第7話 2世とは
ワーウルフは瀕死のゴブリンの腕を咥えて引きずってきた。
瀕死のゴブリンは息も絶え絶えだが、ワーウルフの方は血を流しているけどすぐに死ぬような傷ではない。
血塗れで思わず目を背けそうになる。
確認するまでもなく最早このゴブリンは意識がなく死を待つだけだ。
「御主人様?どうかカードに戻してあげてください!」
僕はそのゴブリンの名が分からなかった。
「ゴメン、名前が分からないんだ!」
「グヌルスリです」
「ありがとう。グヌルスリ戻れ!」
すると次の瞬間そこにはカードが残され、拾うとグヌルスリと出ていた。
カーヴァントを召喚するとカードが消え、代りにカーヴァントが召喚される。
召喚やカードに戻す時に名前を唱える必要があるので覚えておくしかない。
僕は覚えていなかったがレイラは覚えていた。
主人と言うか使役者失格だ。
ゴブリンは分かり難い。
獣型もそうだ。
確かに個体差があるが、召喚しても顔と名前が一致しない。
皆どうしているのだろうか?
もしここに璃音さんがいたらこんなふうに質問しているんだろうな。
「(あのう璃音さん)僕はゴブリンの名前を覚えていないんだけど、皆さんどうしているのかな?」
「御主人様?先ずはこの子が怪我を負ったのが何故か調べるのが先だと思います。この子は運が良いです。死ぬ前に御主人様の所に来られて名を呼んで貰ったのですもの。そうですね、2日後には動けるようになると思います」
口に出していたようで、レイラが答えてくれた。
カーヴァントは例え腕が無くなろうが、生きて主人の元に辿り着き名を呼んで貰えばカードに戻る。
するとそのうちに回復する。
極端な話だと首を切断されても、1分位は心臓が動いており、心臓が止まるまでは生きている判定だ。
怪我の状態にもよるが、カードに戻れば2、3日もすれば復活できる。
帰ってから調べたけど、怪我を負ったカーヴァントはカードの枠の1辺付近の色が変わっており、カーヴァント化可能になるまでの目安。
下の方は他の辺と同じ色で、段々下から上の方へ向かう形で元の色に戻る。
ワーウルフは重症ではないが、本来このランク2のカードが命綱となる。
だが、早々にカードに戻す事になってしまった。
残念ながらレイラもワーウルフとは会話が出来なかった。
「よし。少し我慢しろよ。グヌルスリとお前が怪我をしたところへ案内して欲しい。そこでお前をカードに戻すからな」
くぅ~んと力なく返事をして来た。
「ちゃんと御主人様を案内するのですよ!」
ウォーリアーが僕の後ろを守り、レイラと並んで歩いている。
この美人さんは何を考えているのかな?
レイラは強いなぁと僕はレイラの事ばかり考えていた。
先程石を投げた時の威力。
ゴブリンとはいえ普通頭は吹き飛ばないのだが、それを異常とまでは考えなかった。
本話での斗枡視点終わり、解説視点に。
・
・
・
それにコスト1のようだけど人語を話す。
それも流暢な日本語だ。
コスト5とか6辺からいるが、コスト1ではあり得ないのだが、斗枡は勉強不足でその事実を知らない。
この場に璃音でもいれば指摘していたかもだが、彼女はいない。
あり得ない事が起こっている。
斗枡はラビリンスに入った後コスト10を超えてカーヴァントを召喚しようとするも召喚出来なかったから、ランク1のラビリンスで間違いないと思っている。
時折異変が起こり、ラビリンスのランクが突如上がる事がある。
国内で年間数件から10件程報告される。
予兆がある場合もあるが、それとは別だ。
カーヴァントをラビリンスの外でも実体化する事が出来なくはないのだ。
例えば璃音は探索者をしていた頃コスト5のカードを2枚身に着けている。
ビキニアーマーの上下が各々カーヴァントだった。
コストは強さの目安であり、コスト4と5のカードはランク3のカードと分類されている。
つまりランク7のカードはコスト16から19だ。
ただ、相性、つまりグーチョキパーがあり、ランクの1つや2つ程度の差は覆る事がある。
ランク7だからといってコスト16だけではない。
基本的に強さはコストに比例する。
便宜上ランク付けをしているだけで、売買時はカードの種族、コスト、ランクを確認する事になる。
防具等の物となる場合、カーヴァント自身が動けない種族ならばラビリンスの外で実体化出来るのだ。
ただし、ラビリンス内ではコストにカウントされてしまう。
璃音の装備品は念話が出来るのだが、それはカーヴァント側の能力だ。
ラビリンスのランク確認に役に立つし、正直プレートアーマーより防御力が高い。
難点は男からのエロい視線に晒される事だけだった。
人からレイラに関して聞かれたとしても斗升の父親、0号の上官であり伝説の0番隊の隊長が持っていたカードが普通な訳はない!と言われればそれはそれで納得するだろう。
まだ2世の人数が少ない。
今は2世が活躍を始めたから良いが、知られてから高ランクのラビリンスに入った者の精子が売買されていた。
値段が爆上がりで、中には売春まがいの種付け屋までいた。
高ランクに入った者の子の方が能力が高いとされているからだ。
数年前、ラビリンスが発生した直後に潜っていた者の子が高校生となり、ラビリンスデビューしたがその能力の高さから2世にスポットライトが当たり、優秀な子が欲しいと需要が上がった。
今ではそのような行為は違法となったが、詐欺も横行した。
低ランクにしか入っていないのに、探索者証を見せて信じさせ、妊娠させたような話だ。
法改正が進んだ。
危険な探索者をする者が増えるようにだ。
男性に限り重婚が認められたのだ。
ランク6の単独攻略かランク7を6人以下での攻略をした者に対してだ。
残念ながら女には当てはまらなかった。
優秀な子孫を多く残すとなると女は重婚しても意味がない。
寧ろ誰が父親か分かり難くなるのと、女が複数の男と同時に肉体関係にある事を世の中は是としなかったからだ。
また、母親のみが探索者をしていたとしても、不思議な事に、2世が優秀な比率は一般人と変わらず、特殊な力を持った者が生まれず、男のみに重婚が認められたのだ。
何故男の重婚を認めたかは詐欺や違法行為が蔓延り、重婚を認める方が優秀な子孫が生まれて、その子達がやがてラビリンスから国を守る守り手に!との切実な理由からだ。
何故貴方は危険な探索者になるんですか?
そう聞かれると国の為とか家族を守る為と言う者が美化される。
また、単純に金を稼ぎたい!という者が一定数いる。
インタビューで沢山の女とやりたい!という馬鹿な奴がいたとすると、金を稼ぎたいと言った事にされている。
ただ、仲間内ではそうだよね!となる。
璃音は別の事を託されている。
自ら探索者でもあるが、2世の子を身籠れと。
言われた訳では無い。
0番隊隊長の子が高校生になる事を上司は知っていたはずだ。
ただ、今のところ次に2世が来たら担当ね!と言われていた・・・
それで斗枡の専属担当者になったのだが、勿論斗枡はその事を知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます