練習あるのみ
ゲーム『ダンジョンはアイドルのステージよ!』では、他の音ゲーと同じようにノーツが振ってきたタイミングで画面をタップする必要があった。なお、PC版では適当にキー割り当てがされている。
え、コントローラーではプレイ出来ないのかって? AC持ちすれば可能だよ。
だけど、リアルとなっていた今、画面をタップする必要はなくなったのよね。「今、音符を発射!」って考えるだけでオッケーになったわ。
指を動かす必要が無いのだから、リズムさえしっかり取れたらフルコンボできる。やったー、難易度が下がった~!
――なんて都合よく済んでいたのは、今までが簡単な曲だったから。難易度の高い曲ではそうも言ってられなくなる。
例えばPC版ゲームでは、通常譜面に出てくるノーツはGキーかHキーに対応していたわ。それぞれキャラクターの左手、右手に対応しているわね。
だけど、高難易度譜面ではRキーとUキー(キャラが左右にステップ)、EキーとIキー(キャラがくるっと回転)、AキーとLキー(キャラがジャンプ)が追加される。
エイプリルフールに追加された『電脳世界の歩き方』は最高難易度の楽曲な訳で、当然のように全部のキーを使う必要がある。さらにスペースキー(キャラが手を繋いでき○らジャンプ)も追加されているんだから笑えない。
スマホ版でナチュラルに7か所同時押しが出てきたときは、界隈がそれはもうざわついたわ。「バッカじゃないの?」「いや、無理」「指が外れました」などなど。
それでもクリア者が出てくるんだから、ほんと凄いよね。私? 当然クリアしたわよ。ふふん。
話がそれたわね。えーっと何の話だっけ? そうそう。リアルになった事で、音ゲーシステムがどう変わったかって話だよね。うん、ご想像の通りよ。
キーボードクリックがない代わりに、本当にそのアクションをしないといけないの! 左右にステップとかくるっと回転とかジャンプとか! 難易度爆上がりよ、爆上がり。
「はあ、はあ。こ、これ、ホントに人類が踊れるようになるの……?」
「はあ、はあ、はあ、はぁ、はぁ……」
「ふにゃあぁん……」
レベルが上がって、身体能力とか持久力とかが格段に上がっているはずの私たちが、このざまである。もはや譜面を丸暗記していないとクリアできない難易度よ。はあ、疲れた……。ちょっと休憩~。
……全く関係ない話、していい?
息を切らしながら火照った体から流れる汗を拭いている女の子って、すっごく魅力的じゃない? それはもう、思わず近づきたい誘惑に駆られるのだけど、私自身も体が火照ってるから、熱くて近づけないのよね。
いわゆるハリネズミのジレンマって、まさにこういう事よね。近づきたいけど近づけない。このジレンマをハリネズミに喩えた昔の人はすごいと思う。
(※ヒメは現在、暑さで頭が回っていないようです)
◆
練習の様子をロボマネージャーで撮影してミスした部分を確認。そこを修正して……という風にして、少しずつ少しずつ踊れる区間を伸ばしていく。その甲斐あって、なんと5回に一回は曲全体の1/30までコンボを繋げられるようになったわ!
……これいつになったらフルコンボ出せるんだろ?
「そろそろ帰る?」
「だね、練習は家でも出来るし」
時間的にも私たちの集中力的にもそろそろ限界になってきた。一度帰ってから改めて練習しようと思う。
「で、どうやって帰るのー?」
「歩いて帰るの? 正直、もうヘトヘトなんだけど」
「ここから入り口まで戻るとなると……そこそこ遠いよね?」
「歩いて帰ってもいいけど、一番楽に帰る方法は本番で失敗することね」
という訳で、ちょっと休憩してから最後に一回踊ろう! ミュージックスタート! リハーサルではなく本番ボタンを押すと、さっきまでうさぎさん達がいた舞台上に転送される。
『ぴょん?』
『何かが始まったピョン?!』
『なんだか面白そうだぴょーん!』
突然舞台に出現した私たちを見てびっくりしつつも、何が起こるのか楽しみでしょうがないのか、うさぎさん達はぴょんぴょんと跳ね始めた。そんなうさぎさん達に私はこう声をかける。
「良かったら一緒に踊ろ~!」
『『『ピョーン!』』』
うさぎさん達もBGMに合わせてリズムを取り始める。はい、可愛い。
本番で急に覚醒、何故かパーフェクトでクリア! ――なんてことは起こらず、私たちの踊りは散々な物だった。だけどうさぎさん達は全く気にする様子はなく、楽しそうにぴょんぴょん跳ねている。
このステージを挫けずに挑めるのは、この子達のおかげね。ほんとありがとね。
曲が終わると、時間が止まったように周りのうさぎさん達の動きが止まり、そして天から声が聞こえてきた。
『素晴らしい演技だったけど、まだ私の理想には達していない……。一度体を休めて、出直して』
その瞬間、私たちの周りにどくろマークが浮かんだ。視界が暗くなっていく中、私が感じたのは震えあがるような寒さ。
火照った
そして気が付けば、ダンジョンの入り口に戻っていた。いつの間にか魔法少女服から私服に戻っていて、汗も乾いている。べたついていた感じもなくなっていて、すっきり!
「今の何?! なんか凄かった!」
「無理やり体温を下げられた?」
「そうそう、そんな感じだったよね~」
初めての経験に三人もびっくりしているわね。私も実際に感じたのは初めてだから、すっごく驚いている。
「さっきのはいわゆる『即死』の異常状態ね。強制的にダンジョン外に放り出される魔法よ」
「即死?!」
「やっぱりあるんだ」
「え、私たち死んだの?!」
「死んで無いから安心して。いや、死んだ事には死んだんだけど、ダンジョン内で死んでも生き返るから。そう言う意味では、強制ログアウトって感じかな?」
「なるほどね、ダンジョン内で死ぬってこんな感覚なんだ……意外と普通だったね」
「もっとおどろおどろしい物だと思ってた」
「確かに~。ヒメちゃんの言うように、ログアウトって感じだったね~」
※即死魔法で死に戻るのが特別楽なだけで、普通に死に戻るのは(慣れるまでは)結構辛いらしいです。ですので、慣れないうちは決して無理な難易度帯に挑まないようにしましょう。
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