様を付けると目立つからね」


「畏まりました。それでは斗升さんと呼びますね」


 大変な事になった。

 風曲の森ラビリンス出口に他の探索者が来たのが分かったので、レイラは自分が外に出た事が分かった途端に黙って僕と愛姉に付き従い、良いと言うまで基本的に喋らないようにお願いしていないにも関わらず何も喋らなかった。

いや、口を開けられなかった。


 カーヴァントを外に出す方法がというか、そういう能力の持ち主がいると分かると大騒ぎになる・・・

 頭が痛いです・・・・

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