ダンジョンはアイドルのステージよ！ 転生者の私はゲーム世界で最強を目指す(←既に最強)

新しい力

　特殊階層『三人の姫』をクリアした私は、150層クリア後に踏めるチェックポイントに転移していた。先ほどまでクリアしていた特殊階層は、150層のボスと言う扱いになっているのよね。

　ちなみに、【アイドル】以外のメンバーがいるパーティーだと、150層では通常ボス『ノーツノーツ』という魔物と戦うことになる。巨大な音符の形をした魔物で、音符を飛ばす攻撃を使う、可愛らしい敵だ。機会があればそっちも倒したいね。

　さて、私がチェックポイントに転送されたのとほぼ同時に、三人も転送されてきた。特殊階層クリアにかかる時間が違うのに、出てくるタイミングが同じなのは内部での時間の流れが、現実世界と切り離されているからだね。

「みんなお疲れ様！」

「ヒメもお疲れ。クリアできたよ」「「ヒメちゃん！　会いたかったよぅ～！」」

　ハルちゃんとユズちゃんが私の胸に飛び込んできた。私は二人を抱きしめ、頭をなでながら、リンちゃんの方を向く。

「リンちゃんは流石、すっごく冷静だね」

「まあ、わざわざこんな手紙を渡されたらね。とはいえ、いつもよりも緊張したし、疲れた」

「そっか、じゃあリンちゃんもこっちおいで！　撫でてあげるから！」

「ん、そうする」

　この後、ハルちゃんとユズちゃんも無事クリアできたって聞いて、改めてみんなで喜びを分かち合った。

◆

　その日の放課後、私たちはリンちゃんのお家に集まって特殊階層での出来事を共有した。

「それでね、ハル、新しいスキルを貰ったんだ！　なんか、回復魔法みたいだけど……」

「私も新しいスキルを貰ったよ～！　〈ききみみずきん〉と〈アニマルフレンドシップ〉と、えーっと、〈サモン〉！　全部動物に関連する魔法だと思う！　可愛い魔法だと良いなあ～♪」

「私は〈花言葉〉〈プラントフレンドシップ〉〈ガーデン〉、植物関連みたい。それで、ヒメ、このスキルってどういう物なの？」

「うん、じゃあ説明していくね！」

◆　ハルちゃんのスキル　◆

〈癒しの（ヒール）歌声（ソング）〉

　魔力を消費し、メンバーの怪我を治す事が出来るスキルね。また、健康な状態のメンバーを回復すると、相手にそのダメージ分のバリアを張る事が出来るよ。

　バリアはダメージを肩代わりしてくれるのだけど、ダメージを追うごとに薄くなっていって、最終的には壊れてしまうわ。また、時間経過でも薄くなるので注意。

　このスキルを使用したら、その後に〈私の歌を聞いて〉を使って歌ったときに、自分の周囲にピンク色のハートが舞うようになって、それが回復したい相手のもとに飛んでいくわ。また、〈私の歌を聞いて〉による攻撃と同時並行で使うこともできるけど、その場合操作が難しくなるわね。

　あ、ちなみに、迷宮外での損傷は治りにくいわ。治せなくもないけど、素直に【医師】系のジョブに就いている人の所に行った方がいいわね。

〈治療の（キュア）歌声（ソング）〉

　魔力を消費し、メンバーの状態異常を治す事が出来るよ。ただし、これにはバリア機能はない。

　使用時方法については〈ヒールソング〉とほぼ同じなので省略するね。また、迷宮外で受ける異常状態も治しにくい点も同様ね。

　注意点として、〈キュアソング〉では治せない異常状態も存在するの。ただ、そういう「治せない」異常状態は致命的な物ではなく、また回復手段が別に用意されている場合が多いから、問題になることはないと思う！　詳しくはまたの機会に。

〈励ましの（レイズ）歌声（ソング）〉

　魔力を消費し、メンバーにバフ（≒強化）を施す事が出来るわ。

　一見便利そうだけど、実は扱いが難しいスキルなの。例えば、突然筋力が二倍になったら歩くのすら困難になるでしょ？　それと同様で、バフをかけた相手がバフになれてないとかえって邪魔になる事があるの。

　つまり、このスキルは使う側はもちろん、使われる側も慣れてないといけないスキルってこと。

◆　ユズちゃんのスキル　◆

〈ききみみずきん〉

　これは名前の通りの効果ね。迷宮内に住んでいる魔物以外の生き物の会話を聞くことができるスキルよ。ヒヨコの親子とか動物園階層での動物の声が聞こえるって訳ね。時々有力な情報を教えてくれるわ。

（東京中央ダンジョンで活動するだけなら、私がおおよそ全部の情報を知っているから問題ないとして、それ以外のダンジョンについては私もあまり知らないから、その時には最大限利用したいわね）

〈動物との友誼（アニマルフレンドシップ）〉

　これは特定の条件を満たした時に、動物と会話できるようになるスキルね。ききみみずきんだと、一方的に会話を聞くだけだから、このスキルはその上位互換って感じね。

　これも情報収集に役立つわね。それから、上手く仲良くなれば〈サモン〉に応じてくれるようになるわ。詳しくは次の項で。

〈召喚（サモン）〉

　一定以上の信頼を得る事が出来た動物を、好きなタイミングで呼ぶことができるスキルだよ。例えばだけど、「水の中を移動しないといけないステージで、ペンギンさんを召喚して乗せてもらう」みたいなことができるわ。

　このスキルを最大限使うには

・まず〈ききみみずきん〉で動物の会話を聞く。

・その会話の内容から、その動物と仲良くなるための行動をする。

・〈アニマルフレンドシップ〉でさらに仲良くなって、〈サモン〉に応（こた）えてくれるようにする。

　っていうステップが必要。

　だから、積極的に動物さんのお話を聞く必要があるわね。

◆　リンちゃんのスキル　◆

〈花言葉〉

　花の言葉を聞くスキル……ではなく。ダンジョンでみかけた花にまつわる伝説（設定）を知る事が出来るの。

　その伝説を解釈することで、何かが分かるかも……？（伏線）

〈植物との友誼（プラントフレンドシップ）〉

　いきなりさっきの伏線を回収しちゃうようでなんだけど、伝説を解釈して見事条件を満たす事が出来たら、その花からアイテムを採取できるようになるの。

　そのアイテムは攻略に役立つアイテムだったり、換金アイテムだったりするわけだけど、一番いいのが「種」と言うアイテムね。これを使用することで、その植物の力を自分の身に宿す事が出来るわ。

〈花園（ガーデン）〉

　入手した種の力を使うスキルね。例えば「火の花」という花の力を手に入れたなら、フィールド内に「火の花」を咲かせることで敵に火傷ダメージを与える……みたいなことができるわ。

◆

「そういえばヒメちゃんはスキルを貰ってないって言ってたよね？　でも、代わりの物をもらったって」

「うん、これね。『天魔（そら）の宝珠』」

　私は魔法少女のコスチュームに変身し、三人にティアラの上で輝く宝石を見せる。

「きれいだねー！」

「神秘的。なんというか、この世の物じゃない感があって、すごくいい」

「すっごくヒメちゃんに似合ってるよ！　かわいい♪」

「ありがと！　今はただの宝石だけど、この先色々あるから楽しみにしててね！」