アイドルの日常
その日、ヒメは誤解に気づ……けなかった
そういえば、近場に他のダンジョンってないのかな?
ふと、私はそんな事を思った。
いや、言いたいことは分かるよ。「東京中央ダンジョンをクリアしていないのに、他のダンジョンに手を出してる場合か」って事よね。うん、私もそう思う。けど、たまには気分転換に他のダンジョンに行ってみるのもいいと私は思うの。
あ、まず大前提として、このゲーム世界では無数のダンジョンがあるという設定になってるわ。「世界中に数個」とか「各国の首都に一つ」ではなく、「あちこちに大小さまざまなダンジョンがある」と言う世界観。
実際、ゲームでも東京中央ダンジョンの他にもいくつかのダンジョンが紹介されているわ。例えば京都にある「
そんな訳で、私は日帰りできる範囲に面白いダンジョンがないかなって調べることにしたわ。検索してみると……あった! 電車を乗り継いでいけば行けるくらいの距離にダンジョンがあるみたい!
「うん? でも、警告マークがついてる?」
だけど、そのダンジョンには赤い三角印にビックリマークが書かれた「警告マーク」がついていた。もしかしたら、すっごく難しいダンジョンなのかも? あるいは準備が必要なダンジョンとか? 私は警告マークの意味を調べる。
「えーっと、なになに……? せ、成人向けダンジョン……?!」
まさかの警告内容。難しいとかではなく、年齢制限があるらしい。
ええ……。もしかして、その、男の子が好きそうな、そういう類の魔物がいるダンジョンなのかな……?
でも、そんなの世界観に合わないよ。もうちょっと詳しく見てみよう。
「あ、ああー、なーんだ、そういう事ね」
詳しく調べてみると、成人向けダンジョンというのは、ドロップアイテムがお酒やワインのダンジョンって事みたい。そっちかー。一瞬でも「そういう」のを想像して焦ってしまった自分が情けないわ……。
「でもこれじゃあ行けないわねー。残念。次に近い場所となると……結構遠いわね……。でも、ギリギリ行けるかな?」
なんて思っていると、ユズちゃんから電話がかかってきた。
電話の内容は「明日、シルクを取りに行きたい」というもの。そっか、そういえば最近は渡してなかったわね。急いで追加しないと。
ミカンさん(と部長さん達?)には早くレベルアップしてもらって、色々なアイテムを作ってもらいたいからね。
……って私ったら、ミカンさんの事を都合のいい職人扱いしてるわね。せめて何かお返しをしないとだよねー。何かお菓子でも作って持っていこうかな? お菓子となると……やっぱりチョコレートかなあ。またチョコレート取りに行こうかな。
そんな事を考えながら、私は眠りについた。おやすみなさい。
◆
もしもこの時、一番近くにあったダンジョンが成人向けダンジョンではなかったら、ヒメ達はそこへ向かっていただろう。また、ユズからの電話が少しでも遅かったら、二番目に近いダンジョンに向かう決意をしていたかもしれない。
そうすると、移動に時間がかかるのでヒメたちは昼頃にダンジョンへ入ることになり、他の挑戦者と鉢合わせていたかもしれない。
すると、近くで見ていた人が「なんだあのスキルは?!」となって、ヒメたちが「あれ、私何かやっちゃいましたか?」という展開になったかもしれない。
しかし、実際には偶然がかみ合ってしまい、ヒメたちは他のダンジョンへ行くことはなかった。
その日、ヒメは誤解に気づけなかった。
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