アイドルが駆ける
海鮮丼を食べよう!
特殊階層「タイパニック号」をクリアした私たちは、早速私の家に集まって一緒に海の幸(?)を食べることにした。すごく楽しみね!
そういえばお母さんは今日、パーティーメンバーと忘年会をするらしく朝から出かけている。だからこの家には私達四人しかいない。
「まずは牡蠣が8個、1人2個ずつだね。生のカニの足が4本、ゆでたカニの足が4本だから、カニも一人2本ずつ。エビは15匹だったから、1人4匹ずつかな。あ、私は3本でいいよ。で、最後がこれね」
マジックバッグから水晶玉を取り出す私。
「それがタイパニック号で手に入れた『タイパニック号の思い出』ってアイテム?」
「そうだよ」
「それ、食べるの?」
「硬そうだけど……」
「ああ、これは特殊階層をクリアしたときに手に入るアイテムで、中に報酬が詰まっている宝箱みたいなものなの。だから、この水晶玉を食べるんじゃないよ」
「中に?」
「詰まってる?」
「報酬が?」
「うん、まあまあ見てて。まずはマグロの肉!」
取り出したいと思ったアイテムの名前を言うと、水晶玉がぴかっと光ってマグロの肉が飛び出してきた。
「わあ!」
「な。なんで水晶から肉が……。理解不能。でも、おいしそう。刺身だけじゃなくってステーキにしてもいい大きさ」
「すご~い! おいしそう~♪」
出てきたマグロの肉を包丁でスパスパと細く切る。うーんおいしそう!
盛り付けるのは後でやるとして、今はお皿の上に並べておこう。
「はい、ハルちゃんも何か出してみて」
私は水晶玉をハルちゃんに手渡す。それを手に持ったハルちゃんは「すごい、何が入ってるか分かる! じゃあタイ!」と言った。
「おお、おいしそうなタイ!」(ゲームじゃあ、画面越しにしか楽しめなかったこれをまさかリアルで楽しめる日が来るなんて……!)
「ヒメちゃん、何か言った?」
「あ、聞こえてた? ゴメン、気にしないで。次はリンちゃんの番かな、ハルちゃん、リンちゃんに水晶玉を渡してあげて。ユズちゃん、最後になっちゃってゴメンね」
「はい、リンちゃん!」
「ありがと」
「うんん、全然いいよ~」
こうしてリンちゃんはハマチを、ユズちゃんはサーモンを取り出した。
最後に私がイクラを取り出してこれで全部かな。
「よし、切り分け終わり! じゃあ、盛り付けていこっか! ……こんな風に見るとお寿司よりも海鮮丼にしたくなってきた。三人はどう思う?」
「さんせー!」
「賛成。すっごく豪華。父さんをびっくりさせてやる」
「おいしそうに盛るって難しいよね~。頑張らないと♪」
◆
さてと、それじゃあまずはハルちゃんの盛り付けから見てみようかな。
「ハルちゃん、できた?」
「うん、完璧だよ!」
えっと、何かなこれは。
まず目を引くのはカニの足。なぜかどんぶりの中心に垂直に突き刺さっている。それはさながらお子様ランチのチャーハンに刺さっている旗?
その周りにマグロやイクラが盛り付けられている。……こうして全体を俯瞰して見ると、あのカニの足が肉塊に突き刺さっている伝説の剣に見えてくる。うっぷ。
「おいしそう?」
「う、うん! ソウダネー。さ、次はユズちゃんのを見てみよっ!」
「ユズちゃん、どんな感じ?」
「上手くできたよ♪ みてみて~!」
な、これはすごい! 「もしかしてプロ?」って言いたくなるような出来栄えだ。
例えばマグロをきれいに折りたたんでバラの花っぽく仕上げている。イクラもこれはつぼみに見立てているのかな。
「写真撮っていい?」
「どうぞどうぞ~」
「リンちゃんは……。うん、正統派って感じだね」
「悪かったね、大した特徴もなくて」
「いや、そんなこと……。うん、ゴメン。やっぱり私の語彙力ではこれを正統派以外の言葉で表せなかったよ」
そして最後はみんなで楽しく海鮮丼を楽しんだ。美味しかったー!
◆
「さてと。お昼ご飯も終わったことだし、ちょっとだけダンジョン関係の話をしよっか。タイパニック号をクリアしたときに祝福の声が聞こえたと思うんだけど、覚えてる?」
「確か『再挑戦可能になるまであと1年』みたいなことを言ってたよね?」
「それから『攻略ランクはC』って言われた」
「あとあと~、『条件を満たしたから【アイドル】になれます』みたいなことも言ってなかった?」
お、みんなちゃんと覚えててくれたようで何より。
「順番に説明していくね。まずはハルちゃんが言ってくれたように『再挑戦可能になるまであと1年です』ってところ。これはまあ言うまでもなく、タイパニック号に再挑戦できるようになるまで1年かかるってことだね」
「つまり、あと一年はタイパニック号に乗れないってこと?」
「そういう事になるかな」
「そっかー。次は船長さんがあの魔法を使わなくていいようにしたいね!」
「だね。そしてそれと関わっているのが『攻略ランクはC』って部分ね。攻略ランクは特殊階層をどの程度上手く攻略したかを表す指標でA、B、C、Dの四段階があるよ。それから隠し条件を満たせばS評価が付くね。ランクが上がればその分報酬も豪華になるよ」
「今回はC……ってことは最悪ではないにしてもあんまり評価が良くないと」
「そうなっちゃうね。ちょっとネタバレになるけど、それぞれの攻略ランクはこんな感じ」
失敗(クリア扱いにならない)
空飛ぶギャングフィッシュを撃破できなかった。
Dランク
NPCに死者が出たものの、ギャングフィッシュを全て撃破した。
※最後のタイは船長が倒す。
Cランク
人的被害なく、ギャングフィッシュを全て撃破した。
※最後のタイは船長が倒す。
Bランク
人的被害なく、ギャングフィッシュを全て撃破し、かつ最後のタイに50%以上ダメージを与えた。
※最後のタイは逃げ出し、船の安全は守られる。
Aランク
人的被害なく、ギャングフィッシュを全て撃破し、かつ最後のタイを倒した。
「って感じね」
「船長のキャリアを守ればBランクなんだね!」
「来年はBランク、いやAランクを目指したいね♪」
ハルちゃんとユズちゃんはやる気になっている。うんうん、私達なら来年にはAランクを出せるようになっているはずだよ。
「Sランクの条件は?」
おっとリンちゃん、今それを聞いちゃうかい?
うーん、教えちゃおうか? いや、まだダメだね。それは後からのお楽しみってことで。
「今はまだ秘密!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます