みんなでお風呂! 前編

 いつの間にか私は3人と一緒にお風呂に入ることになっていた。……え、そんなことある?


 そりゃあね、私達は全員女の子だし、互いの裸を見ることはあるよ。例えば去年(つまり小学校6年生)の修学旅行では、みんなと一緒に温泉を楽しんだ。直近だと体育の授業の前後に同じ更衣室で着替えたりしている。

 けどさ、こう、それとこれは違うじゃん? 家庭用のお風呂に一緒に入るとなると、何とも言えない恥ずかしさがある。


 確かに、アニメとかだと仲の良い女の子同士が一緒にお風呂に入るシーンってあるよね。けど、リアルでそういう事をするかって聞かれるとまず間違いなくNoだと思うの。


 もちろん、私個人的には全然いいんだよ? けど他の三人が気にするんじゃないかって、それを危惧しているの。私は全然いいんだよ!(二回目)



 ちらっ。ハルちゃんを見る。


「どうしたの、ヒメちゃん?」


「え、えっと。ほら、いいのかな~って」


「? リンちゃんが良いって言ってるんだし、大丈夫じゃないの?」


 うーん、そういう意味で聞いたんじゃあないけど……。ハルちゃんはそういうの気にしないみたいだね。


 次にユズちゃんを見る。


「はわわわわ……」


 ハルちゃんとは対照的に、ユズちゃんは顔を真っ赤にしていた。だよね?! やっぱりそういう反応になるよね!


「ユズちゃん? ユズちゃん、大丈夫?」


「は! 私、夢を見てたみたい。みんなで一緒にお風呂に入ることになるって夢だった~」


「現実だよ?」


「?! はわわ、いいのかな? ほんとのほんとに良いのかな? 一緒にお風呂なんて、そんな恋人みたいなことしちゃって!」


「い、いいんじゃないかな?」

「? 女の子同士なんだから普通じゃないのー?」


 ハルちゃんは全然気にしていないんだねー。なんだかドキドキしている自分が恥ずかしい……。



「お風呂湧いたよ」


 リンちゃんがそう言ったので、私たちは脱衣所に移動した。

 ハルちゃんは全く恥じらいを見せず服をぽいぽーい!って全部脱いで、お風呂に直行。「わあ、おっきい~! ハルの家の二倍はある~!」ってはしゃいでいる。


「? 二人ともどうしたの? もしかして一緒にお風呂は嫌だった?」


 恥ずかしがって服を脱がないユズちゃんを私を見て、リンちゃんは心配そうな表情をする。


「そんなことないよ、ただちょっと恥ずかしくって」

「私も、嫌なんて思ってないよ! け、けど、女の子同士だし、気にすることないよね~!」


「そ、そうなの? よく分からないけど、先に入ってる」


 リンちゃんもお風呂場へと入っていった。残されたユズちゃんと私も、二人を待たせるまいと、さっさと服を脱いでお風呂場へと向かった。



「おお、確かに広いね!」

「すご~い!」


 リンちゃんの家の浴室は確かに広かった。私の家のお風呂の3倍はありそうな広さである。とは言っても家庭用のお風呂であることには間違いなく、4人で入るにはやや狭い印象。


「寒いね、まず体をさっと流して、いったんお風呂に浸かろ」


「そうだね、髪の毛を洗うのは、後から一人ずつにしよっか」


 という訳で早々に湯船に浸かる。4人で浸かるとなると、互いに密着しないといけなく、ちょっとドキドキする。私の右隣にいるユズちゃんとは肩が触れ合ってるし、私の正面にいるハルちゃんとは足が絡まっている。



 温まること数分、誰が最初に髪の毛を洗うかと言う話になった。


「じゃあ、まずはハルが頭洗って良い?」


「「「うん」」」


 ハルちゃんが湯船から出て、頭を洗い始めた。

 ……!


「ハルちゃん! シャンプーが飛んでる!」


 ハルちゃんが激しく頭を洗ったことで、こっちまでシャンプーが飛んできた。


「うそ?! ごめん……。難しいね」


 子供か?! いや、中学生は法律的には子供だけど! とはいえ、もう少し落ち着きと言うものを……。まあこういうのも、ハルちゃんらしくていいと思うけどね。


「私が洗ってあげるよ」


「ありがと、ヒメちゃん!」


 く! 笑顔が眩しい。庇護欲を掻き立てられる……! むぎゅーってしたい!

 という邪念を振り払った私は、ハルちゃんの背後に回って、彼女の髪が痛まないようクシクシと丁寧に頭を洗ってあげた。


「ヒメちゃん、ありがと! 気持ちよかった! ヒメちゃんはお母さんみたい!」


「もー、ハルちゃんったら!」


 すると、ハルちゃんがくるんとこっちを振り向いた。すぐ近くで正面を向き合ったことで、嫌でも彼女の肉体からだが目に入ってしまう。

 ハルちゃんはどこがとは言わないがまだまだぺったんこ。タナー段階で言うとⅠとⅡの間くらい。

 なんてことを考えながら、私はハルちゃんのほっぺを撫でた。するとハルちゃんはくすぐったそうに笑ってからこう言った。


「これからも毎日ヒメちゃんに洗ってもらいたいなー!」


「「「?!」」」


 ハルちゃんの無邪気な一言に、私は、そして他の二人も固まってしまった。

 こ、これってもしかしなくても遠回しなプロポーズだったりします?!


「?」


 なんでみんな驚いてるの、とでも言いたそうにハルちゃんは首を傾げた。あ、はい。そうですよね、ハルちゃんはただ純粋に「毎日洗ってもらいたい」って言っただけで、裏の意味なんて無いですよねー。



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