ボス戦
どっかで見たゲーム5連発の後にも、ちょっとした謎解きや軽いアクション、迷路などを超えて、とうとう遺跡の最奥に到着した。
「すっごい大きな扉……。ボスがいそうな予感!」
「分かりやすい……」
「ボスはどんな敵なの?」
「ボスは……いや、これを言ったら初見感がなくなるから、敢えて言わないでおくね。特殊なギミックがあるわけでもないから、思いっきり魅せプできると思うよ!」
そう言って私はロボマネージャーを指さす。なんとなくだけど、特殊階層の映像って視聴回数が多い気がするんだよね。
これはただの予想だけど、私達みたいにレベルの低い【アイドル】を見るような人って、戦う姿よりもわいわい楽しむ姿を見に来てるんだと思う。戦闘シーンをみたいならもっと高レベルのパーティーのチャンネルを見ればいいんだし。
という訳で、今も撮影してたんだけど、今回は戦闘シーンもカッコよく決めたいなって思ってるの。進化属性をフル活用して、ただただいい絵を取る。今日はそんな戦闘をしようと思う。
あーしてこうして、と魅せプのためのシナリオを伝える。
「それ、すっごくかっこよくなりそう!」
「面白そう~!」
「魔力の無駄使いだよね、それ。でも、わくわくするね」
「うんうん。それじゃあ、リハだけして、後は本番と行こうか。ロボマネージャーさん、撮影お願いね」
軽くリハーサルをした後、私たちは巨大な扉を開いた。
◆
扉を開くと、たいまつが順番にボッ!ボッ!と灯り、徐々にボス部屋全体を照らした。うーん、ここだけ見たらラスボス感あるわね。実際にはそんなに強くないけど。
『ぐぎゃあああああ!!』
「で、でっかい鶏だー!」
「でも尻尾は蛇みたいだね~。ちょっと不気味だね……」
「コカトリスかな?」
うんうん、いい反応! ここにいるのはいわゆるコカトリスと呼ばれている魔物よ。分かりやすく言うと蛇とニワトリを混ぜたような魔物だよ。
「リンちゃんの言うように、コカトリスみたいだね。それじゃあ、ボス戦って事で、必殺技を使うよ!」
カメラの事も考えてそう宣言する。三人は私の言葉にコクリと小さく頷き、以心伝心感を演出する。
「うん! じゃあハルから行くよー! 〈ヒールソング〉〈レイズソング〉〈私の歌を聴いて!〉」
まずハルちゃんにバフをかけてもらう。ちなみに歌ってもらう曲は、『
「じゃあ次は私達が。行くよ!」「ん」
続いてリンちゃんと私がコカトリスに向かって駆けだす。一歩、また一歩と近付くと、その巨大さを実感できるわね。頭のてっぺんまでの高さは6メートルくらいかしら? 純粋な高さがそれだから、全長となると10メートルはあるんじゃないかな?
そんなコカトリスは「なんだこいつら」というような目線で私たちを見下ろす。ふふふ、そんな風に余裕ぶっていていいのかい、コカトリスさん?
「足場を作るよ! 『結晶の階段』!」
ユズちゃんが鉱石魔法を使って足場を生成、それを使って私とリンちゃんはコカトリスの頭よりも高い位置まで飛び上がった。
コカトリスと目が合う。その瞳は少し驚いているように見えるわね。
「「頭が高い」」
私とリンちゃんはそう呟きながら鉱石魔法を使用。重厚で強固な金属の鎖を生成し、コカトリスの首を、体を、縛り付けて地面と繋ぎとめる。
こうして出来上がったコカトリスの姿はまるで、人の
『ゴッゲゴッゴー!!』
ようやく自分の立場を理解したのか、怒りと闘争心をむき出しにするコカトリス。しかし、私達が生み出した鎖をちぎることは出来ない。
というのも、進化属性で生み出す物は、時間経過で消えてしまうっていうのはちょっと前にも話した通り。その代わりと言ってはなんだけど、かなり無茶な要求にも応えてくれるの。今なら「コカトリスを縛り付ける事が出来る金属」をイメージしたから、その通りの効果が表れているって訳ね。
さて、次はユズちゃんの出番よ。足場を作った直後にユズちゃんには〈コスチュームチェンジ〉で水属性に変身してもらい、コカトリスの周囲に雪を降らせて体温を奪ってもらう。
これでコカトリスの動きを鈍くして鎖へのダメージを最小限にしつつ、幻想的な雰囲気を生み出す事が出来る。
さて、私とリンちゃんも着地後にコカトリスに白い粉を振りかける。これは氷ではなく岩塩。岩塩も鉱石の一種だから、鉱石魔法の範疇に入るわ。……入るの!
ともかく、氷に塩をまぶすと急速に冷えることは有名よね。それを利用した魔法って訳!
『コケ……コッコ……』
弱ってきたわね。それじゃあ、とどめと行きましょうか。
ハルちゃんには歌を中断してもらって、全員で火属性に変身する。そして、金属製の鎖を介して雷魔法を撃ち込む!!
「「「「とどめよ!!」」」」
『コケコケコケコケコケコケコケ?!』
今のは、人間で言う所の「アババババ……」的な断末魔なのかな?
何はともあれ、まばゆい光に包まれながらコカトリスはドロップアイテムに変化した。
うん、カッコよく魅せプ出来たと思う!
ほら、ロボマネージャーさん達も「いい感じだったよ」と言わんばかりにビュンビュンって飛んでる。これは投稿が楽しみね。
あーあ、早くコメント欄を解放したいなー。この世界だと、中学生が運営するチャンネルにはコメント欄を付けれないのよね……。
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