どっかで見た×5

 次の部屋には、ライオンの体と人間の頭を持った生き物の像が置かれていた。


「今度こそ、これがスフィンクス!」


「正解。これがスフィンクスだね」


「やったー!」

「この像もしゃべるのかな~? こんにちは~!」


〔時間的にはおはようなのでは? まあともかく、よくぞここまで来た。しかし、この先にはいかせぬぞ! この先に進みたければ、我が問いに答えよ……!〕


「あ、ハル、それ知ってる! 四本足で歩いて、二本足になって、その後三本足で歩く生き物はなんでしょうか? だよね!」

「あ、私もそれ知ってる! 答えは人間だよね?」


〔いや、そんなベタな問題は出さないぞ? スフィンクスに対してそういう発言をするのは、ハラスメントになるぞ。スフィハラって聞いたことないか?〕


「え、そうだったの?!」

「ごめんなさい!!」


〔すまん、冗談だ。スフィハラなんて言葉、あってたまるか。それじゃあ問題だ。どどん〕


 え、ここのスフィンクスって会話できるんだ?! ゲームでは問題を出すだけで話せなかったのに!

 と私が驚いている間にも、話は進んでいき。いつの間にか問題が出題されていた。スフィンクスが「どどん」と言うのと同時に、地面から壁が生えてきた。そこには棒人間のような物や変な生き物の姿が描かれている。それはまるで……。


「「「壁画?」」」


 三人が口をそろえて言ったように、それはラスコー洞窟の壁画のようだった。まじまじと壁画を見る私たちに、スフィンクスはルールを説明し始める。


〔ここに描かれている人間がお前たち、ここには次の部屋へ行くための鍵がある。正しい順番でピンを抜くことで、鍵へたどり着いて見せよ! ただし、ここに描かれている化け物はみな凶暴で、人を食おうと今もよだれを垂らしている……〕


「「「どっかで見た!!」」」


 嘘広告、それはわざと簡単なゲームで失敗する様を見せて視聴者をイライラさせ、「私がクリアしてやる」と思わせる広告。そこに登場するゲームが今ここに、本当に遊べる形になって表れた!


「でも、これ簡単だよね? まずこれ、次がコレ、最後にコレ。でいいんでしょ?」

「合ってると思う~」

「問題ないんじゃない? ね、ヒメ」


 ハルちゃんが示した答えは完璧だった。その通りにすれば確かに化け物とエンカウントすることなく、鍵を取りに行くことができる。


 だけど、それは不正解。

 正解はこうよ。


「合ってると思うけどちょっと待ってね。ねえ、スフィンクスさん。ここにいる魔物ってどのくらい強いの?」


〔おおよそ、150層にいる魔物くらいの強さだな〕


「だったら倒せる?」


〔だろうな〕


「「「〔……〕」」」


 という訳で、ここでの正解は「化け物と戦ってドロップアイテムを貰う」が正解よ。ドロップするのは通称「エジプトシリーズ」って呼ばれているアクセサリーで、一式を身に着けると特殊効果が発揮されるわ。

 それなりに強いのだけど、いかんせん見た目が「ザ・古代エジプト」って感じだから普段使い出来るものではないわね。昔行った宝石屋さんで売ろうっと。



〔同じ色のピースが三つ揃えば消えるぞ〕


「「「どっかでみた!」」」



〔敵を倒して塔を高くしよう〕


「「「どっかでみた!」」」



〔えー、ゴホンゴホン。(変なイントネーションで)え?! 今ゲームを始めると、ガチャ120連分が貰えるんだって?!〕


「「「どっかでみた!」」」


 ちなみに、この後実際に120個のカプセルが貰えて、そこに入っているアイテムを上手く組み合わせて謎解きをする脱出ゲームがあるのだけど、詳細は割愛するわね。



〔左右の扉を選んで、値を大きくしよう。初期値は1だぞ! 例えば最初の扉で『+1』を選べば2になるし、『-1』を選んでしまうと0になってしまうぞ!〕


初期値は1

+1・-1

×3・+3

-2・×1

×3・+5

-7・÷2

+8・×2

+2・-4

×25・□×□(二乗する)


「「「これも、どっかでみたー!!」」」


 という訳で、どっかで見たミニゲーム5連発でした~。なんでやねん!

 あれだよね、広告だとわざと-とか÷に突っ込んでいくんだよね。ほんと、そういうものだってわかっていても、どうしてもイライラしちゃうのよね。


 ちなみにこの最大値、求められるかな?



……

………



「これも簡単だよね~。最大にすればいいんだから、こうかな♪」


+1・-1

 +1を選択→1+1で2になる


×3・+3

 ×3を選択→6になる


-2・×1

 ×1を選択→6のまま


×3・+5

 ×3を選択→18になる


-7・÷2

 -7を選択→11になる


+8・×2

 ×2を選択→22になる


+2・-4

 +2を選択→24になる


×25・□×□(二乗する)

 ×25を選択→600になる


※最後の計算は、24×25=6×4×25=6×100=600と暗算できる



「かな? 計算、間違ってなかった?」

「合ってると思うよー!」

「うん」


 いいね、24×25を暗算で解いたのはえらいと思う! だけど……。


「うん、今までの流れからしたら、それが答えだと思うよね……」


「「え?」」「? あ、まさか」


「お、リンちゃん分かった?」


「たぶん。これが答え」


+1・-1

 -1を選択→1-1で0になる


×3・+3

 ×3を選択→0のまま


-2・×1

 -2を選択→-2になる


×3・+5

 ×3を選択→-6になる


-7・÷2

 -7を選択→-13になる


+8・×2

 ×2を選択→-26になる


+2・-4

 -4を選択→-30になる


×25・□×□(二乗する)

 □×□(二乗する)を選択→900になる


「うわぁ……。ほんとだ……」

「すっご~い! リンちゃん、なんで気が付いたの?」


「前からあの広告見るたびに『いっそマイナスになったらどうなるんだろ』って思ってたから」



 という訳で、最大値は900よ!



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