ホラゲをしよう:疑問
グギャアアァァ……
「やっと……、倒せた……」
ボスが膨大なエフェクトと共に消えていくのを眺めながら、私はしみじみとつぶやいた。
「おおー!」
「凄い、
「お疲れ様~!」
三人も自分の事のように喜んでいる。ついに倒したわよ、この鬼畜極まりないボスを……!
はぁーと私は溜息を吐く。ほんと長かったわー!。
続いて私ははああぁぁーと長い溜息を吐く。そして三人に向かって言った。
「これが最初のボスって事に絶望してるんだけど」
そうなのよねー。なんだか大きな事を成し遂げたかのように振舞ってるけど、まだこれ、最初のボスなんだよねぇー。操作に慣れてなかったって言うのもあるけど、それでも既に3時間以上時間かかってしまったわ。
「あ、クリア率って言うのが出てる……え、10%?」
「ネタバレは避けてるから詳しくは知らないけど、あと9体はボスがいるらしい」
「ええ……」
あと10体もいるんだー。え、裏ボスも合わせたら20体以上いるの? 絶望でしかないんだけど?
と、ともかく。そろそろお昼時だし、いったんここで休憩しよっか。
っとその前に経験値は消費しておこう。ロストしたら泣く。
◆
お昼ご飯を食べ終わって、少し目を休めてからゲームを再開したのだけど、だんだんグロさが増してきた。突然赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたと思ったら、何とも形容し難い敵が曲がり角から飛び出てきて……。
私からしたら「ホラゲあるあるだね」「ここのテクスチャ、こだわってるなあ~」って感じだけど、他の三人はただの中学生。そういう訳にもいかない。
「ひいいいいぃぃ!」
「うぅぅ……」
「きゃああああー!」
私の膝の間に座っていたハルちゃんが絶叫を上げ、画面から目をそらして私に ぎゅ!っと抱き着いてきた。だんだん成長してきたハルちゃんの
リンちゃんが苦虫を嚙み潰したような顔で画面を見ながら、私の右腕にしがみついた。体の右側に感じるリンちゃんの吐息に意識が持っていかれて、回復瓶の使うタイミングを間違ってしまう。
ユズちゃんが悲鳴を上げ、私の左腕にしがみついた。左腕に当たっている柔らかい「物」に意識が持っていかれて、回避が間に合わずに
ふう、と私は軽く息をつく。
謎だ……三人とは一緒にお風呂に入ったりもするのに、なんで今更こんなにドキドキするんだろ。やっぱり服越しに感じるのは何か特別なのかな? 不思議ね。
ゲームの謎なんてどうでもいいから、今はこの謎を解明したいわね。いや、この謎には答えなんて無いか。ゲームの謎には答えがある、けれど女の子の謎には答えがない。一生をかけてその答えを求めても、きっと最期の最期まで分からないままなんだろう。
え、何を言ってるんだって? ごめん、私も分かんない。
「こ、怖かった……」
「流石、ヒメは平然としてるね」
「ヒメちゃん、すごいよね……。私、こんなゲーム、プレイできないよ~」
「ま、まあね?」
私も内心、ドキドキしてるけどね! 別の意味で!
って事があって途中ちょっと攻略速度が落ちたけど、良いレベリングスポットを見つけたり、有用なアイテムを見つけたりする内に、なんやかんやゲームの攻略速度が上がってきた。
さらに、ストーリーをある程度分かってくると、敵にも多少の同情心が沸いてきたりする。
「つまり、このボス『
「そ、そういう事だったんだ……」
「なるほどね。そう言えば、どこかのフレーバーテキストにもそんな感じの記述があったね」
「なるほど、さっきのボスにそういう背景が……。さっきは『気持ち悪い!』なんて言ってゴメンね……」
ここで、どうでもいい小話をひとつまみ。
後から知ったのだけど、手多螺爾阿の読みは「テタラニア」で妖精女王「ティターニア」からきているらしい。そういう理由もあってか、どこからどう見ても化け物にしか見えないこのボスを愛でる愛好家がいるとか。
愛好家曰く「手多螺爾阿はこのゲームのヒロインだ!」「食べられたい」「切り刻まれたい」らしい。うーん、ごめん。私には分かんない感覚だわ。
閑話休題
こうしたことがあって、日が落ちる頃には三人は絶叫を上げずに観戦できるようになっていた。
とはいえ怖い事には怖いみたい。ハルちゃんとユズちゃんは、気を紛らわすために水をちゃぴちゃぴ飲んでいる。リンちゃんはプルプル震えている。
三人ともうさぎみたいで可愛い♪
「そろそろ寝ないとね」
「わわ、もうこんな時間?!」
「いつの間に」
「続きは明日だね♪」
その後、私たちは一つのベッドにぎゅうぎゅうと入って眠りについた。ちょっと狭いけど、この狭さが心地いい。今日はゆっくり眠れそう。お休みなさいー。
しかし、この後事件が起こった。
深夜。ハルちゃんが私を起こしてこう言ったのだ。
「ヒメちゃん……。ハル、トイレ行きたくなってきた……。怖いから着いてきてくれない?」
そういえば、さっき水をたくさん飲んでたものね! そりゃあそうなるよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます