龍脈?
「うーん、ねえヒメちゃん。この木、なんだか登れそうじゃない?」
「え、この木? あー確かに? いい感じに足場があって登りやすそうかも?」
「何かあるかもしれないから、登ってみよ!」
ハルちゃんが昇ってみようと言ったのは、高さ20メートルはありそうな一本の針葉樹。雪エリアで生えている数少ない樹木のひとつね。確かに、いい感じに枝分かれがあったり突起があったりで、登れそうと言われたらそうかもしれない。
「いいね、やってみよっか」
「ええ~?! 危ないよ~!!」
ユズちゃんが止めようとするが、心配しなくても大丈夫。
「ハルちゃんにバリアをかけてもらえば、このくらいの落下ダメージなら無効化できるから大丈夫だよ」
「あ! 確かに、そうだったね。それなら安心♪」
ハルちゃんの使う回復魔法〈
「全員で行って枝が折れたりしたら困る。誰か一人が言った方がいいかも」
「じゃあ、ハルが行く!」
確かに、リンちゃんが言うように「複数人が乗ると枝が折れるギミック」があってもおかしくない。ここは誰か一人が登るのが良いかもね。
という事で、すぐに立候補してくれたハルちゃんが一人で木登りに挑戦することになった。
「あ、待って! 属性を土にしておいた方がいいかも。必要に応じて鉱石魔法を使えるから」
「なるほど!」
こういう時に進化属性は便利ね。想像したことをなんでも具現化できるのだから、臨時の足場を作ったり、梯子を作ったり、何だってできる。
準備を整えてからハルちゃんは木を登って行った。
そして数分後、ハルちゃんが下りてきた。
「途中でリスの親子がいたよ! 写真も撮ったんだけど、ロボマネージャーさん送信してくれる?」
ピコココ!
「ほら! 見て!」
「「「わあ~!」」」
「何かチュチュチュって言ってたから、話せるかも? ユズちゃん、聞いてきてくれない?」
「は~い!」
「〈ヒールソング〉~♪」
バリアをかけなおし、今度はユズちゃんが昇って行った。そして少し時間をおいて、ユズちゃんが降りてくる。
「う~ん……」
木から降りてきたユズちゃんは、困った顔をしていた。もしかして、何か面倒なクエストが発生したのかな?
「リスさんの話を聞いたんだけど『ママ~。あそこの線って何なの~?』『さあ、何かしらねえ~。ママも知らないわ~』って言ってたんだ~。私から話しかけることは出来なかったから、クエストではなくヒントだと思うんだけど……」
「「「線?」」」
「写真を撮ったけど……スマホの画面じゃわかりにくいよね~。あ、時間。そろそろ戻らないとだよ~」
うーん、良いところだったのに……。まあ仕方がない。今日の探索はここまでにしよう。
◆
放課後になって、私達はハルちゃんの家へ遊びに行った。
「これこれ! お兄ちゃんが要らなくなったパソコン! おっきい画面でしょ!」
おお、これはなかなかいいデスクトップPCね! コアは? メモリは? GPUは?
「使わなくなったって、私の家のPCよりはるかに高性能じゃん……。メモリも32GB。GPUメモリも結構積んでるねー!」
「ヒメ、こういうの詳しいんだ」
「まあねー。ともかく、写真を映そっか!」
「うん! ユズちゃん、グルグルドライブで共有してくれる?」
「は~い。送ったよ♪」
「ありがとー。ダウンロードしてっと、はい!」
画面に写真が映し出される。えーっと。どこ?
「ここ、このあたりなんだけど、写真だと分かりにくいね~」
うーん、確かになんとなく雪の濃さが少し違うような気がしなくもないと言えるかもしれない?(超
「コントラストって変えられる?」
「?」
「あ、えーっとここをこうして……」
画像編集ソフトが入っていたから、コントラストを弄ってみる。えーっと。あ、これ良い感じじゃない?
「すっごーい! ヒメちゃん、エンジニアだあー!」
「すごい、見やすくなった」
「さっすがあ~!」
「もうーそんなに褒めたってなにも出ないよおー。えっと、それでユズちゃんが言ってるのはこの線だよね?」
「そう、そこにあった線! えーっと、こうして見ると奥にも何か線っぽいのがあるね」
「うん。なんだろこれ、このフィールドに道はないはずだし……」
「ヒメ、私これ知ってる」
ここでリンちゃんが何かに気が付いた。何を知ってるんだろ? ちなみに、ゲームにもこんなのなかったから、私は知らないよ?
「これは龍脈だよ、きっと」
「「「龍脈?」」」
えーっと、何だっけそれ? 聞いた事あるような無いような。
「地中を流れる気の流れの事。風水の考え方で、この流れの交差点に家を建てると、その家は繁栄すると言われてる。それと、その交差点で瞑想すれば、力が手に入るらしい。ってこの前読んだラノベで書いてあった」
「「「ラノベ?!」」」
ダンジョン関連の本じゃなくて?!
「地上ならともかく、ここはダンジョン。そういう非科学的でよく分からない物があってもおかしくない」
そう言われると……頷かざるを得ないわね。
「まあそうよね。ダンジョン内のギミックって、人間の考えに大きく影響されるから……。ウザい広告ゲームを模したギミックとか」
「ああ。あれは流石に笑ったね」
龍脈かあ。確かにそういうのがあっても不思議じゃないよね。
調べてみる価値はありそう!
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