ワクワクしてきた!

・鉄の兵士が逆賊を捉えるのに使う銀の絹糸。

 →シルバーシルク

・命なきものに命を宿らせる石。

 →霊石

・氷上を舞うえびが守る聖氷。

・鳥の名を冠する虫が作る黄金の水。

・鬼の異名を持つ鼠の冠。


「次は『氷上を舞うえびが守る聖氷』よね。前半はともかく、後半は全く分からないのよね……」


「前半って氷上を舞うエビって所? これは分かるの?」


「うん、ハルちゃんも知ってるはずだよ?」


「え、ホントに?」


 氷の上にいるエビなんてアレしかないわよね。……そういえばこっちに来てからは一回しか行ってないし、三人は覚えてない?


「私は覚えてる。三人で海鮮丼を食べた時だよね」

「スケートを滑ってるエビだよね~」

「! 思い出した! 水をかけたら転ぶエビ!」


 よかった、三人も覚えてたみたい。

 42層の湖にいるスリップシュリンプ、3メートルくらいのスケートを滑っているエビよ。


「美味しかったよねー! ハル、また食べたくなってきちゃった!」

「今度はエビフライにしてもいいかも」

「私はエビチリが食べたいかな♪」


「そうだね、この機会にいっぱい獲りたいね! 話を戻して、後半の『守る聖氷』って部分が本当に見当がつかないのよね……」


「あの辺り一帯の氷って事じゃないの~?」

「それなら、守るって表現は変じゃないかな?」


 ユズちゃんが言うように、あの辺りの氷って意味なんじゃないかって一瞬思ったけど……ハルちゃんの指摘もその通りなのよね。


(今のヒメ、本当に分かってなさそう。そんな事もあるんだ)

「……〈ききみみずきん〉か〈花言葉〉を使えば何か分かるのかも?」


 一瞬の間の後リンちゃんがそう言った。なるほど、確かにその可能性は大いにあるよね。


「ひとまずもう一回あの湖の周囲を探索してみて、何も見つからなかったら周囲の動植物の調査をするって感じがいいかな」


「はーい」「りょ」「そうだね~」



「『鳥の名を冠する虫が作る黄金の水』はもはやなぞなぞだよね。分かる?」


「これはハルも分かったよ!」

「うん。あれだよね」

「甘くておいしいアレだよね♪」


「うん、私もみんなと同じ考え。鳥の名前を冠する、これは取りの名前を冠、頭につけたって意味と解釈して、答えは『スズメビー』かな。で、それが作る黄金の水と言えば……」


「「「はちみつ!」」」


「だよねー。まあ、地上だとスズメバチは蜂蜜を作らないし、なんでやねんって言いたくなるけど今更だね、あはは」


「確かハルの家にまだ余ってるよ!」

「私の家にもまだあるよ~」

「なんなら、そのマジックバッグに在庫が沢山入ってたはず」


「そうなんだよね。という訳で、これに関しては改めて取りに行く必要は無いかな?」



「そして最後は『鬼の異名を持つ鼠の冠』、これもさっぱり分かんない。ネズミ型のモンスターならいつくか知ってるけど、どれも鬼なんて名前は付かないんだよね……」


 まさか、東京中央ダンジョン以外の魔物? いやでも、それは無いと思うんだけどなあ。そもそも、他ダンジョンのアイテムがアリなら、今までの考察が全部パーになっちゃう。


「うーん。オニネズミって名前のネズミ、現実にいそうじゃない?」

「あ、いるみたい~。アフリカオニネズミって名前の鼠がいるみたいだよ♪」


 へえ、そんな鼠がいるんだ! 初めて知った!


「じゃあ、アフリカオニネズミの冠を集めたらいいのかな? でも、冠ってなんだろ? まさか頭蓋骨?!」

「え~?! ハルちゃん、そんな怖いこと言わないでよ~! きっと、スズメビーみたいに『言葉の冠』って事だよ!」


 流石に「頭蓋骨が材料」なんてあり得ないよ! だってこのゲーム、そんな怖い世界観じゃないし!! ダンジョンで死んでも地上で生き返る、超緩い世界なんだから!


「そもそも、冠は頭に乗せるもの。頭蓋骨は頭の中にあるじゃん!」


「あはは、そうだよねー。じゃあ言葉の頭についているものだから……アフリカ?」


「アフリカ大陸を投げ込めばいいのかな?」


「「どうやって?!」」


 アフリカ大陸の砂を入れろって事? いや、だとしてどうやって手に入れたら?

 ……なんて騒いでいると。リンちゃんがおずおずと手を挙げた。


「あの……。楽しんでるところ申し訳ないけど、多分分かった」


「「「え、ホント?!」」」


「うん。『鬼の異名を持つ鼠』ってカピバラの事じゃない?」


 カピバラ? 確かにカピバラはげっ歯類だけど……それを鼠と言うのはいかがなものかと……。


「ちなみになんで?」


「? もしかして、ヒメも知らない? カピバラの和名って鬼天竺鼠なんだよ」


 え、何そのカッコいい名前、そんな名前がついてるの? 調べてみると……。


「ほんとだ……確かにそう書いてる」

「じゃあ、カピバラが材料?」

「カピバラ型の魔物っているの~?」


 カピバラ型の魔物……確かにいるわね、東京中央ダンジョンに。しかも、アレを意味してるなら、冠の意味も分かるわ。


「いるね。『カピ薔薇』、バラはRoseの薔薇だけど、って言う魔物がいるよ。確かスズメビーを倒しに行った時に、言葉で説明したはずだけど……覚えてないよね」


 三人が首を振る。まあそうよね。


「頭にバラが生えてるカピバラの魔物なの。その薔薇を採ればいいって事だと思うけど……どうやるんだろ? カピ薔薇の頭に生えてるバラは、カピ薔薇の体の一部だから、切り取っても消滅するだろうし……」


 魔物の一部は切り取ってもすぐに消滅する。魔物の素材は、ドロップアイテムだけ。それがこの世界の、このゲームの仕様。


「じゃあ、これも要検証?」


「だね」


 スリップシュリンプの調査とカピ薔薇の調査。

 うーん、いいわね! ぜーんぶ知ってるダンジョンについて、初心者三人に説明しながらクリアするって言うのも楽しいと言えば楽しいけど、やっぱり私自身も未知の探求をしてみたいって思ってたんだよね!

 なんだかワクワクしてきた!





※今話で登場した魔物について


・スリップシュリンプの登場は第一章『海の幸』

・スズメビーとカピ薔薇の登場は第一章『養蜂の花園』


です。


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