水族館デート、Part 3
「見てみて、このタコ! 面白いよ~」
「魔法を使わずこんな事を出来るってすごい」
リンちゃんとユズちゃんに呼ばれてそちらをみると、一匹のタコがいた。名前はミミックオクトパスだって。
「ハルそれ知ってる! 確か宝箱に擬態している魔物の事だよね?」
「そうそう、ハルちゃんが言ったようにミミックって言うのは『擬態』って意味のはず。RPGゲームならミミックは宝箱に擬態しているけど、このタコは何に擬態するんだろ?」
地面と同化するとか? タコってそういうことしているイメージあるよね。
「周囲の色と同化するだけじゃなくて、別の生き物にも変身するらしいよ~」
「ウミヘビ、ミノカサゴ、クラゲみたいな毒を持った生き物に擬態するみたい」
展示エリアの横に設置されていたビデオによると、ミミックオクトパスは襲ってきた敵に応じてそれが苦手とする生き物に擬態するらしい。凄い能力ね。
「私たちの衣装みたいだね~。敵に応じて色を変えるし♪」
「確かに。次に作る衣装にも取り入れられるかな」
「それに、魔法の産物じゃなくても人間は見た目を変えるよね。寝るときはパジャマ、外出するときはおしゃれな服、アウトドアの時は動きやすい服、学校では制服って感じで」
「言われてみれば!」
「他の動物からしたら『あの生き物、スゲー』って思ってるのかな?」
「今度、カモノハシさんに聞いてみる?」
なお、後にカモノハシさんにこの話をすると「人間って大変だね」と言われた。
た、確かに? 学校の為だけに制服を買い、会社の為だけにスーツを買うっていうのは、人間以外からしたら理解に苦しむのかも。
最近は私服OKな学校とか、カジュアルな服でOKな会社もあるみたいだけど。もしかしたら、100年後には制服とかスーツの文化は無くなってるかもね。
◆
さて、「アツアツエリア」を見終わったので、次は「ブルブルエリア」を見て回ることに。ここでは北極や南極の生き物が展示されているみたい。
「わあ、クリオネだー!」
「可愛いね~。わあ、王冠みたいなのを被ってるよ!」
「これがかの有名なバッカルコーン」
流氷の天使の異名を持つクリオネ。その姿からは想像できないけど、実は巻貝の一種なのよね。しかも肉食。
頭から6本の触手「バッカルコーン」を伸ばして獲物を捕らえ、栄養を吸収する様は天使と言うよりも悪魔。実は恐ろしい生き物なのよね。
ちなみに、ダンジョンにもクリオネ風の魔物がいるわよ。名前は「氷上の堕天使」ドレイン系の魔法を放ってくる厄介な敵よ。
「こっちは変な顔の魚! コオリウオだって」
「血が無色なんだって。それじゃあどうやって呼吸してるんだろ」
「透明な酸素運搬たんぱく質を持ってるのかな~?」
人間を含め脊椎動物の血は通常赤色や暗赤色だけど、これは酸素運搬たんぱく質であるヘモグロビンが赤色だから。仮に別の種類の酸素運搬たんぱく質を持つ生き物がいたとしたら、その血は赤くないはず。
例えば無脊椎動物のイカは酸素を運搬するのにヘモシアニンという銅イオンを中心としたたんぱく質を持っているのだけど、その血の色は青色になるわ。
「でも、コオリウオは魚、脊椎動物だよね? なら、やっぱりヘモグロビンを持ってるんじゃあ……?」
「そうなのよねー。独自の進化を遂げたのか、はたまた全く違うメカニズムがあるのか……」
結局自分達じゃ分かんなかったから、説明書きを読むことに。
へえ、単純に赤血球がほとんどないみたいね。
酸素は直接血漿の中に溶かして運搬しているんだって。コオリウオが生きているのは南極。水温が低い分、ヘモグロビンが無くても十分酸素を運べるらしいわ。
「それ、理科で習ったね! 冷たい方が気体が溶けやすいんだよねー?」
「ぬるい炭酸が爆発するのは二酸化炭素が溶けにくくなるから、って習ったよね~。そっか、酸素でも同じことが起こるんだ~」
生物の進化って言うのは不思議だねえ。
◆
「次はここ、『ふれあいコーナー』だよ! ここも気になってたんだー!」
魚とふれあい?
動物なら分かるけど、魚とどうやって触れ合うんだろ?
「ってああ! なるほど、ドクターフィッシュがいるのね」
「向こうで『チョウザメに噛まれてみよう』ってのもある」
「ええ、それ大丈夫なの~?!」
「歯が無いから安全らしい」
なるほど、そんな体験もできるんだ。面白いねー。
「将来、家を建てるときはドクターフィッシュ付の足湯とか欲しいねー!」
「それは……なかなか厳しそうだね」
ドクターフィッシュを飼育するのって結構大変そう。そもそも、ドクターフィッシュをお湯の中で飼うのは無理な気がする。
「ううん、ハルが見たときは手が届きそうなお値段だったよ。確か20万GCかそれくらいだったはず!」
「え? ああ、マイハウス機能ね。それなら実現できそうだね」
ダンジョンのオマケ要素の一つであるミニゲームをクリアすることでゲットできるGC(ゲームコイン)、それを使えばプライベートスペースを買う事が出来るのよね。
そのオプションの中にドクターフィッシュ入り足湯があったらしい。なんでもあるわね、あのお店。
◆
ドクターフィッシュにちょんちょんされたり、チョウザメにカプっとされたり、魚にエサをあげたりしていると、ちょうどお昼時になった。
「お腹空いてきたわね、そろそろご飯にしない?」
「さんせー!」
「私も」
「さっき調べたら、二階にレストランがあるんだって~」
決まりね。それじゃあ、二階へゴー!
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