フードコート
GCショップで売られているものを一通り見た私たちは、最後にフードコートへと向かった。飲食物はホームを持っていなくても買えるって言ってたし、何か買ってみようと思う。
「ハルちゃんは何食べたい?」
「うーん、ハルはアイスクリームが食べたい!」
「アイスクリームって。今、真冬だよ?」
「でも、ここは暖かいし……」
「まああそうだけど」
ダンジョン内の気候は外の季節とは無関係なのよね。
「ヒメちゃんは?」
「私かあ。私はドリンクが飲みたいかなあ」
そんな話をしていると、リンちゃんから待ったがかかった。
「待って。ヒメ、ここのフードコートってそんなまともなもの売ってるの?」
「……確かに」
ペットだけでなく、GCショップで売られている物のほぼすべてが変わった代物だった。例えば家具でいうと、見た目はただのベッドなのに、寝転がるとマッサージしてくれる機能が付いている、とか。
家電だと、寝だめ時計(睡眠時間を貯蓄できる目覚まし時計)とか便利そうだったわ。現実にもほしいね。
そんな場所にあるフードコートで売られているものが普通の商品だろうか、いやそんなはずはないとリンちゃんは言いたいみたい。うん、確かにそうだね。
「……まともなのがあることを祈ろう」
「そうだね」
◆
「……普通だね」
「肩透かしを食らった気分」
「確かに、ファンタジー要素がないね~。ちょっと残念」
結論から言うと、普通の飲食物しか売っていなかった。客が誰もいない点を除き、そこらのショッピングモールにあるフードコートと何ら変わりない。
「じゃあ、各々好きなものを買ってくることにしよっか。解散! フードコートからは出ないようにね」
ハルちゃんはアイスクリームを売っているお店へ、ユズちゃんはドーナツを売っているお店へと向かった。私とリンちゃんはコーヒーショップへと向かった。
「へえ、色々あるね!」
「コーヒー、抹茶、ジュース。ドリンクなら何でも売ってそう」
「うーん。あの『フレッシュストロベリーソーダ』っていうの、おいしそう」
「どれ? おお、確かに美味しそう。しかもダンジョン産だし、人工甘味料とか使われて無い、本当のストロベリーソーダだったり?」
あはは、まあ現実世界で売られている物の大半が人工甘味料とか香料とか使われているからね。でも、ダンジョン産の物はそういうのは使っていないはず。
『もちろんですよ~! うちの商品は全部天然素材ですよ! あ、言うのが遅くなりました、いらっしゃいませ~!』
「「?!」」
妖精さんがいた。なるほど、ここでも妖精さんが店員をしているのか。
「さっきの子とは違う?」
リンちゃんがそう問いかけた。それに対し、妖精さんは首を傾ける。
『? 少なくとも私とは初めましてですよ?』
「そっか。ごめん、気にしないで」
「よし決めた。私、フレッシュストロベリーソーダにするね」
「じゃあ私もヒメと同じのを」
『かしこまりました~! 別々ですか? それともカップルサイズにします?』
「カップルサイズ? ……ああ、これか」
メニュー表の下の方に、大きなグラスに二本のストローが刺さっていて、二人の妖精さんが仲良く飲んでいるイラストが描かれている。二人の周りにはハートマークが浮かんでおり、下の方に「注意:カップル限定メニューです」と書かれている。
『量は二倍だけど料金は1.5倍なんで、二本別々よりも安いですよ~』
「私達、
『問題ないですよ~』
「じゃあそれで。いい、ヒメ?」
「あ、う、うん。もちろん、いいよ」
え、本当に?
いやいや、待って。今リンちゃん、聞き捨てならないことを言わなかった?
◆
カップルサイズのドリンクには、ハートマークを象った二本のストローが刺さっていた。どこからどう見ても、カップルが飲む用のドリンクだ。え? 私今からこれをリンちゃんと飲むの? はわわわ///
でもこれ、ユズちゃんに見られたらどう思われるか……。あ、ユズちゃんと目が合った。
「ヒメちゃん、リンちゃん……。それ……!」
ユズちゃんが驚愕の顔で私たちを見つめる。不味いことになったわ……!
「うん。カップルサイズだって」
「そ、そんな! 二人とも、私とは遊びだったの~!」
ちょっとリンちゃん!? 追い打ちをかけないで!
そしてユズちゃんは何を言ってるの? その言い方だとユズちゃんはリンちゃんだけじゃなくて私ともそういう関係だったみたいじゃない?!
「? ユズちゃんも二人と一緒に遊んでるよね?」
そしていつの間にか隣にいたハルちゃんは、話をややこしくしないで?!
「心配しないで、ユズ。ユズのことも大切に思ってるから」
おっと、ここでリンちゃんがフォローに入った!
「ほんと?」
「うん。ね、ヒメ?」
「え? うん、もちろん!」
「ほんとにほんと? 私の事、嫌いじゃない?」
「そんなわけないじゃない! 私、ユズちゃんの事、すっごく好きだよ」
「ヒメちゃん……! もー!///」
セーフ! こうして私は修羅場を回避したのだった。
◆
「じゃあ改めて。いただきます!」
「「「いただきます!」」」
早速実食ね! ……とは言ったものの、なんとなく気恥ずかしくって躊躇してしまう。
え、えっと。さ、先にハルちゃんとユズちゃんが何を買ってきたのか見てみようかな!
「ハルちゃんのそれはシャーベット?」
「うん! キラキラしてて美味しそうだったから。あーむ。うん、すっごく美味しい!」
キラキラ~!
ハルちゃんの周囲を、雪の結晶のようなエフェクトがキラキラと光った。
「「「?!」」」
「? どうしたの、みんなハルの方を見て?」
「えっと、ハルちゃん? ロボマネージャーを出して、自分が食べているところを撮影してみて?」
「? ……わ、すごい! 雪の結晶が出てる? え、これって編集で加えたんじゃなくて、本当にハルの周りにこんなのが出てるの?!」
こくこく。私たちは頷いた。
「すっごーい! やっぱりここで売ってるものは、特殊な効果があるんだね!」
ユズちゃんがドーナツを食べると、スイーツのイラストがぽわぽわと彼女の周りを飛んだ。なお、エフェクトには触れることができず、また手をかざしても影が落ちたりしなかった。どこかから照射されている訳じゃあないようだ。
そして、私とリンちゃんがカップルジュースを飲むと……。
「わあ! 二人の周りにラブラブマークが飛んでるよ!」
「?!?!?!」
ハルちゃんが驚いた顔を、ユズちゃんがショックを受けた顔をしている。
動画を見てみると、私とリンちゃんの背景がピンク色になっていて、周囲にハートマークが飛んでいた。すごいなーこんなこともできるんだなー(棒)
「ず、ずるい! 二人だけラブラブでずるい~!!」
「えっと、ユズちゃんも飲む?」
「いいの~?」
「もちろん、どうぞ」
「あ、ありがと~♪」
ユズちゃんとリンちゃんが一緒にドリンクを飲む。二人をみると、やっぱりエフェクトが出ていた。
なにこれ、シュール。こういうエフェクトって漫画とかアニメで見るから受け入れられるんだね。現実で起こるとシュールでしかないわ。
なお、この後ハルちゃんも交じって、四人で交代しながらジュースを飲んだ。
ユズちゃんが満足したようでよかった。私も楽しかったし、また飲んでみたいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます