チョコっとした事件

 そういえば「機械仕掛けの再生産機」の動画を投稿して以降、YouPipeはノータッチだったことを思い出す。そういえば前に確認したら再生回数も増えていて、チャンネル登録者も40人くらいいたの。弱小アイドルにしてはそこそこの人数じゃないかなって思ってる。この調子で登録者数を増やしていきたいところ。


「そんな訳で、お料理動画を作ろうと思うのだけどどうかな?」


 教室にて、私は隣の席に座ってるリンちゃんにそう問いかけた。


「いいと思う。私も最近料理動画にはまってる。自分たちでも撮ってみたいって思ってた」


「そっか、それならいいね! じゃあ、どこで撮影しよっか? 私の家のキッチンはあんまりきれいじゃないし……」


「ウチくる? 最近キッチンをリフォームしたから」


「ほんと?!」


 という訳で今日の放課後はリンちゃんの家で集合になった。



 ロボマネージャー召喚!

 料理動画を撮るという旨を伝えると、ロボたちは了解しましたと言わんばかりにピコピコと音を出した。さっそく撮影開始っと。


「今日はバレンタインにちなんで、チョコレートを使ったお菓子作りをします!」

「いえーい! ハル、チョコレート大好き!」

「いいね」

「何を作るの~?」


「今日作るのはフォンダンショコラよ! 用意するものはこちら!」


 私は机の上にずらっと並べた食材と調理道具を指し示した。まずは食材を一個一個リンちゃんが説明していく。


 まずは食材。

 これはダンジョンで取れたチョコレート、製菓用チョコレートでも大丈夫。私たちは200g用意した。

 そして無塩バター。これも200g。

 卵、4個。

 薄力粉48g。

 粉砂糖を140g

 お好みでホイップクリームもあると良いかも。


 次は必要な調理器具を説明するね♪

 丸い筒形の型! 大きさは直径5cmくらいかな?

 それからクッキングシート!

 こっちは、え~っと、薄力粉と粉砂糖を振るうためのザルだよ!

 チョコレートとバターを溶かすのに湯煎をするからボウルと鍋が必要だよ~! しっかり乾かしてから使おうね♪


「それからオーブンを予熱しておくよ! ……リンちゃん、これどうやって使うの?」


「はあ。さっき説明したじゃん。まずここを押して温度を上げて」


「ここ? おー、これを180度にすればいいんだよね?」


「そう。それからここを押す」


「押したよ!」


「これでオッケー。待っておけば180度になるから」


 一応言っておくと、ハルちゃんパートは完全にアドリブだ。まさかさっき説明したオーブンの使い方を忘れるとは思ってなかった……。でもそんなところが可愛いよね!



 それから、細々とした下準備を済ませてから、いよいよ調理パート! まずは……。


「湯煎にかけながらチョコレートとバターを混ぜるよ!」


 まずはハルちゃんとユズちゃんが混ぜる。


「まぜまぜ! まぜまぜ!」

「まぜまぜ~まぜまぜ~♪」


 うーん、可愛い。最高。後でここの切り抜き動画を作ってもらおう。


「さて、二人がチョコを溶かしている間に、私たちは卵と薄力粉を混ぜるよ!」

「ダマにならないように注意」


 薄力粉を少しずつ加えながら、滑らかになるよう注意しながらかき混ぜる。


「はあ、【魔法少女】だった頃の私なら、こうして混ぜることでチョコを光らせることができたのに……」


 リンちゃんはそう溜息を吐きながら少し荒々しくボウルの中身を混ぜ始める。


「リンちゃん、ストップ! そういうのは危ないよ! 主に著作権的に!」


「ごめん」



 で、チョコと生地を混ぜ合わせたら、オーブンに放り込んで完成!

 後は待つだけ、撮影終わり! ……という訳ではなく。



「待っている間に、余ったチョコレートで、ちょっとしたお菓子を作るよ!」


「チョコっとしたお菓子ね♪」


「「「……」」」


「そんな真顔でみないでぇぇ~! 気を取り直して、今度は春巻きの皮を使ってお菓子を作るよ♪」


 レシピと言う程の物じゃないから、特に説明せずに早速作る。

 春巻きの皮にバナナとチョコ、イチゴとチョコ、お餅とチョコを乗せてくるんと巻く。


「じゃあ、私が順番に焼いていくね。できたものから順にこっちに持ってきて!」


「はーい! これ、お願いします!」



 最後に完成した物の写真を撮って撮影は終了。ここからはプライベートな時間よ。という訳で。


「じゃあ、改めて。ハッピーバレンタイン! みんな、大好きだよ!」


「ハッピーバレンタイン! ハルもみんなの事、大好きだよ!」

「うん。私も」

「ハッピーバレンタイン! 私もみんなの事、す、好きだよ!」


 告白(?)も無事成功したことだし、ここからはおやつターイム! 女の子は甘いもの大好きだからね、決して私が子供っぽいわけじゃないよ、うん。


「んー! 美味しいね!」


 幸せ~。


「美味しい! みんなで作ったものって美味しいね!」

「うん。美味しい」

「美味しいね~。幸せ~♪」


 三人も幸せそうに笑っている。この笑顔を見られてよかった、そう思った。



 こうして私たちは楽しい時間を過ごした……のだけどここでチョコっとした事件が発生した。お口直しにとコーヒーを持ってきてくれたリンちゃんが、カーペットの段差転んでしまったのだ。


「あ」


「「「危ない!」」」


 一番近くにいたハルちゃんが咄嗟にリンちゃんを支えたことで、リンちゃんが怪我を負うことはなかったけど、手に持っていたコーヒーとミルクが宙を舞って……。


「「「「きゃ!」」」」


 私たちの頭上に降り注いだ。


「大丈夫、リンちゃん?」

「怪我はない?!」


「うん、大丈夫。ありがと。ごめん、みんなの服が……」


「? わあ! ずぶ濡れになっちゃった!」

「リンちゃんが無事なら、他の事なんてどうでもいいわ!」


「でも……。取り合えず、洗濯したほうがいい?」


 リンちゃんが私に目線を向けてくる。家事経験豊富な私から言わせてもらうと……。


「だね。特にコーヒーはシミになりやすいし。急いで洗うべきと思うよ」


「分かった、じゃあ洗濯の準備をする」


「それと髪の毛にもついちゃったし、シャワーを浴びるべきだよね」


「だね。ウチのお風呂、そこそこ大きいから全員一緒でも大丈夫だと思う。沸かしてくるね」


ヒメ「え?!」(リンちゃん、なにさらっととんでもない事を言ってるの?!)

ハル「え?!」(そんなに大きいの?!)

ユズ「え?!」(い、い、一緒に?! みんなと?!)


「「「ええ~?!」」」




◆ あとがき ◆


 次回はなんとお風呂回です! お風呂回ですよ! お風呂回なんですよ!

(↑三段活用)


 前編と後編の二部構成で、それぞれ19:05と20:05に更新します♪


 なお、直接的な表現は出来るだけ避けています。これは全年齢向けですので!

 予めご了承ください。



 最後に、「お風呂回か。まあ、偶にはそういうのも良いんじゃない? べ、別に俺は興味ねーけどな」と思った方は、ブクマ、評価、レビューして頂けると嬉しいです。


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