みんなでお風呂! 前編
いつの間にか私は3人と一緒にお風呂に入ることになっていた。……え、そんなことある?
そりゃあね、私達は全員女の子だし、互いの裸を見ることはあるよ。例えば去年(つまり小学校6年生)の修学旅行では、みんなと一緒に温泉を楽しんだ。直近だと体育の授業の前後に同じ更衣室で着替えたりしている。
けどさ、こう、それとこれは違うじゃん? 家庭用のお風呂に一緒に入るとなると、何とも言えない恥ずかしさがある。
確かに、アニメとかだと仲の良い女の子同士が一緒にお風呂に入るシーンってあるよね。けど、リアルでそういう事をするかって聞かれるとまず間違いなくNoだと思うの。
もちろん、私個人的には全然いいんだよ? けど他の三人が気にするんじゃないかって、それを危惧しているの。私は全然いいんだよ!(二回目)
ちらっ。ハルちゃんを見る。
「どうしたの、ヒメちゃん?」
「え、えっと。ほら、いいのかな~って」
「? リンちゃんが良いって言ってるんだし、大丈夫じゃないの?」
うーん、そういう意味で聞いたんじゃあないけど……。ハルちゃんはそういうの気にしないみたいだね。
次にユズちゃんを見る。
「はわわわわ……」
ハルちゃんとは対照的に、ユズちゃんは顔を真っ赤にしていた。だよね?! やっぱりそういう反応になるよね!
「ユズちゃん? ユズちゃん、大丈夫?」
「は! 私、夢を見てたみたい。みんなで一緒にお風呂に入ることになるって夢だった~」
「現実だよ?」
「?! はわわ、いいのかな? ほんとのほんとに良いのかな? 一緒にお風呂なんて、そんな恋人みたいなことしちゃって!」
「い、いいんじゃないかな?」
「? 女の子同士なんだから普通じゃないのー?」
ハルちゃんは全然気にしていないんだねー。なんだかドキドキしている自分が恥ずかしい……。
◆
「お風呂湧いたよ」
リンちゃんがそう言ったので、私たちは脱衣所に移動した。
ハルちゃんは全く恥じらいを見せず服をぽいぽーい!って全部脱いで、お風呂に直行。「わあ、おっきい~! ハルの家の二倍はある~!」ってはしゃいでいる。
「? 二人ともどうしたの? もしかして一緒にお風呂は嫌だった?」
恥ずかしがって服を脱がないユズちゃんを私を見て、リンちゃんは心配そうな表情をする。
「そんなことないよ、ただちょっと恥ずかしくって」
「私も、嫌なんて思ってないよ! け、けど、女の子同士だし、気にすることないよね~!」
「そ、そうなの? よく分からないけど、先に入ってる」
リンちゃんもお風呂場へと入っていった。残されたユズちゃんと私も、二人を待たせるまいと、さっさと服を脱いでお風呂場へと向かった。
「おお、確かに広いね!」
「すご~い!」
リンちゃんの家の浴室は確かに広かった。私の家のお風呂の3倍はありそうな広さである。とは言っても家庭用のお風呂であることには間違いなく、4人で入るにはやや狭い印象。
「寒いね、まず体をさっと流して、いったんお風呂に浸かろ」
「そうだね、髪の毛を洗うのは、後から一人ずつにしよっか」
という訳で早々に湯船に浸かる。4人で浸かるとなると、互いに密着しないといけなく、ちょっとドキドキする。私の右隣にいるユズちゃんとは肩が触れ合ってるし、私の正面にいるハルちゃんとは足が絡まっている。
温まること数分、誰が最初に髪の毛を洗うかと言う話になった。
「じゃあ、まずはハルが頭洗って良い?」
「「「うん」」」
ハルちゃんが湯船から出て、頭を洗い始めた。
……!
「ハルちゃん! シャンプーが飛んでる!」
ハルちゃんが激しく頭を洗ったことで、こっちまでシャンプーが飛んできた。
「うそ?! ごめん……。難しいね」
子供か?! いや、中学生は法律的には子供だけど! とはいえ、もう少し落ち着きと言うものを……。まあこういうのも、ハルちゃんらしくていいと思うけどね。
「私が洗ってあげるよ」
「ありがと、ヒメちゃん!」
く! 笑顔が眩しい。庇護欲を掻き立てられる……! むぎゅーってしたい!
という邪念を振り払った私は、ハルちゃんの背後に回って、彼女の髪が痛まないようクシクシと丁寧に頭を洗ってあげた。
「ヒメちゃん、ありがと! 気持ちよかった! ヒメちゃんはお母さんみたい!」
「もー、ハルちゃんったら!」
すると、ハルちゃんがくるんとこっちを振り向いた。すぐ近くで正面を向き合ったことで、嫌でも彼女の
ハルちゃんはどこがとは言わないがまだまだぺったんこ。タナー段階で言うとⅠとⅡの間くらい。
なんてことを考えながら、私はハルちゃんのほっぺを撫でた。するとハルちゃんはくすぐったそうに笑ってからこう言った。
「これからも毎日ヒメちゃんに洗ってもらいたいなー!」
「「「?!」」」
ハルちゃんの無邪気な一言に、私は、そして他の二人も固まってしまった。
こ、これってもしかしなくても遠回しなプロポーズだったりします?!
「?」
なんでみんな驚いてるの、とでも言いたそうにハルちゃんは首を傾げた。あ、はい。そうですよね、ハルちゃんはただ純粋に「毎日洗ってもらいたい」って言っただけで、裏の意味なんて無いですよねー。
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