カモノハシの長老
もう少しでゲーミングガー(仮名)を釣りあげれそうという所で、糸が切れてしまい逃げられてしまった。釣り餌(中)を使えばどんな大物が釣れるのかとワクワクしていただけにそのショックは大きく、ハルちゃんの目に涙がたまる。
「まさに、逃がした魚は大きいだね、あはは……」
涙をごまかすようにそうつぶやいて笑うハルちゃん。私たちは「またリベンジしよう」と励まし、カモノハシさんも『クワ!』と鳴きながら、ハルちゃんの背中をなでた。
『クワワ、クワクワ! クワクワ、クワ……。クワ、クワワワクワ……? クワワ!』
「……ごめん、なんて?」
何か伝えようとしたけれど、ハルちゃんは直接動物の声を聴けないからね。ユズちゃんに通訳してもらう必要がある。
「えっと、『あんな大きな魚、見たことないよ! だから逃げられたのも仕方がないさ……。そういえば、お祖母ちゃんが大きな魚について詳しかったような……? うちに来てよ!』だって~。どうする?」
「うーん、でも今日はもう時間が……」
「そうだよね~。明日にしていいかな?」
『クワ! クワワ~』
コクリと頷いた後、カモノハシさんは
にしても、レインボー○○って言う魚が釣れるって事も知らなかったし、それでハイスコアが記録されるっていうのもゲームではなかった要素。そしてもちろん、カモノハシさんのおばあちゃんに話を聞くなんてクエストも聞いたことないのよね……。いったいどんなことが起きるんだろ? 楽しみ!
◆
次の日、私たちはカモノハシさんに案内されて、一匹の老いたカモノハシと対面することになった。茣蓙の上でチョコンと座っている姿からは全く威厳は感じないけど、このカモノハシ村では長老として尊敬されているらしい。
『よく来たね、人間の旅人よ。孫から聞いたよ、昨日大きな魚を釣ろうとして逃げられたんだって?(ユズ訳)』
「はい、そうなんです」
「でっかい口にギザギザの歯を持った魚でした!」
「私たちは、ゲーミングガーって呼んでる」
『……なるほどね。確かにそいつの名前はゲーミングガーじゃの。そいつを釣りあげようとして、糸が切れたんだったの? それは、糸が弱かったからではない、彼らの口の構造にあるさね(ユズ訳)』
「口の構造……?」
『彼らの口角はナイフのようになっているんじゃよ。身の危険を感じたからそれを使って糸を切って逃げたんじゃろうな(ユズ訳)』
「なにそれ、すっご」
「ずるいじゃん、そんなの!」
「じゃあ、どうやって釣るのが正解なんだろ」
『正直に言うと、普通の糸では確実に切られてしまう。だから、魔力を込めた糸を使って釣るさね。シルバーコードって聞いたことはあるかい?(ユズ訳)』
「シルバーコード?」
私は聞いたことないわね。
「あ、ハルそれ知ってる! 確か魂と肉体を繋ぐ糸だよね?」
「ごめん、私も知らない」
「あ~。聞いたことあるかも、それ!」
ハルちゃんが言うには、シルバーコードは魂と肉体を繋ぎとめている糸で、死ぬとはこれが切れる事……という都市伝説があるらしい。
『ははは、人間の間ではそんな噂があるのかい。私が言うシルバーコードはそんなスピリチュアルでファンタジックなものじゃなくって実在する物さ(ユズ訳)』
いや、カモノハシの長老自体、十分ファンタジックなんですけど?! というツッコミをぐっとこらえて、私たちは長老さんのお話を聞く。
『シルバーコードは心から溢れる思いを直接乗せる事が出来る糸さね。例えばそれ、マジックバッグにつかわれとぅ糸は魔方陣を介して現象を引き起こす物じゃろ? そうではなく、シルバーコードは心で思い描いた特徴を直接乗せる事が出来る糸なんじゃよ(ユズ訳)』
しかも、カモノハシさんの言っているシルバーコードも十分スピリチュアルなんだけど?!
『作り方が書かれたメモがどこかにあるはずじゃ。ちょっとそこの紙束を持ってきてくれんかの? ……ありがとう。えーっと、どこだっけのう……(ユズ訳)』
そう言って、老眼鏡をかけてノートをペラペラめくり始めた長老さん。
「……あの老眼鏡はいったいどこから出したんだろ?」
「聞いてみる?」
「いや、いい」
『
おお、あったあった。これじゃこれ。読み上げるぞ。
・鉄の兵士が逆賊を捉えるのに使う銀の絹糸。
・命亡き者に命を宿らせる石。
・氷上を舞う
・鳥の名を冠する虫が作る黄金の水。
・鬼の異名を持つ鼠の冠。
これを【アイテム職人】に加工してもらえば、シルバーコードができる。
だそうさね。……昔のメモだから、これが何のことだったか覚えとらんが……まあ、何かの役に立てば幸いだよ。
(ユズ訳)
』
ふむ。これはいったい何の事かしら?
分かる物もあれば、分からないものもあるわね。
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