バレンタインデーの後日談、Part 3

 ゲームを楽しんだ後はお昼ご飯、みんなでスパゲッティー、ベーコンとシメジのクリームパスタ、を作って食べた。おいしかったわ!


「それじゃあ、早速おやつターイム!」


 ハルちゃんがそう言って、色々なお菓子をカバンから取り出した。ラムネ菓子、クッキー、ポテトチップスなどなど。なんだか小学校の時の遠足を思い出すラインアップね。


「あ、それなら、お姉ちゃんからチョコレートを貰ってるよ~」


 そう言ってユズちゃんが冷蔵庫からチョコレート菓子をたくさん出してきた。……ちょっと待って、これって結構高級な奴じゃない?


「え、これ本当に食べていいの?」

「結構高級な奴だよね?」


「お姉ちゃんがね、バレンタインの時に貰ったんだって! ただ、量が量だから、ヒメちゃんたち食べてって言ってくれたの♪」


「ほへー。さすがお嬢様学校……」


 例の「部長さん」が社長令嬢って事は聞いていたけど、他の人ももしかしたら相当のお金持ちなのかもしれない。

 ……と思って後から調べたら、別にそういう訳でもないみたい? 偶然ミカンさんの周りにお嬢様が多いだけだったみたいね。


※ミカンの部活の友人はみんな【アイテム職人】として部長の下でアルバイト的な事をしているから、お金に余裕がある……という事をヒメは知らない。



「チョコレート! ハル、チョコレート大好き!」


「私も♪ じゃあ、早速開けようね~!」


「二人とも、ラッピングは丁寧に……。遅かった」


 リンちゃんは、せっかくの高級チョコレートだしラッピングは丁寧にはがして保管したいと考えたみたいだけど、残念ながら遅かったみたいね。ま、仕方がないよ。


「おお、おいしそー!」「可愛いね~」

「「いただきます! ……?」」


 さっそくチョコレートを口に放り込んだ二人。最初は美味しいって表情をしていたけど、途中で首を傾げた。


「どうしたの?」


「な、なんかこう、変わった味?がする」

「なんだろこれ~? ちょっと苦手な味……」


「どれどれ、私も一つ。ああ、なるほどね」

「私も。ああ、アルコールが入ってるみたいだね」


 ハルちゃんとユズちゃんが最初に食べたチョコレートにはお酒が使われていた。確かに初めて食べると「なんだこれ?!」ってなるよね。


「アルコール……って事はお酒?!」

「食べたらだめって事?!」

「「もしかして逮捕されちゃう?!」」


「それは問題ないはず。だよね、リンちゃん?」

「うん。飲料として飲まない限り問題ない」


「よかったー。でも、ハルはこれ無理かも……」

「私も……」


 ということでお酒が入っているチョコは私とリンちゃんで消費することになった。このくらいの量だったら食べても問題ないよね? まあ、あんまりよくないかもだけど……せっかくだし食べたいよね!

 それに、万が一にも気分が悪くなったらハルちゃんに〈キュアソング〉を使ってもらうことにしよう。確か〈キュアソング〉は酔いの異常状態に効くという設定だったはずだ。魔物から受けた異常状態じゃないから治りにくいけど、緩和するくらいの効果はあるはずだから。


※アルコール入りのお菓子は、確かに法律で規制はされていませんが、子供や妊娠中の方、肝臓が弱い方は食べないようにしましょう。



 最初は楽しくお菓子やジュースを堪能していた四人だったが、徐々にヒメの口数が減っていった。心配に思ったハルは、ヒメに近づいた。


「ヒメちゃん? ヒメちゃん、大丈夫?!」


「んー? だいじょうぶだよぉー」


 ヒメは……完全に酔ってしまっていた。頬が、肉体からだがほんのりと赤みを帯びており、中学生とは思えない色っぽさがある。


「全然大丈夫じゃない?! って、いつの間にかお酒入りのチョコレートが全部なくなってる?!」


 そこそこ量があったのに、いつの間にか箱が空になっている。一粒に含まれるアルコールは少ないとはいえ、それを何粒も食べたのだ。酔ってしまっても不思議ではない。

 そもそも、子供はアルコール入りのチョコレートを食べるべきではない。確かに法律で規制はされていないが、肝機能が発達していない子供の体にとってアルコールは有毒であり、食べないに越したことはない。

 だけど、ヒメは高級チョコレートを前に冷静な判断を失って食べてしまった。そして、食べ過ぎてしまった。


「ハルちゃん……」


 ヒメが手を伸ばし、ハルの手を握って軽く引いた。ハルはさらにヒメに近づいて、ヒメに声をかける。


「ヒメちゃん? ど、どうしたの? もしかしてしんどいの? 顔も真っ赤だし……。まさか熱が?!」


 ハルの家族(両親と兄)はほとんどお酒を飲まないから、「アルコールを摂取した人の顔が赤くなる」という事象に慣れていない。

 だから、顔が赤くなっているヒメを見て「熱があるのだろうか」と考えたのだ。おでこで体温を測ろうと、ハルはヒメに顔を近づける。



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