ミニゲーム

『侵入者を発見』

『攻撃、開始』


 トロッコが進んだ先にいたのは身長2メートルくらいの人型ロボット。私たちに向かって胸と両目で光っているのが弱点部位ね。


「「「「〈マジカルバースト〉!」」」」


 私達四人は一斉に魔法を発動する。ビームがロボットの弱点部位に当たり、ロボットは機能を停止した。ここは最初のエリアだからね、まだまだ弱い敵しか出てこないよ。


『爆弾 発射 爆弾 発射』


 ポポポポ! 四つの爆弾が私たちに向けて発射された。狙いを定めて〈マジカルバースト〉! 爆弾は空中で爆発した。


『侵入者』『排除せよ』

『ハイジョ』『ハイジョ』『ハイジョ』『ハイジョ』


 数が増えたわね二体の人型ロボット、四体の小型ロボットが私たちに近づいてくる。小型ロボットは八本脚のロボットで、どことなく蜘蛛に似ている。


「おお! あの蜘蛛みたいなロボット、家にある! ハルのお兄ちゃんが持ってた!」


 ハルちゃんのお兄さんが持っているおもちゃにそっくりだったらしい。うん、男の子ってこういうの好きなんだよね。で、買ったはいいもののあまり遊ばずに埃をかぶるところまでがお約束……。


「〈マジカルバースト〉! 〈マジカルバースト〉! 後でここの動画見せてあげたら?」


「そうする! お兄ちゃん、ロボット作るの好きだし、こういうのは参考になりそう!」


「え、作る方なの?! もしかして蜘蛛型ロボットも?」


「お兄ちゃんの自作だよー!」


 ここでまさかのハルちゃんのお兄さんが工学系だったことが発覚した。そっか、じゃあマジックバッグの中で放置されている電子部品系のドロップアイテムはハルちゃんのお兄さんに押し付け……ではなくプレゼントしたらいいかもね。



 その後、色々な形態のロボットと戦った。下半身が自転車みたいになっているロボット、蛇型ロボット、ムカデ型ロボット。あと、小型ロボットでドローンっぽいロボットがちょっと厄介だった。高速移動しながら容赦なく爆弾を投げつけてくるの。なかなかいい練習になった。

 最近はマジカルバーストの練習がおろそかになってるし、時々ここで練習してもいいかもと思った。



 ウー! ウー! ウー!


『侵入者排除のため、ドラゴンロボが起動します

 ドラゴンロボ、起動』


 グギャアアアアア!


「きゃ! すごい声!」


 急な大声に驚き、私にしがみついてくるユズちゃん。


「大丈夫だよ、落ち着いていこうね。さあ、行くよ! 最後の敵よ!」


 ドラゴンロボは言うまでもなくドラゴンを模したロボットだ。全長30メートルほどあるくせに、弱点は小さく、なかなか厄介な敵である。

 先ほどまではロボットを倒しきれなくてもトロッコは進み続けてたけど、ボス戦ではこのドラゴンロボを倒すまで脱出することができない。ぐるぐるぐるぐるとボス部屋の周りを回り続けるの。


「! 〈マジカルバリア〉」


 ドラゴンがビームを発射する挙動を見せたので、私はすぐさまバリアを張った。ビームとバリアがぶつかり合って、バチバチバチ!という音が響く。


「今! 三人は口の中の弱点を狙って!」


「「「〈マジカルバースト〉!」」」


 グギャア!


 どん! 怒ったドラゴンは地面をたたく。その衝撃はトロッコにまで響いて、私たちの体を揺らした。


「「きゃあ」」


 今のはびっくりしたこと、思わず悲鳴が出ちゃった。私とユズちゃんはぎゅっと抱きしめあう。


「ヒメ、大丈夫? おっと、〈マジカルバリア〉」


 気が動転している私に代わって、リンちゃんがバリアを張ってくれた。


「うん、ゴメン、つい……。〈マジカルバースト〉!」


「謝らなくていい。ヒメの悲鳴、可愛かった」


「え……///」


 危ない、危うくリンちゃんに堕とされるところだった。気を取り直して私も攻撃に集中しないと。

 とまあそんな事件もあったけど、5分ほどかけてドラゴンロボを倒しきることに成功した。やったね!


 ドラゴンロボを倒すと、出口への道が開いた。脱出成功ね!



〔ミニゲーム『機械仕掛けの再生産機リポッパー』をクリアしました〕


〔再挑戦可能になるまであと23時間です〕


〔獲得ポイント:1783ポイント〕

〔報酬『ミニゲームコイン』を1783ゲームコイン入手しました〕


〔『ミニゲームコイン』を入手したことで『GCショップ』が解放しました〕

〔転移可能階層に『GCショップ』が追加されました〕



「わー! 祝福の声だー!」

「待って。祝福の声にこんな言い方をするんもは失礼だと思う。けど言わせて。何を言ってるのかさっぱりわからない」

「あれ~? ねえヒメちゃん、これって特殊階層じゃないの~?」


 三者三様の反応が見れて私は満足。じゃあ、解説していこうかな。


「鋭いね、ユズちゃん! これは特殊階層じゃなくって『ミニゲーム』なの。その違いは報酬の差ね」


「ミニゲームコインを貰えたんだよね~?」


「そう。特殊階層をクリアするとその階層に応じたドロップアイテムをゲットできるけど、ミニゲームでは違う。ミニゲームでは獲得したポイントに応じた枚数のゲームコインが貰えるの」


「なるほど~!」


「はあ。本当に理解しがたい。ダンジョンで何があっても驚かないって決めてたけど、また驚かされた。で、ヒメ。そのゲームコインとやらはどこにあるの?」 


「えーっと」


 リンちゃんに言われて気が付いた。コインはどこにあるんだろ? ゲームと違ってシステムメニューなんて無いし……。

 そう私が考えた瞬間、私の目の前に魔方陣(?)が展開した。……よく見るとそれは魔方陣じゃなくて、預貯金通帳だった!


「今の金額を知りたいって思ったら、こんな風に出てくるみたい」


「ええ……? あ、ほんとだ。445.75GC、という事は報酬は山分けか」


 リアルだとこんな風になるのね。ゲームだと報酬は全部プレイヤーの物だったけど、ここではそうじゃないみたい。……そもそもリアルだとプレイヤーなんていないし。


「ねえねえヒメちゃん! このコインを『GCショップ』って所で使えるんだよね? 何が買えるの?!」


「色々あるよ~。じゃあ、さっそく見に行こっか!」







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