冒険がしたい!
『ラビリンスアドベンチャー ~ロークウォン島の黄金宮~』
お宝を求めて遺跡調査に乗り出すも、トラブルの末に遺跡の内部に閉じ込められてしまったトレジャーハンターの主人公が、罠をかいくぐりながら命からがら財宝と共に脱出する。そんな感じの映画だ。
※なお、説明がテキトーなのは、この映画に百合要素がないためである。断じて考えるのが面倒になったからではない。
特に見たいものがある訳でも無く、ただなんとなくテレビをつけたハルは、ちょうどその時放送されていたこの映画を見ることにした。
スリリングなアクション、難解な仕掛け、それらを乗り越えた先にある財宝。自分もこんな感じの冒険をしてみたいと思ったハルは、ヒメに電話をかけてこう伝えた。
「ハルもアドベンチャーをしてみたい!」と。
◆
「アドベンチャー、ねえ。いくつか候補はあるけど、全部今のレベルじゃあ厳しいのよね……」
ハルちゃんに、映画『ラビリンスアドベンチャー』みたいなアドベンチャーをしたいとリクエストされてしまった。確かにそういう特殊階層やミニゲームは存在する。ただ、そういう系は浅層には無いの。
理由は単純、浅層でしか活動できないような経験の浅い【アイドル】を危険な目に合わせないようにするためね。
「謎解きならあるけど、それでいいかな? アドベンチャーとはちょっと違うかもしれないけど……」
『謎解き?』
「うん。こう、アイテムを集めて障害物を乗り越えたり、ヒントを集めてパスワードを解除したりする感じ。いわゆる脱出ゲームに近いかな?」
『おおー! それ、楽しそう! お兄ちゃんもサークルの友達とリアル脱出ゲームしたって聞いたから、ハルもしたかったんだ!』
リアル脱出ゲーム! そういえばそんな施設が出来たという噂を聞いたわね。最近は謎解きがブームなのかな?
という訳で、次の日に早速脱出ゲームを楽しめる隠しエリアに行くことに。
まずは隠しエリアへ行く方法を見つけないとね。もちろん私は事前に知っているけれど、今回は正規の方法で隠しエリアを見つけてみようと思う。と言ってもそう難しい物じゃないけどね。ユズちゃんのスキル〈ききみみずきん〉で動物さんの会話を聞くだけで行き方が分かるし。
で、私達はとある遺跡の前にたどり着いた。
「ここが目的地の遺跡だね!」
「洞窟?」
「雰囲気的には天然の洞窟だね。だけど、一部人工物っぽい部分がある」
「天然の洞窟を利用して作った地下遺跡って感じ?」
「だね。まあここは迷宮内だし、実際に誰かが作った遺跡というよりも、そういう雰囲気のステージって考えるべきかもだけど……。ま、それは言わない約束だね」
「ヒメちゃん、そう言いつつ口に出してるじゃん!」
「えへへ、つい」
それはともかく。
まず私たちは、洞窟の入り口の壁に刻まれた文字を読むことにした。
“此処は金の卵を産む鵞鳥が眠る迷宮
「金の卵を産む……
「ガチョウだね」
「童話でよく出てくるよね~。え、本当に黄金の卵を産むガチョウがいるの?!」
「もしそうなら、すっごいよね! という訳で早速出発よ!」
「おおー!」
「ん、楽しみ」
「頑張ろ~!」
洞窟は光を放つ謎の鉱石のおかげで明るく、また足元も多少の凸凹はあったが比較的進みやすかったので、特に困ることなく進む事が出来た。そして、最奥と思われる所には……。
「なんだろこれ、ダイヤル?」
6つのダイヤルが設置されていた。ダイヤルにはデジタル数字で0から9まで書かれているわね。
「暗証番号を入れないといけない感じかなー?」
「ダイヤルの横に何か書いてる。えっと『p=』って書いてる? 数学の問題かな」
「リンちゃんの言う通りかも~! こっちにヒントっぽいものを見つけたよ♪」
【ダイヤル横】
b=?
d=?
n=?
p=?
q=?
u=?
【ユズちゃんが見つけたヒントっぽいもの】
以下の文章が壁に刻まれている。
“
数学を学ぶことの価値はその普遍性にあり。
b+1=2×n-(p+2×d)
※1と2はデジタル数字で書かれている。
”
「ユズちゃんの見つけてくれたこの数式、わざわざデジタル数字で書いてるって事は、やっぱりこれがダイヤルを開くカギって事なのかな?」
「きっとそうだよー! でも、これだけだと解けないね……。確か未知数が6つの方程式は、6つ以上の関係式がないと解けないんだよね?」
「そうだね」
「じゃあ、他の情報がないか探そ」
何か無いかじっくり観察しながら来た道を戻る。すると壁に数式を一個発見。さらに巨石にもう一個書かれているのを見つけた。
【追加で見つかったヒント】
p=2×q+1
1-b×(1/2)=2×u-12
※ただし1と2はデジタル数字
「あと3個あるはずだよね?」
「……なかなか見つからないね」
「まさかとは思うけど、この辺に落ちている石にかかれていたり?」
ユズちゃんが恐ろしい事を言った。もしそうなら、途方もない労力が必要になるよ……。
「えー! まさかー!!」
「でも、その可能性は否定できない」
私たちはそのへんに落ちている石を拾って何か書かれていないか確認することにした。……しかし、5分ほど経っても何かが書かれている石は見つからない。
さて、どうしたものか。
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