アニメ鑑賞会
明けましておめでとうございます。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
さて、お正月という事で特別ゲストでこの方をお呼びしています。どうぞこちらへ。
『クワワワ』
はいそうです、カモノハシ剣士のおじいちゃんです!
挨拶したいそうなので、スキル〈ききみみずきん〉を使って聞いて下さい。
『人間にとっては、今日は一年の始まりの日なんだって? それじゃあ儂からは、厄除けの意味を込めてこれを披露しよう『浮蘭手蓮流剣技』〈厄切りの剣舞〉!』
カッコいい……! ありがとうございました。
それでは改めて、今後とも本作をよろしくお願いいたします。
◆
『クワ! クワクワクワ!』
『グア~』
ユズちゃんの〈サモン〉スキルの熟練度が上がったみたいで、同時に二体召喚できるようになった。早速カモノハシさん(剣士じゃない子)とライチョウさんを同時に召喚してみると、二人は会話を始めた。
「鳴き声は全然違うのに、会話できるんだね」
「確かに! どうなってるんだろ?」
『クワクワワ、クワワクワ!』
『グアァ~、グアグア』
「『ダンジョンから与えられたスキルがあるから、会話できる』って言ってるよ~。副音声みたいな感じで、鳴き声とその訳が同時に聞こえてるみたいね。〈ききみみずきん〉と同じだね~」
なるほど、そういう事だったのね。
「へえー! じゃあ、外国語って感じなんだね」
「子供向け番組で動物同士が話してるの、絶対おかしいと思ってたけど、スキルを使ってるなら納得だね。まあ異世界モノでも翻訳スキルは定番だし、そんな感じなのだろうとは思ってたけど」
絶対アニメ制作者はそんなこと考えてないよ。
けどそうよね、冷静に考えると犬と猫が会話しているっておかしいよね。まあ、犬と猫なら哺乳類同士だしまだマシだけど、作品によってはトラ(主人公)が鳥(友達)と会話しているものだってあるわ。あなた達、捕食者と被捕食者の関係でしょ?!って思う。
ただ、これらのアニメがダンジョンの中って考えると、つじつまが合うよね。ダンジョン内の野生生物同士はお互いを襲わないからね。人間並みに秩序だった社会を形成しているわ。いえ、人間はすぐに喧嘩を始めるし、ダンジョンの動物の方が社会性があると言えるかもね。
「うん、分かった~。あのね、カモノハシさんもダンジョンの外を見てみたいんだって!」
そういえばカモノハシさんは外で召喚したことが無かったわね。
「じゃあ今日の終業式が終わったあと、二人にダンジョン外を案内しよっか!」
◆
「雨ね……」
外ではまるで滝かと思う程の大雨が降り始めた。
「今朝の天気予報だと晴れだったのに……!」
「うわあ、これなかなか止まなさそう」
「ごめんね、これじゃあちょっと外は歩けないよ……」
リンちゃんが見せてくれたお天気レーダーを見ると、夕方までずっと雨模様みたい。うーん、これでは外を散歩するのは難しそうね。
『グアグア』『クワクワ』
気にしないで、と言っているのだろう。翻訳してもらうまでもなく分かったわ。
「どうしよう~。カモノハシさん、何かしたいことある?」
『クワクワ! クワワ?』
「え、テレビ? うん、いいけど、どうして? 人間の文化を知りたい? なるほど、じゃあ一緒にテレビを見よっか♪ あ、そういえば前のクールでやってたアニメ、録画したけどまだ見てないんだ~。それを見ない?」
どうやらカモノハシさんは映像作品に興味があるらしい。ライチョウさんも興味があるようで、『グア~』と乗り気だった。
四人と二匹でリビングへ行くと、そこではライムちゃんがお母さんと積み木で遊んでいた。おっと、これは私たちが騒ぐのは迷惑かな?
「ママ~、この子達とテレビ見たいのだけど、邪魔かな~?」
『グア~』『クワー』
ライチョウさんとカモノハシさんは「お願いします」と言わんばかりに頭を下げる。
「あら、可愛いわね~。大丈夫よ~。何見るの?」
ユズちゃんのお母さんは二匹をなでなでしながらそう尋ねた。あ、ライチョウさんもカモノハシさんもすっごく気持ちよさそうにしてる。これはアレだね、ユズちゃんママから溢れ出るお母さんオーラにあてられてるのね。
「『まったりキャンプのススメ』を視ようかな~って!」
「そっか~、それなら
「は~い」
おっと、ライムちゃんも一緒にアニメ鑑賞会に参加することになったみたい。
ライムちゃんと目が合う。ライムちゃん、おいで~。
ライムちゃんはてくてくと私の所へやってきた。ライムちゃんはユズちゃんの妹で、来年から小学生になる女の子。ぷにぷにほっぺが可愛らしいわね。よしよし。
「なんだろう、ヒメちゃんからお母さんオーラが出てる気がする!」
「自分の姉ではなく、まっすぐヒメに向かったね」
「むむむ、これじゃあお姉ちゃんの立場が危うい……!」
『グア~!』(可愛いの~!)
『クワワ!』(はじめまして!)
「こんにちは~。わあ、もふもふだ~。可愛い~」
ライムちゃんが二匹を見つけ、挨拶する。二人を気に入ってくれたみたいで良かった。
さっそく私たちはテレビをつけ、録画一覧からアニメを選んで再生する。私もまだ見てないから、この機会に楽しみたいわね。
アニメ『まったりキャンプのススメ』は、大学生になった主人公が、ひょんなことからキャンプサークルに入るところから始まる。
日本全国の名所でキャンプをする中で、一人の先輩に恋をした主人公。彼女の恋は実るのか――って感じのストーリー。
これは転生モノをはじめとする戦い系もいいけど、こういう日常系のアニメもいいよね。タイトル通り、まったりできる良いアニメでした!
「面白かったねー! ハルもキャンプがしたくなった!」
「所々にちりばめられている、雑学が面白かった」
「ラブコメ要素がとっても良かった~!」
それぞれ惹かれた部分が違って面白いわね。二匹とライムちゃんはどうかな?
『クワクワ!』
『グア~!』
最終話のエンドロールにて、カモノハシさんはヒレを、ライチョウさんは羽を打って拍手していた。きっと楽しかったのだろう。
「おもしろかった~」
ライムちゃんも楽しめたようで何よりね!
◆
五人と二匹がアニメを見ている最中。ユズの母親はライチョウとカモノハシの事を考えていた。
「あの二人、いや二匹、とっても不思議な子ね~。アニメなんて見て楽しいのかしら~?」
いやいや、もっと疑問に思うべきことがあるだろうに。
「まあ、動いている映像を見て楽しんでいるだけなのかな~? まさか意味を分かってるわけないよね~。おっと、火を止めなきゃ」
◆
一方でユズの母親が二匹の事を考えているとき、二匹はこんな事を考えていた。
カモノハシ『初日の出のシーンの描写がとっても良いクワ! 惜しむらくは音響効果をもうちょっとこだわって欲しかったクワ』
ライチョウ『ライムちゃんだっけ、とっても不思議な子なの~。日常系アニメの良さって、せめてもう少し大きくならないと分からないと思うの~。それか、動いている映像を見て楽しんでいるだけなの~?』
……とまあ。二匹とも、めっちゃ分かってた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます