メェ~
メェ~
物語世界の中を探索していると、羊の鳴き声が聞こえてきた。この鳴き声が聞こえてきたって事は、けっこう奥地まで来た証拠。気を引き締めて戦わないと。
「何か聞こえたね! あ、あれかな?」
「ぱっと見た感じ、羊っぽい?」
「モコモコだね~、可愛い~♪」
メェ~ン
メェ~ン
メェ~ン
「気のせいかな? 『メー』じゃなくて『メーン』って鳴いてる気がするんだけど……」
そう言ってハルちゃんが訝しげに羊を見つめる。その声が聞こえたのだろうか、羊はこっちを向いた。……向いた?
「えっ! 顔がない?!」
「よく見ると足もないね」
「ちょっと怖い……」
なんと、こちらを向いた羊(?)には顔が無かったのだ! いや、顔が無いからほんとにこっちを向いたのか分かんないけど! ともかく、リンちゃんが指摘するように、ソレには足も存在しないことが分かった。羊の胴体だけが動いている……?!
その異様な姿にハルちゃんがびっくりしてユズちゃんが怯えちゃった。よし、そろそろネタ晴らしをしようかな。
「あれはただの綿の塊みたいだね。強いて言うなら綿花の権化的な魔物かしら? だから怖がる必要は無いよ」
「な、なるほど?」
「この世界、動物が敵になる事は無いもんね」
「そ、そうなんだ……。でっかいケセランパサランと思えば怖くない……かも?」
「だから『メーン』って鳴いてたんだね。
「「「あ、そういう事」」」
とまあ、つまらないギャグを一つまみしたところで、綿花との戦闘開始。
この子の正式名称はメーメーメンカ。ふわふわした見た目に反して実は強い。己の綿をよじって作った糸を鞭として振るう敵なのだけど、こちらの攻撃をふわりっと躱して鞭をヒュッと振るう様はまるで舞のよう。スタイリッシュでかっこいいのだけど、敵としては厄介でしかない。
だけど、ちゃんと対処法はある。それを今から実践するから、三人はちょっと離れて見ていてね。
「まずは攻撃を誘発。〈ノーツバースト〉」
私が攻撃すると、メーメーメンカは軽やかにそれを避けてメェ~ン!と鞭を振るってきた。心の中でイチ、ニと数えてからサンのタイミングでもう一つの魔法を使う。
「〈
私が魔法を使うと、三つの音符が私を中心に回転しながら出現した。この三つの音符は私の周囲をゆっくりと回るように展開され、攻撃を防いでくれるの。某レースゲームのアイテムみたいな感じね。
だけど、攻撃が当たる直前にこれを使うと、もう一つの機能が発揮される。それが――。
メェ~ン?!
「「「弾いた?!」」」
メーメーメンカの振るう鞭と出現直後の音符が当たると、鞭に乗った衝撃が逆走するようにメーメーメンカの方へと向かい、メーメーメンカに大ダメージを与えた。
「いわゆるパリィってやつね。音符出現後12フレームにパリィ判定があるの」
「12フレーム?」
「ゲーム用語だね。1フレームが1/60秒だから、12フレームは0.2秒くらい」
「割と判定は短いね~?」
あ、思わずフレームって言っちゃった。現実世界にフレームなんて概念は無いから、0.2秒って説明すべきだったわね。ついうっかり。
「コホン。この子は後2回のパリィで倒せるわ。ほれほれ、攻撃してみなさい~」
メェ~ン……メ~ン!
警戒するような鳴き声を上げるメーメーメンカ。しかし、決心がついたのか鞭を生成して振るってきた。
ブルンブルン……ブルン……
しかしすぐにはそれを振り下ろさず、自身の頭上で数回振り回して勢いをつけてからヒュン!と鋭い音を立てながら振るってきた。
「〈
メェ~ン?!
「もう一つの攻撃パターンも見せておきたいのだけど……やってくれないかしら?」
そうつぶやいた私に応えるかのように、メーメーメンカはバチバチと音を立てながら帯電した鞭を生成した。そう、その攻撃を待っていたのよ!
あれ、綿製品って静電気を帯びにくいんじゃあ……。うんまあ、こういうのは深く考えないのが吉。集中しないと。来るよ……!
ブルン!
地面スレスレに振るわれた鞭をジャンプで躱す。
ブルン!
今度は上を狙った攻撃。これはしゃがんで回避。頭を下げれば~ぶつかりません♪
それからワンツースリーで……はい、ここ!
「〈
メェ~ン?!
この帯電攻撃は三回目の攻撃のみパリィ可能。これで終りね。
あ、綿を落とした。ラッキー♪
「とこんな感じ! 分かった?」
「おおー、ヒメちゃん凄い! ハルもやってみる!」
「このダンジョンは『アクションゲームは音ゲーだ』って言いたいのかな?」
「む、難しそうだね……」
一応パリィでなくても、四人で攻撃ぶっぱしたらごり押して倒すことも可能ではある。だけど、相手がスタイリッシュな戦い方をするなら、こっちもそれに応えないとね。パリィ、最高!
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