これはチートじゃあ……汗
ライチョウさんと外の世界を散歩した翌日、私たちは「地上絵」について詳しく話を聞く事にした。
『大きな四角形の中に色々書いてあるの~。とっても綺麗なの~(ユズ訳)』
「なるほど?」
「つまり、幾何学模様って事か」
なるほど、そうだったのね。
はじめ「大きな絵」と聞いて、私はナスカの地上絵みたいに何かを象ったイラストを思い浮かべていたのだけど、そうではないみたいね。
「まずは、他の階層にあるか調べてみたいとだね。という訳で、ライチョウさん。お願いします!」
ここは、ライチョウさんと出会った階層の一つ上の階層。ここにも幾何学模様があれば、調査が難航するけど果たして。
『書いてなかったの~(ユズ訳)』
「なるほどね」
「それじゃあ、やっぱり聖氷関連のクエストかなー?!」
「だといいね」
「ありがとね、ライチョウさん♪」
念のために他の階層も調べ、模様が無い事を確認した。という訳で。
「じゃあいよいよ、ここの調査ね。で、どうするのがいいと思う?」
ライチョウさんに絵を書いてもらう? ナイフとフォークを持てたし、鉛筆だって持てるよね? そう思って絵を描いてもらったのだけど……うーん。
『こんな感じなの……。でも、複雑すぎて上手く描けないの……』
無数に線や円が描かれた図形を紙に描き起こしてもらうのは流石に無理があった。
「ライチョウさんにデジカメを持って行ってもらうのは?」
「ダンジョン内の風景は普通のカメラじゃ撮影できない」
ハルちゃんの提案はリンちゃんによって却下された。
忘れがちだけど、ダンジョン内の様子はデジカメやスマホのカメラでは撮影できないようになっていて、〈ロボマネージャー〉を含む特定のスキルを使わないと撮影できないのよね。
ここに来てその設定が活きてくるのねー。なんて考え方は、メタかしら?
「いっそ、ロボマネージャーライチョウさんがロボマネージャーを使えたらいいのにね~」
ユズちゃんがそう言ってライチョウさんを見る。ライチョウさんは聞いてなかったみたいで『え? 自分の事、呼んだ?』みたいな顔できょろきょろしている。
雷を纏って戦っている時はカッコいいのに、こうしていると本当に抜けてて可愛いよね。前に撮った写真でも、とっても凛々しく映ってて……。
……うん?
「ヒメちゃん、大丈夫? 急に黙っちゃったけど……」
「どうしたの、ヒメ?」
「何か思いついたの~?」
「あ、ごめんね黙り込んじゃって。あのさ、前にライチョウさんに戦ってもらった時、ロボマネージャーさんはライチョウを中心に動いていたよね」
「それってこの写真の時だよねー? かっこいいから待ち受け画面にしてるんだ! ……あ!」
「そっか」
「もしかして……」
ロボマネージャーが遠くに行けないのは、エネルギー供給を召喚主から受け取っているから。そう私は思っていた。
だけど、これは正確じゃなかったのかもしれない。正しくは「召喚主のパーティーメンバーからエネルギーを受けとる」なのかも。
つまり、私でもハルちゃんが召喚したロボマネージャーにエネルギーを供給できるって事ね。制限の緩い方が撮影も捗りそうだし、その可能性は十分ありそう。
そして、ライチョウさんは召喚したら「パーティーメンバー」と見なされるようになる。
∴ライチョウさんもロボマネージャーにエネルギーを供給できる(のかも!?)
「試してみよう!」
「もし上手く行ったら凄い発見」
「うん!〈ロボマネージャー召喚〉! ライチョウさんお願いします♪」
◆
もったいぶらずに結論から言ってしまうと、上手くいった。なんの問題もなく、綺麗な上空写真を撮る事が出来た。
「上手くいったね……」
放課後になって、いつも通りハルちゃんの家で写真を確認していたのだけど、それはもう綺麗な写真が撮れていた。
「これでどの階層でも簡単にマップが手に入るね!」
「ホントに大丈夫? これはチートじゃあ……」
「迷路ステージが全部台無しだもんね~。ダンジョンさんに怒られない?」
三人が懸念しているみたいに、これってチートに片足突っ込んでいそうな裏技だよね。ラノベならチートはウェルカムだけど、ゲームでチートはNGよ!
「まあ、不味かったら修正が入るでしょ」
公式のミスでこっちが罰せられることはないでしょ。
それに、しばらくすればこんな事する必要なくなるし。今はこれに頼ってしまおう。
「それで、上空写真がこれかあ。どういう意味だろ、これ?」
ライチョウさんが言うように、すっごく複雑な模様が地上に描いてあった。
「何かの暗号かなー?」
「ここだけ見ればスクエアクーフィーみたい」
「大きな魔方陣にも見えるね~」
暗号説、文字の一種説、魔方陣説。どれも正しそう。
「暗号とか文字は検証が厄介だし、ひとまず魔方陣説を検証してみようか。って事で……」
「うん! お姉ちゃんに渡せばいいんだよね?」
「お願いします!」
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