アイドルの衣装

「ミカンさんはまだ【アイテム職人】がカンストしていないので、【アイドルサポーター】に昇進するのはもうちょっと先になるかと思いますが、この機会にどういった職業ジョブなのか解説しておきますね。三人も『こんな衣装を着たいなあ』って想像しながら聞いてね」


 四人が頷いたのを確認し、私は説明を始めた。


 まずアイドルに限らずダンジョンに潜る全ての人に共通する事なのだけど、身に着けられる装備枠には限度があって、基本的には6つの枠があるの。具体的には頭、右手、左手、上半身、下半身、足の6か所ね。

 そしてそれぞれの装備枠に何らかのバフを付ける事が出来るの。例えばこんな感じのコーディネートが考えられるかな。魔法使いを頭に思い浮かべてね。


頭:魔女の帽子

 →魔力消費量1%軽減

右手:片手杖

 →魔力消費量3%軽減

左手:魔力シールド

 →バフは特になし

上半身:魔女のローブ

 →防御力5%増加

下半身:火の紋章付きズボン

 →火魔法の効果が5%増加

足:革のブーツ

 →悪路でもスムーズに進める


 こんな感じ。他のRPGゲームと似たようなシステムだね。


「もしこの人が右手に別のアクセサリーを付けたらどうなるのー?」


 ハルちゃん、ナイス質問ね! ゲームではシステム上不可能だったのだけど、リアルでは無理やり複数の装備品を付ける事が可能になったのよね。

 それじゃあ、アクセサリーをジャラジャラ付けたら、どんどん強くなるのだろうか?

 結論から言うと、そうはならないみたい。リアルでは、後から付けたアクセサリーの効果が優先されるみたいなの。



 さて、この原則は【アイドル】のコスチュームでも同じなの。つまりは、合計で6つのバフを縫い込むことができるわ。


 つまり、ミカンさんにはアイドルっぽいアイテムを6つ作ってもらうことになる。例えばこんな感じ。


頭:小さい帽子

 →表現力30%増加

右手:シュシュ

 →攻撃力50%増加

左手:シュシュ

 →魔力消費量35%軽減

上半身:可愛い服

 →防御力50%増加

下半身:可愛いスカート

 →毎分魔力を1%ずつ回復

足:厚底ブーツ

 →移動速度が20%ダウンする代わりに表現力が100%増加する


「攻撃力50%増加?! そんな魔法陣があるの~?」


「ある……はずです。たぶん【アイドルサポーター】に就けば自然に描けるようになるかと」


「へえ~。【アイドルサポーター】って凄いんだね~」


「はい。見た目普通の衣装でも、何故か鎧よりも防御力がありますからね。謎です」


「そっかあ、それは不思議だね~」

「ゲームあるあるだよねー!」

「なんで水着なのに防御力がこんなにあるんだ? って事だね」

「可愛い衣装を着ていたら、攻撃を躊躇しちゃうんだよ、きっと♪」


「「「なるほど!」」」


 そういう事だったのか! ソシャゲにおける期間限定水着衣装が強力なのは、可愛さにあてられて攻撃が弱まるって事だったのねー!(多分違う)


「衣装デザインはここにいる5人でアイデアを出し合って、なんかいい感じのを作るとして、一番の問題はミカンさんのレベル上げについて」


「そうだよ~。ヒメちゃんは知ってると思うけど、手芸部の前の部長はカンスト済みなんだけど、それは受験終の自由な時間に研究を重ねてようやくって感じなの。だから、私はいつになるか……」


「お姉ちゃんも割といつも刺繍してると思うけど……」


 ミカンさんの普段の様子を知るユズちゃんがそう指摘するも、ミカンさんは首をフルフルと振った。


「そうは言うけど、私は趣味の域を出ないからね~。元部長さんなんて、時には徹夜するレベルで魔法陣の研究をしていたらしいんだ~。あの先輩は、それはもう研究熱心な人だったんだ~」


「こうなると、あまりお行儀良いやり方ではないですが、とにかくレベル上げの効率重視で魔法陣やアイテム製作を行ってもらうのが良いですかね。単調な作業を押し付けてしまう感じで申し訳ないですが……」


「ううん、みんなが頑張ってるんだもん、お姉ちゃんとして頑張るよ♪」


「「「ありがとうございます!」」」「ありがとう、お姉ちゃん~!」



 その後、私たちはミカンさんが現在製作可能なアイテム一覧を書き出して、一番経験値効率が良さそうな物を考えることにした。こういうのは大抵、よりレアなアイテムを使う程経験値効率が上がるというのがセオリー。様々なアイテムを並べて、ミカンさんのスキルに反応する物がないか調べる。


「この綺麗な板(?)とこっちの枝(?)を使ってアクセサリーを作れるみたいだよ~!」


「! この組み合わせはすごいんじゃない?! ゲーミングガーの鱗とカカオトレントの枝。意外な組み合わせですが、何が出来るんですか?」


「え~っと、ちょっと待ってね……。〈クイッククラフト〉っと。髪飾りが出来たね、可愛い♪」


 出来上がったのは小さな髪飾り。ゲーミングガーの虹色に輝く鱗は、それ単体ではただのきれいな板でしかないけど、ミカンさんがちょこっと加工するだけでおしゃれなアクセサリーになった。


「おおー!」

「これは普段使いも出来そう」

「うんうん! ヒメちゃん、ちょっと着けてみて!」


「うん、こんな感じ?」


「「「いい感じ!」」」


 ゲーミングガーの鱗、回収しておいてよかったあ~! 「何かに使えるだろう」って渡してくれたカモノハシさんに感謝!



 ゲーミングガーの鱗はまだまだ在庫があるけど、カカオトレントの枝はもうないわね……。明日からカカオトレントを周回しよう!


「やった、チョコレートをいっぱい食べられるー!」

「チョコは万能だからね、いくつあってもいい」

「ラスクにかけても良し、ワッフルにかけても良し、イチゴにかけても良し、チョコはすごいよね~」


 こらこら、カカオ豆が目的じゃないんだよ? まあ、私もチョコレートは好きだけど!




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