初めての魚釣り

 ダンジョンでの魚釣りの話題が出た翌日、早速私達は釣りスポットに向かった。


「じゃーん! 釣り竿!」


 今日使う釣り道具はハルちゃんの私物を四人で順番に使う予定。今日はお試しみたいなところがあるからね、わざわざ専用の道具を買う必要はないかなって思ったの。今日やってみて、もしみんな釣りを楽しめそうなら、一人一本竿を用意しようかと考えている。


「それからサングラス!」


「おー! え、サングラス?」

「かっこいいね」

「確かに、釣り人ってサングラスをしてるイメージあるよね~」


「うん! パパが言うには、光の反射を抑えることで仕掛けが見えやすくなるらしい!」


「ほへー、そんな意味があったんだ」

「なるほど、偏光板と同じ原理」

「かけてみて~」


「うん、どうかな?」


 ハルちゃんがサングラスをかけて、決め顔でこっちを見た。か、可愛い! ハルちゃんって何をしても可愛いわ!


「似合ってるよ!」


「えへへ。実はみんなの分も買ってきたんだ、みんなもかけてみて!」


「え、ありがと、ハルちゃん!」

「ありがと」

「ありがと~!」


 それぞれサングラスをかける。


 おおーリンちゃんは様になってるね。かっこいい! このリンちゃんにナンパされたら、どんな女の子もOKしちゃいそう。


 ユズちゃんは、初めてのサングラスにちょっと恥ずかしがっているところが何とも可愛い!

 こう、なんていうか「お嬢様がクラスメイトのギャルにコーデされて、『こ、こんなはしたない恰好……』と顔を赤らめている」みたいな可愛らしさがあるわね。……伝わるかな、この例え?


「ヒメちゃんもに合ってるよ! 海外のスターみたい!」

「分かる。ニホンの皆サン、コンニチーワとか言ってそう」

「あー、なんかそれ分かるかも♪」


「そう? 『Hi, Japanのミナサン、アリガトー!』みたいな?」


「「「おおー!」」」



 ひとしきりサングラスで遊んだあと、いよいよ釣りにチャレンジすることに。


「パパがこのままじゃ池での釣りは出来ないみたいに言ってたんだけど、どうすればいいのかな?」


「任せて」


 リンちゃんがなんかいい感じにセットアップしてくれた。これは、いわゆる浮き釣りかしら?


「まずは私がやるね。ここを抑えて、竿のスウィングに合わせて糸を離す」


 ヒュ! ……ぽちゃん。

 遠くの方に着水した。見事なスイングね


「とこんな風になるって訳」


「なるほど!」「リンちゃん、かっこいい~!」


「あとは待つだけだね。ゲームみたいに、あのウキがグググッて水中に引かれたら糸をまく」


 そうリンちゃんが説明していると、早速ウキがぴくぴくと震え始めた。


「「引いてる!」」


「まだ。もっとグイっと引くまで我慢。……今!」


 リンちゃんが糸を巻き始る。竿がしなり、魚とリンちゃんの綱引きが始まった。これぞ釣りって感じね!


「網準備して」


「はい!」


「ありがと、ヒメ。そい、釣れたね」


「おめでとー!」

「すっごーい!」

「なんていう魚だろ~?」


「イワナかな? だいたい10センチくらいか、これじゃあ食べれないね。逃がしてあげよっか」


「えーもったいない! けど、そうだよね。キャッチアンドリリースが大事ってパパも言ってたし」


 小さい魚は逃がしてあげて、大きいものだけ持ち帰る。それがマナーよね。……ダンジョンでの釣りにおいても、その理屈が通じるのか分かんないけど。


「そもそも、漁業権的にオッケーなのかな?」


「あ、ちゃんと調べたよ~。『ダンジョン内で手に入れた物は全て手に入れた者に権利があり、それを制限はしない』んだって。ただ、剣や銃はそのままだと銃刀法違反になるから、届け出をする必要があるみたいだよ~」



 次はハルちゃんの番。さっきと違って入れ食いではなかったけど、2分ほど待つと当たりが来た。


「待って、すっごい引いてる!」


 竿が大きくしなる。これは大物か?!


「釣れたー! これは……長靴じゃん! はあ、大物だと思ったのに……」

「こんな漫画のようなことが起こるとは」

「残念だったね……。もう一回、ハルちゃんが釣る?」


 残念ムードが漂う。けど待って欲しい、さっき明確に竿がしなってたのよ。

 そして釣れたのが長靴。これが意味することは……。


「ハルちゃん、それアタリだよ! よく見て」


「え?」


 ピチピチ!

 ピチピチ!


「うわ! 長靴が動いた!」

「ええ……」

「長靴そっくりの生き物って事……?」


「正確には魔物なの、それ。ハルちゃん、〈マジカルバースト〉で仕留めちゃって」


「うん! くらえ〈マジカルバースト〉」


 マジカルバーストを食らった長靴型モンスターはその場にドロップアイテムを遺して消えてしまった。


「なんだろ、このドロップアイテム? お団子? いや、釣りの餌かな?」


 ドロップしたのは赤色の肉団子っぽい物。こ、これは!


「釣り餌(中)じゃない! 当たりよ!」


「そうなの?!」


「それをエサに釣りをしたら、大物が釣れる可能性がアップするの!」


 釣り餌(中)はハズレの魔物(長靴など)から時々ドロップするアイテム。これを使って釣りをすると、レアが当たる確率がちょっと上昇するの!

 ちなみに、釣り餌(下)と釣り餌(上)もあるよ。


「おおー、それは嬉しいね! ハル、使ってみたい!」


「うん、ハルちゃんがあてたんだし、ハルちゃんが使ってね」





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