『電脳世界の歩き方』
『ぴょんぴょん!』
『ピョーン!』
「みんな可愛いね!」
「これ、いつまででも見てられる」
「癒されるね~」
この劇場の面白い点は何と言っても舞台だけでなく客席も面白い事。四本脚でえっほえっほと走ってるかと思ったら、ちょっとずつ二足歩行になったり。いや、人類の進化かい?!
人参をカリカリカリ……って食べてるのとかかわいいし。と思ったら何処からともなくジューサーを取り出してキャロットジュースにして飲み始めたり。劇場でそんなことしていいの?! まあ、騒音が出ないタイプだから問題ない……のかしら?
ちなみにここにいるうさぎさん達は「ダンジョン内の野生生物」っていう扱いになっているわ。ライチョウさんやカモノハシさんに近い存在ね。
つまり一体一体に知能が備わってるの。だから好感度を上げることで、反応が変わったりするわ。さっき受付の子にニンジンを上げたのはその為ね。
好感度が一定以上貯まると――なんと役者さん(?)をもふもふする事が出来るわ!
……え、レアアイテム? 強力な仲間? そんなの無いよ。けど、同じくらいもふもふは大事だよね?
そんな事を考えながら椅子で座っていると、それは起こった。私たちの目の前から「声」が聞こえてきたのだ。
『いいな、あの子たちは……』
「「「「?!」」」」
聞こえてきたのは、中性的な声。しかし私たちの前に声の主と思われる人はない。
『私もあんな風に……! いや、無理だよ、だって私は……! ずるいよ、ずるいよ……!』
始め声の主からは嘆くような感情が伝わってきたが、それはしだいに絶望に変わり、そして最後には嫉妬へと変わる。
『ああ、私の思いが詰まった、この曲を披露したい! そして世界を震撼させたい……! 私の事を知って欲しい……!!』
どうやら声の主は自分が作曲した曲を披露したいみたい。そして、このセリフを聞いた三人は納得するようにうなずいた。
「「「あーそういう事ね?」」」
「三人とも、どんどんダンジョンに順応してきたね? うん、お察しの通りだよ」
『うん? ねえ、そこの人間? お前たち【アイドル】でしょ? ねえ、私の代わりに舞台に立ってくれない? そして最高の舞台を作って欲しいんだ……!』
音楽を披露したい人の前に、
私たちがコクリと頷くと、システムメッセージが聞こえてきた。
〔ステージギミックが作動します〕
〔ステージでは〈マジカルフィーバー〉と同様の魔法が作動しますが、発射される音符に攻撃力はありません〕
〔それでは、良きステージを〕
という訳で、久々のステージギミックです!
リハーサルを始めると、今風な電子音楽が流れ始める。そして、馬鹿みたいに大量のノーツが私たちの前に表示された。
「え、なにこれ?!」
「ノーツが今までに見たことがない密度なんだけど?」
「うわあ、難しそうだね~。しかも知らないノーツまであるよ……」
「ヤバいよね。そして何がヤバいって、このステージのクリア条件なのよ。クリア条件はただ一つ。この楽曲でフルコンボを出すこと」
「ええー?!」
「それで、あんな苦虫を嚙み潰したような顔をしてたんだ……」
「出来る気がしないよ~?!」
今から挑戦するのは、このダンジョン内で最も難しいと言われることもあるクエスト「姿無き者は何を望むか」、エイプリルフールに公開されたアペンドパッチに収録されていたステージよ。
「相手はこのダンジョンの裏ボスとさえ言われる最難関曲『電脳世界の歩き方』、早速歌って踊るわよ!」
◆
『電脳世界の歩き方』
Now Booting……
Hello World! ログインしてダイブ!(Yeah!)
~♪
流れ始める電子、目覚める無数の
Hello User! What can I do for you, sir?
はしゃぐアルゴリズム
騒ぐ
「だって俺達チューリング完全」
パッチをAppend
機能をExtend
「だってまだまだ進化できる」
何するの? 滑るカーソル
ゲームをピックアップ
テクスチャ準備 動くカーネル
作ろうミップマップ
起動の過程を、awaitしようよ
Are you ready?
それじゃあ、
ここは電脳世界、ゼロとイチが踊る
ここでは誰だってただのデータ、だから一緒に歌お! ね♪(Yeah!)
ここは電脳世界、イマジネーションが踊る
ここでは誰だってただの情報、だから一緒に踊ろ! ね♪(Yeah!)
(『ダンジョンはアイドルのステージよ!』より)
◆
歌詞を見てもらって分かるように、エイプリルフールらしくメタ発言満載となっている。
サビ前で、パソコンを起動してアペンドパッチをインストールしてゲームを起動するまでが歌われていて、サビではゲームが始まったのか「一緒に歌おう、踊ろう」と歌われている。
メタ発言って賛否両論あると思うけど、こういう風にちょこっと出す分には私は好きよ。
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