第24話 異変を異変と思わない斗升
階段を降り、愛姉の言う通りの方向に進むと慌てて走ってくる探索者とすれ違った。
「やばい!あんたらも逃げろ!」
男女混合の高校生パーティーが何かから必死に逃げているようだったが、気の所為か見覚えのある顔があったような気がする。
一瞬だったから分からなかったが、試験の時に遠目で見た子と何となく似ている位の事だ。
ぱっと見真っ青で死を覚悟しているとしか見えなかった。
「来ます!」
レイラが告げる。
もちのもちっこで皆戦闘体制だ。
今すれ違った者達からの警告についてどうするか吟味する時間がなかった。
「10体以上です。もう曲がり角の所です」
「レイラは後方からまず槍を。ムミムナは愛姉に付き、怪我人が出たら治療を。モーモンは僕の護衛、ゼッチィーニはアレクをサポートしつつ殲滅!」
僕が叫ぶとゴブリンナイトが10体ちょい現れた。
なるほど。ランク3のラビリンスはランク3でもコスト4の魔物が普通に出るんだな。
と言う事は先の試験ラビリンスのようにコスト5かランク4の魔物がボスだな!うん。きっとそうだ!
愛姉も普通に身構えて武者震いをしているし・・・
しかし、愛莉は震えていた。
ば、バカな!ナイトはこのラビリンスのボスよ!何でこんなのが来るのよ!
今の私じゃ1体を倒すのがやっとよ・・・
くう!斗升君だけでも逃さなきゃ。
2階層の魔物の数が多いからおかしいと思ったのよね・・・
そんな愛莉の震えをこれからの戦いに対する武者震いと勘違いする斗升だが・・・
ドカッ!
先頭のナイトはゼッチィーニのシールドバッシュにて吹き飛ばされ、後続のナイトを巻き込みながら壁に当たると2体が消えた。
ゼッチィーニよくやった!
その調子だ!
ヒューン・・・ザシュッ!
倒れたナイトの喉元にレイラが投げた槍が刺さり、間髪入れずに2投目を放つと立ちあがって体勢を整えようと首を振るナイトを串刺しにした。
これで4体倒した。
後続のナイトは今いる少し広い空間に散って行き、愛姉の所に1体、僕の方には2体来た。
レイラは既に1番多くナイトがいる所に駆け出し、レイラ、ゼッチィーニ、アレクで約10体を相手にする。
僕とモーモンは各々1体と向き合い、1vs1となった。
鍔迫り合いとなり互角に戦っていた。
しかし、ムミムナがモーモンに加勢し、注意散漫になった所をモーモンが倒し、僕と戦っているナイトに何か喋り注意を引いてくれた。
均衡が崩れ、僕の剣がナイトの剣を弾き飛ばすとムミムナが拾う。
僕は武器をなくしたナイトを見てチャンスとばかりに袈裟斬りに剣を振るうと、もう駄目だと言わんばかりに手を前に突き出して来た。
容赦なく肩から入り、十分とは行かないも致命傷を与えたようで倒れ込みゴヒューゴヒューと苦しんでいる。
「済まない。恨みはないが倒させて貰うよ。トドメが欲しいか?」
返事が有る訳では無いが、うんと言ったような気がして喉に剣を突き立てた。
愛姉を見ると、愛姉の方も無事に終わったようだ。
レイラ、アレク、ゼッチィーニの戦いは10対3で厳しいと思ったけど、逆にナイトを蹂躙していった。
アレクは狂ったように両手で剣を握り胴を分断する。
ゼッチィーニは盾で剣を受け止めるとその隙に喉に剣を刺す。
そしてレイラは華麗に舞い、舞う度に首が飛んでいく。
「愛姉大丈夫?」
愛姉は頷く。
どうやら怪我はないらしい。
剣が何本か落ちていた。
不思議な事に魔物が持っていた武器は持ったまま死ぬと消える。
カードになった場合は、その武器を持っているんだ。
但し、腕を切り落としたりし、その後殺すと落ちた剣はそのまま残るようだ。
剣と魔石が4つ、カードが11枚だ。
レイラ達が戻ってきたが、誰も怪我をしておらず、ドロップを拾うとレイラが気配を探る。
「この先にボスが来ています!行きましょう!」
僕は愛姉の手を取ると立たせ、奥に向かう。
愛姉が何か言いたげだったけど、話は後で聞こう。
通路を進むと先程と同じような広さの空間があり、2体のナイトを従えた一際大きなナイトがいた。
「そんな!エリートナイトだわ!」
「レイラ、行けるかい?」
「問題ありません。倒せと御命じください」
「よし、皆アイツラを倒すよ!先ずはアレクとゼッチィーニは取り巻きの2体を頼む。レイラはボスを!」
「ゴブゴゴゴゴゴピヒボキャボボボ!」
「意味わかんねえよ!」
それが合図だった。
エリートナイトはチェーンメイルを着込んでおり140cmほどある。
ゼッチィーニとアレクが前に出るとナイトが出てきたので、睨み合いながらボスから離れる。
「レイラ参ります!」
先程回収した剣を1本投げ、それを皮切りに戦闘が始まった。
といえば聞こえが良いが、あっという間に終わった。
アレクはジャンプすると目にも止まらぬ剣の1振りで受け止めた剣ごと体を斬り裂いた。
ゼッチィーニは盾で殴り飛ばし、追撃として振るった剣が喉を貫いた。
2人が本気を出すような相手ではなかった。
皆が見守る中レイラが宙を舞う。
クルクルと回りながら剣を投げた・・・ヒューン・・・ズバッ!
見事に喉元に刺さる。
エリートナイトはゴヒューゴヒューと喉を押さえながら片膝をつく。
レイラはその間に最初に投げた剣を拾いに行き、僕の前に来た。
「トドメを」
そのエリートナイトはもう戦う力がなかった。
僕はエリートナイトに刺さった剣を握り、力一杯横に薙ぐように力を込めると肉を斬り裂いたが、エリートナイトはそのまま倒れながら霧散していった。
すると、ドロップを残したのと、中心に黒い穴がある魔法陣が出現した。
ドロップは魔石とカード、盾と軽装鎧だった。
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