金の卵を産む鵞鳥

 コカトリスを派手に倒した私たちは、早速ドロップアイテムを確認することにした。


「これは……アヒルのおもちゃ?」

「ガチョウじゃないかな~?」


 ドロップしたのは木彫りの鵞鳥ガチョウ。ふわふわな人形ではなく、リアルな木彫り人形ね。


「細かいところまで掘られてる。これはすごい」

「今にも鳴きだしそうだよね」


 と私が言ったまさにその瞬間。


『クワァ!』


「「「「ほんとに鳴いた!!」」」」


 木彫り人形が大きな声でクワァと鳴いた。近くでまじまじと見ていた私たち四人は突然の事に思わず後ろにひっくり返ってしまった。

 はあ。び、びっくりしたあ。ゲームではこんな挙動しなかったのに……。


 私達が少し警戒しながらガチョウを眺めていると、これまたびっくりすることが起こった。


「背中が割れたー!」

「割れたというか……開いた? うわ! 湯気が出てきたよ~!」

「? 中に何か入ってる」


 ガチョウの背中部分がパカッと開いて中から6つの卵が出てきた。

 ただの卵ではない、金色に輝く卵よ! この遺跡の入り口に書いてあったとおりね。


「金ぴかの卵だー!」

「すご~! 綺麗だね~♪ でもこれ、金ぴかというか、光ってない……?」

「まーた、不思議オブジェクトか……」


 ユズちゃんが言うように、この卵は金色に発光している。


「検証はダンジョンを出た後にして、ひとまず帰ろっか? あ、ご視聴ありがとうございました~」


 カメラに向かって手をフリフリ。その後、私たちは魔方陣に乗ってダンジョンを後にした。



〔こうして、四人は宝を持って遺跡を後にしたのでした。この富を元手に四人は億万長者になったとも、逆に宝を巡って仲間割れしたとも囁かれていますが、真相は明らかではありません〕


〔特殊階層『輝卵遺跡』を攻略しました〕

〔再挑戦可能になるまであと1年です〕


〔この特殊階層に攻略ランクはありません〕

〔報酬『輝卵鵞鳥』を入手しました〕




「え、何さっきのアナウンス?」

「仲間割れはしたくないよ~!」


「一応、これって物語の世界に入ってるって設定だから。ああいうアナウンスを流してるだけだよ」

「そもそも、一年で再挑戦可能なんだよ。仲間割れするくらいならもう一回取りに行けばいいだけ」


「「確かに」」


 意味深なアナウンスにハルちゃんとユズちゃんが不安そうにしていたけど、安心してほしい。さっきのはただの「締めの言葉」だから。


「そ、それでヒメちゃん! さっきの卵って本当にきんなの?!」

「だとしたら、私たち大金持ち~?! ってそんな訳ないよね~」

「そもそも、光ってる時点で絶対怪しい」


「あはは、みんなもう気が付いていたのねー。じゃあ、もったいぶらずに種明かししちゃうと、さっきのは『輝卵鵞鳥』っていうアイテムで、効果は『普通の卵を入れると、おいしい温泉卵にしてくれる』っていう物よ。だからまあ、無価値な物って訳じゃないけど、高価なものではないかな」


「まさかの調理器具?! しかも超限定的な使い方しかできない! そんな調理器具、あっていいの……」

「あれ、ハルちゃん見たことない? 普通に売ってるよ、温泉卵を作る用の鍋。前にママが買ってたよ~」

「私の家にもある。もちろん卵が光ったりはしないけど」


 ピカーって光っていることを除けば、ただの温泉卵が出てくる調理器具なのよね、これ。温泉卵作る鍋なら家電量販店でも売ってるし、なんなら前世の百円ショップに「レンジで温泉卵を作れちゃう!」みたいなものが売っていた覚えがある。


「とりあえず、放課後になったら食べてみよっか」


「そっか、今日から学校かー」

「クラス替えは無いし、また同じクラスだね♪」



 気になる温泉卵のお味は……すっごく美味しかった!!

 固まってる所がなくて、全部がすっごくトロトロなの。だけど、生っぽくはない。これはすごいとしか言いようがないわ! 再挑戦まで一年っていうのも納得ね。


 だけど、割と大きなこのガチョウ調理器具を、わざわざキッチンに置くかと聞かれると……。微妙ね。そもそも温泉卵って毎日食べたいような物じゃないし。お弁当に入れるのも難しいし。


 結局、リンちゃんが持って帰ることになった。部屋に飾っておくんだって。






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