水族館デート、Part 1
「せっかくの夏休みだしみんなでどこかへ遊びに行こう!」
「おおー!」
「いいね」
「デートだね♪」
前々から話していたように、夏休みはみんなでデートしようと思う。え、毎日ダンジョンに行ってる? あれはノーカンだよ。え、ほぼ毎日誰かの家に集まって遊んでる? それもノーカンだよ。
「去年は家族ぐるみでバーベキューをしたけど、今年は私達だけで遊びに行きたいね」
別に三人の親御さんがいるからって今更緊張なんてしないけど、それでも親同伴でデートっていうのはなんか違うよね。
「じゃあ、海水浴とか山で渓流釣りとかは厳しいかなー?」
「あまり遠出は出来ないね~」
正直今の私たちのステータスなら大抵の事は何とかなるだろうけど、それとこれは別の話。危険の有無とか関係なく、あまり遠くへ行ったらお母さんが心配するわ。
「無難に水族館? テンプレって感じだけど」
リンちゃんが言うように、水族館デートってラブコメのテンプレートって感じだよねぇ。
「水族館! ハル、この前テレビでやってた水族館行ってみたかったんだー!」
「いいんじゃない~? わざわざ変わった場所に行く必要もないし」
それもそっか。
「ハルちゃんが見た水族館って、ここからどのくらい?」
「近かったはずだよー。えーっと、これ!」
ふむふむ。これなら電車で行けるしいい感じね。チケットもお手頃価格だし。ここに決めちゃえ!
◆
という訳でやって参りました、水族館!
この水族館は規模こそそこまで大きい訳じゃないけど、ここ最近で色々と展示品がアップデートされたらしく、いわゆる映えスポットが多いんだって。それで若者を中心に人気らしいわね。
「おお。クジラの骨格標本」
水族館に入ってすぐの天井には、クジラの骨格標本がつるされていた。これ、レプリカじゃなくて本物? すごいわねー。
「おおー! でも、小学校の時に見た時はもっと大っきかったような……?」
「分かる~。昔見た物って大きかったように感じるよね~」
こういう話を聞くと、時の流れって残酷よねって感じる。レベルアップと【アイドル】の
何歳になっても心と体は成長出来る。けど、思い出はただただ古くなっていくものなのね。
「……え、待って。【アイドル】のスキルにそんなものもあるの?」
「あれ、リンちゃん知らなかった? そもそもレベルアップするだけで若々しさを保てるの。ほら、私のお母さんもちょっと若々しいでしょ? お母さんは【魔女】としてダンジョンに行ってるから、一般人と比べたらレベルが高いの」
「なるほど、ヒメのお母さん若々しいなって思ってたけど、そういう事だったんだ。レベルアップしてステータスが増えたらその分老化が抑えられるって感じ?」
「そうだね。それに加えて【アイドル】は老化耐性的な物があるのよ。真価を発揮するのは大変だけどね」
「発動条件が厳しい感じ?」
「ま、そうだね。詳しくは今は秘密! それより二人を見ておかないと! はぐれちゃう」
「ほんとだ、いつの間にあそこまで……! 二人とも待って」
この後、はぐれないように私はハルちゃんと、リンちゃんはユズちゃんと手を繋いで行動することになった。これではぐれる事は無いわね、それにこの方がデートっぽいからヨシ!
さて、リンちゃんと【アイドル】について話している間に、ハルちゃんとユズちゃんが水族館のパンフレットを入手していた。
「どのブースから見て回る? ここへ来たいって言ったのはハルちゃんだし、ハルちゃんに決めてもらおっか?」
「ハルが決めていいの? じゃあじゃあ、この『アツアツエリア』って所! アマゾンのお魚とか、サンゴ礁のお魚が展示してあるんだって!」
異論はないみたいね。オーケー、それじゃあ早速行ってみよう。
まずはアマゾンのお魚が展示されているエリアね。電気ウナギ、ピラニア、シルバーアロワナなどが展示されているみたいね。
「電気ウナギだ~! 昔は『電気を使えるなんてすご~い! まるで発電所!』って思ったなあ~」
「分かるー! ハルも昔、『近い将来、電気ウナギが日本の電力を支えるようになる』って思ってた!」
ちょっとその気持ちは分かる。初めて聞いたときはそう思うよね。
「私も行っときそう思った。今になって、実際にそれは不可能って知ると、少し残念に思う」
リンちゃんにもそんな時期があったんだね、ちょっと意外。
こうして考えると、年を重ねて無邪気さが失われていく事は悲しいわね。この前「無邪気って怖い」なんて思ったけど、少しは無邪気さがあった方が良いかもしれない。そう思った。
とはいえ、楽しくないわけではない。むしろ、成長したことで得られる新しい楽しみ方もあるわ。例えば……。
「へえ、発電器官って筋肉が進化した物なんだー!」
「筋肉が?! どう進化したらそうなるんだろ~?」
「それはね、そもそも筋肉が動くメカニズムは……」
なんて会話を楽しむ事が出来るの。
え、デートでする会話じゃない? そんなことないよ! ……たぶん。
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