初ライブ?
オーケストラの演奏が終わって、さあどうしようかというところで、一人の女の子から声をかけられた。
「ねえねえ! お姉さん、もしかしてアイドルなの?!」
「! うんん、まだ違うよ。今、目指しているところかな」
「そっかあ! ねえねえ、お姉さんたちのライブ聞きたい!」
おっと、このタイミングでこのイベントが発生するとは。ゲームではこっちから声をかけないとこのイベントは始まらなかったのに。
まあいいか、これは引き受けておいた方がいいイベント。どうせいつかやるなら、今やっちゃってもいいよね?
「うーん、やってみたいけど勝手にステージを使うのはいけないし……」
「ええ~!」
と駄々をこねる女の子。そこへいかにも上流階級っぽい服装をしたおじいさんがやってきて
「それなら大丈夫じゃよ。ここのステージは今日はもう誰も使わないからの」
と言った。想定通りの展開ね。
「ど、どうも。そうなんですか?」
「ああ、自己紹介をし忘れておったの。ワシはこのコンサートホールの支配人じゃ。どうぞよろしく」
「そうなんですか!(知ってたけど)あ、私たちはアイドルを目指していまして。私がヒメ、こちらがハル、リン、ユズです」
「「「よ、よろしくお願いします」」」
「ふぉっふぉっふぉ。そう緊張せんでよいぞ。それで、ライブをするんじゃな? 気になってそうな子供がいっぱいいるし、どうじゃ? ライブ、してみないかの?」
「はい、是非!」
「「「ええ?!」」」
三人が驚愕の声を上げる。あーゴメン。三人に説明するの忘れてた。
◆
「ごめんね、勝手に引き受けちゃって。けど、これは必要なイベントなの」
「なら仕方がない。けど先に相談してほしかった」
「うん、本当にごめん」
「ん。それで、どうするの? コンサートって私達何もできないじゃない。ハル、ユズ、何か歌える?」
「この前の合唱コンクールで歌った歌しか、歌えない!」
「私は一応、お母さんがよく聞いてる歌なら~」
「大丈夫、歌は用意されてるはずだから……。ほら」
「こちら、『君もアイドルよ!』のレコードじゃ。娘が好きなんじゃよ」
お爺さんから渡されたこの楽曲はゲームの主題歌の一つ『君もアイドルよ!』だ。ちなみに、主題歌は他にあと4個あるけど、それはまたの機会に。
「ありがとうございます。使わせていただきます」
「ここを押せば音楽が流れ、リハーサルを出来るぞ。準備が整ったら呼んどくれ」
「分かりました」
〔ステージギミックが作動します〕
〔ステージでは〈マジカルフィーバー〉と同様の魔法が作動しますが、発射される音符に攻撃力はありません〕
〔それでは、良きステージを〕
「な、なに今の?」
「祝福の声?」
「こんな時にも聞こえるんだ~。うん、いいステージにします♪」
「さて、今のガイダンスにもあったように、ここではマジカルフィーバーが発動するよ。けどギミックが難し目に設定されているよ。けど、安心して。たとえ失敗しても、クリアできるから」
「そうなの?」
「それなら安心だけど」
「聞いてるの、子供だけだしね。多少失敗しても気が付かないよ」
「「なるほど」」
「え、ええ~! でも、保護者も聞いてるんじゃあ……」
「あはは、子供だからっていうのは冗談だよ。ステージ上でマジカルフィーバーを使った場合、タイミングを外しても失敗扱いにはならないの。その代わりギミックがかなり難しいって訳ね。とりあえずリハーサルをしてみよ!」
「~♪ キラメク君が、眩しくって~♪」
前世で何度も聞いた曲だから、すっごく懐かしく感じる。私はノリノリで歌い始めるも、他3人がストップをかけた。
「「「! 歌詞があるの?!」」」
「ちょっ!」
急に大声を出されてびっくりしてしまう私。一度音楽を止めて3人を見る。
「もちろん歌詞付きだよ。魔方陣に書いてなかった?」
少なくとも私の魔方陣にはカラオケみたいな感じで歌詞が映し出されていた。
「そういえば書いてた!」
「……見てなかった」
「私も見てなかった~。ノーツに集中してて……」
それもそうね。私は歌詞を覚えてるから、不安なところだけチェックすればいいけど、3人はそうじゃないもんね。
「と、とりあえず一度通して聴いてみようね。3人は歌わなくていいから、ノーツに集中してみよっか」
「……なんでヒメはこの曲を知ってるの?」
「だってリーダーだもん」
「「「……」」」
納得がいってなさそうな3人。私は誤魔化すようにレコードのスイッチを入れた
「~♪ キラメク君が、眩しくって~♪」
この曲の場合『「キ」ラメク「キ」ミが、「まぶしく」って~』の6か所で魔法を発動し、その後その場で一周くるんと回らないといけない。
そして40秒ほどで最初のサビが来る。その直前のフレーズ。
「ワン、ツー、スリー、フォー。せーの、イェイ!!」
ここは
◆
おおよそ1時間くらい練習させてもらい、3人ともある程度歌えるようになった。リンちゃんとハルちゃんも特殊ギミックを除けばノーツを飛ばせるようになってきたし、ユズちゃんに至ってはすでに完璧になっている。
そこで私はお爺さんを呼んで練習が終わったことを伝えた。すると「じゃあ、10分後にライブとしよう。子供達を集めてくるよ」と言って去っていった。
10分後、30名以上の子供とその保護者が集まった。
「わあー! すっごい人。緊張する……」
「ヤバい、緊張してきた。そうだ、あの人たちは人じゃないんだから……。ブツブツ……」
「私もちょっと緊張するな~、でもそれ以上に楽しみ♪ ほら、リンちゃん、手、握ってあげる!」
「ユズ……。ありがと、ちょっと安心した」
ふう。実は私もちょっと緊張気味。でも大丈夫、だって私はいずれ最強になるアイドルなんだから!
ステージの幕が開き、私たちは子供たちの前に飛び出した。
「みんな、こんにちは!」
「「「「こんにちは~!!」」」」
わあ! 子供たちの元気な声に私はちょっとたじろいでしまった。けどすぐに冷静さを取り戻す。私が緊張したら、他の3人も緊張しちゃう。私がしっかりしないとね!
「今日は『君もアイドルよ!』を歌うよ!」
「「「「わあああ!」」」」
「『ワン、ツー、スリー、フォー。せーの、』って言ったら、みんなも一緒に『イェイ!』って言ってね! じゃあ、行くよ!」
……
結論から言おう、私は何度かミスをしてしまった。けど、子供達も大人もそんなこと気にせず、私たちのライブを楽しんでくれた。
うん、なんていうかすっごく楽しかった!!
「かっこよかった~!」「きれいだったよ!」
「ありがとね~。また機会があったら一緒に歌おうね!」
「「「「うん!!」」」」
◆
ライブを終えた私たちは、船内の探索を再開した。しばらく歩くと、私たちは
オレンジ色の煙突が四本、煙をモクモクと出しているのを見ることができる。そして、それを見たリンちゃんが顔を青ざめさせ、のんきに笑っている私たちの肩を揺さぶった。
「……! ヒメ、ユズ、ハル!」
「どうかしたの?」
「この船、ヤバいかもしれない……! この船、私、見たことがある!」
ほう、さてはリンちゃん、この物語の元ネタを知っているな?
「うんうん、ヤバい大きさだよね!」
「確かにおっきいよね~! さすが豪華客船!」
「そういうヤバいじゃなくて! 危険なの!」
「リンちゃん、落ち着いて。この船、見たことがあるって言ったよね? どこで見たの?」
「お父さんがプラモデルを作っててそれで」
「なるほどね。それで、何て名前の船?」
「タイタニック号……」
「「タイタニック号?!」」
リンちゃん、正解。そう、実はここは、かの有名なタイタニック号を基にした舞台なの。
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