衣装デザイン

 ミカンさんの高校でも期末考査が終わり、ミカンさんはレベル上げに集中できるようになった。夏休みが始まるころには、昇進できるようになるんじゃないかしら?


「という訳でそろそろ衣装デザインを考えていこうと思います!」


「「「おおー!」」」


「最終的にデザインを採用するかどうかは、ミカンさんが作成可能かどうかにかかってるけど、【アイドルサポーター】がいたら職業ジョブの力で大抵実現できるはず。という事で、現実的な物から非現実的な物までアイデアを出していこう!」


 ミカンさんが「こんなの作れない」と言ったら、どうしようもないからね。この件に関して最終決定権はミカンさんにある。


「えーっと?」

「非現実的な物って?」

「ぴかぴか光ってるとか~?」


「ぴかぴか光るくらいじゃ、まだまだ現実の範疇だよ。私達【アイドル】の魅力は、ダンジョンという現実離れした場所で、現実離れした演技を行って、見る人をファンタジーな世界にいざなう事なの」


「つまり、『これが現実なんて信じられない!』みたいな?」

「なるほど。旅行先で絶景に感動するようなものかな。その激情を映像越しに伝えるんだ」

「ダンジョンは、見る人の激情・・をかき立てる劇場・・なんだね~♪」


「そういう事! そうだね、例えば……こんなのとか?」


・着物風の衣装で、描かれているウグイスの模様が実体化して、じゃれついてくる。

・折り紙をイメージした衣装で、組みなおすことで全く違う見た目に変化する。

・近未来風な衣装で、サビになるとポリゴン化して変形する。

・桜があしらわれている衣装で、サビになると自分の周りを桜吹雪が舞う。

・お菓子の国をイメージした衣装で、描かれているお菓子のイラストを実体化させて食べられる。


「お菓子を実体化?! そんな事出来るの?!」


「ホログラムだから実際には食べれないと思うよ」


 もはや衣装の範疇を超えている気がするけど、これを実現できてしまうのが【アイドルサポーター】の凄い所。

 こういった演出に使う魔法陣は、バフとは別枠で組み込むことができるから、個数制限を気にする必要はない。そこら中に魔方陣を組み込んで、ファンタジーな衣装を作って欲しいわね!


「あ、そうなんだ……。それでも凄く面白いね!」

「こんなのを実現できるの?」

「なんだかおとぎ話みたいだね~! シンデレラが魔法で変身する、みたいな!」


「ナイスアイデアね! シンデレラっぽくするなら、初めは地味な衣装で、サビになったら豪華になる衣装って感じになるかな?」


 他にも『美女と野獣』をイメージした衣装とか良いかもしれないわね。

 ご存じの通り、『美女と野獣』は可憐な主人公と醜い獣のお話。主人公は初め、獣のおぞましい容姿に忌避感を抱いていたのだけど、長く関わる中で二人の間には愛情が芽生えるのよね。

 主人公のスキル〈真実の愛のキス〉で獣に罹っていた異常状態『変身の呪い』が解け、ケモミミ美少女の姿に戻るクライマックスは、何度見ても感動で泣いちゃうわ。

 ……え、そんな『美女と野獣』は知らないって? まあ、昔話って大抵が現代風にアレンジされているからね。出版社によって多少の差はあるんじゃないかな。


 この物語を題材にした衣装となれば……ライオンっぽい装備から、猫耳装備に変わるって感じかしら?


「ネコミミ?! ウサミミじゃないの?」

「私は羊の角って聞いた」

「私はドラゴンの尻尾って聞いたんだけど……」


「へえ、同じ物語でもいろんなバリエーションがあるのねー。コホン、話を戻して衣装の案を出そう!」


 ここらで話を戻さないと、沼りそうだからね、無理やり話をぶった切るとしよう。


「マジシャンをイメージした衣装とかどうかな? 文字通り種も仕掛けもないマジックが出来るよ!」

「南総里見八犬伝をイメージした衣装とか?」

「なるほど、日本の古典は面白そうだね~。あ、それなら百人一首とか良いんじゃないかな♪」


「いいねいいね。じゃあ、今出た案を付箋に書いて貼っていこっか!」


 いわゆるブレーンストーミングって奴ね。一つ一つの案について詳しく議論するんじゃなくて、とにかく案を多く出す。



 二時間ほど私たちは案を出し続けた。すると机が付箋でいっぱいになったので、そろそろ次の作業に移ろうかな。


「次は今まで出た案をグループ分けしてみよっか」


「グループ? 変身系とホログラム系とか?」

「物語をイメージしたものと、広い概念をイメージしたものとか」

「古風な物と、現代・近未来をイメージしたものって区分けもできるね~」


「じゃあ、今の三つの軸についてタグ付けして行こっか。『着物からウグイス』は『ホログラム・概念・古風』かな?」


 このようにグループ分けすることで、色々と見えてくるものがある。今回の場合、私たちの出した案が全部似たり寄ったりであると認識させられた。


「対極にある意見を融合させてみるとか?」

「もしくは、この枠組みに入らない、全く違う案を考え出す」

「それが出来たら苦労しないよ~! う~ん、考えが凝り固まってるみたいだし、違う人に相談してみる方がいいんじゃないかな~?」


 そうねえ。確かに今から突飛な案が出そうにないわね。別の人から意見を出して貰う方が良いかもしれないわね。


「ハル、お兄ちゃんに意見を出して貰うね!」

「私はお姉ちゃんに聞いてみる~」



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