アイドルは励む

進化属性

 熱血スノーマンと戦った四日後、なんとまたラッキーイベントに遭遇した。フィールド型のラッキーイベントで、出現したフィールドは「編み物の国」、すべてが毛糸で出来たフィールドで、あみぐるみで出来た魔物とエンカウントするわ。


 もちろん私たちは編み物の国に入って、レベル上げをしていたのだけど、その最中にそれは起こった。


特殊技能スキル〈雷の使い手〉を獲得しました〕

特殊技能スキル〈氷の使い手〉を獲得しました〕

特殊技能スキル〈鉱石の使い手〉を獲得しました〕


「! びっくりしたー! いつもの通知かー」

「新しいスキルが三つも?」

「あれ、二人も? 私も獲得したよ~!」


「ラッキーイベントは経験値ががっぽり稼げるからね、レベルアップのタイミングが同時だったんだと思う」


 経験値はパーティーでぴったり等分される訳じゃないから、レベルアップのタイミングも若干前後することが多いのだけど、一気にレベルがガツンと上がったから偶然同時になったみたい。


「なるほど~。氷とか雷って言ってたね?」

「ってことは『進化属性』っていうのを使えるの?!」


「ええ、よく覚えてたわね!」


 【魔法少女】の時から使える基本属性の火・水・土。これらは【アイドル】になった事で雷・氷・鉱石に進化するのだけど、すぐにはアクティベートされず、レベルが上がるまでは特に変化がないわ。

 そして今、やっとアクティベートされたって訳ね。


「これで私達も進化属性を使えるわ! 進化属性は今までの魔法と違って、使い手によって別々の効果が現れるの」


「「「?」」」


「言い方を変えると、自分のイメージした好きな魔法が発動するよ! イメージ次第でなんだって出来る、それが進化属性の強みよ!!」


「え! すごい!!」

「魔剣『トワイライト=ルナティック』も言っていた、魔法はイメージだって」

「イメージ次第……?」


 もちろん、ゲームではそうはいかず、使うキャラによって違う魔法が発動するという仕様だった。けど、ストーリー上は「イメージ次第で何でもできる」って設定だったはずだから……。まあ、使ってみないと分からないわね。


「早速試してみよっか。ちょうど敵も来たし」


「ライオンだ!」

「おお、なかなか迫力がある」

「すっご~い! こんなあみぐるみ、お姉ちゃんでも作れないよ……」


 現れた敵はかなりデフォルメされたライオン。デフォルメされて可愛らしくなってはいるけど、それでも威厳は失っていない。この絶妙なバランスがいいわね!


「じゃあ行くよ、凍てつけ、アイシクルロック!」


 ライオンさんの足元に氷が絡みついて拘束するようイメージする。

 すると、手の先から雪の結晶のエフェクトがキラキラ輝きながらライオンさんに飛んで行った。それがライオンさんに着弾するや否や、彼の足元に氷が絡みつく。


「わあ!」

「〈マジカルバースト〉に比べて速度が遅かった、けど効果は強いって感じか」

「すごい、ヒメちゃん! さっすが~!」


「まだまだいくよ! 〈コスチュームチェンジ〉、サンダープリズン! 〈コスチュームチェンジ〉、とどめよクリスタルボム!!」


 バチバチというエフェクトが着弾すると、ライオンさんは雷の奔流に囚われる。そして、色とりどりの宝石が輝くのエフェクトが着弾すると、ライオンさんの足元から無数の宝石が生えて彼の体に刺さった。

 ちなみに、進化属性で作った氷や雷、宝石は時間経過で霧散してしまう。宝石がすうっと空中へ霧散すると、後にはドロップアイテムだけが残っていた。

 私は振り返って三人を見て、自慢げにウインクしてみせた。


「おおー!」

「か、かっこいい……!」

「わあ~♪」


 みんな私の魔法にびっくり感動してくれた。特にリンちゃんが目を輝かせている。次に魔物が出たら、リンちゃんにお願いしようかな。


「任せて。ヒメ、魔法の効果って、想像すればなんでもできるんだよね」


「うん、あまりに無茶な事は出来ないけど」


「ん。じゃあ、とっておきのを見せる」


「あ、ちょうど魔物がいるよー!」「リンちゃん、頑張って♪」


 丁度その時、ハルちゃんが魔物を発見! 三人が見守る中、リンちゃんは魔物を見据えてこう言った。


「よし。『ふふふ。ねえ、知ってる? ダイヤってね、割れやすいのよ。金剛石はダイヤモンド割れたクラック』」


 あ、これってアニメ『スキル石頭は最強でした! 馬鹿にした皆様、さようなら。私はお姫様と結婚しますので』に出てくる魔法じゃん。

 だ、駄目だよ! アニメのセリフをパクったら!! 今は撮影してないし問題ないけど、今後は辞めてもらうようお願いしないと。


 まあ、文言はパクリだったけど、ちゃんとダメージは与えられてるみたい。続く『黒曜石のオブシディアンナイフ』で魔物はドロップアイテムに変わった。



 その後、ハルちゃんとユズちゃんも進化属性を試し、思い思いの魔法を炸裂させた。みんな楽しそうで何より。

 そんな中、私は「待てよ、このままだと三人が中二病の沼に嵌るのでは?」と焦りを感じたのだった。




「なにこれ?」

「……箱?」

「ヒメちゃん~! 何か変わったものがドロップしたよ~」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る