アイテム職人
「すごい~。光ってる~!」
ミカンさんの目が輝いて見えるのは魔道具の光を反射しているからか、あるいは見たことがない現象を前に驚いているのか。その両方かな?
「ねね、姫香ちゃん! これの色違いとかってある~? 青い光とかピンクの光とか!」
「あるはずですが、今は無理ですね。【アイテム職人】のジョブを得たらその辺の調整が聞くようになりますよ」
「そうなんだ~! それは楽しそう!」
「興味を持って頂けたようでよかったです。他にも現時点で作れる物の一覧を書いておきますね」
◆
……という会話をしたのが一週間前。一週間後、ミカンさんから電話がかかってきて。
『私、【アイテム職人】になれたよ~!』
という報告を頂いた。想像以上に早かったわね、一か月はかかると思ってた。
「おめでとうございます!」
『それで、空間魔法の魔方陣も安定して縫い込めるようになったから、マジックバッグを作ってみようかなって思ってるのだけど……』
「いいですね! じゃあさっそく材料を持っていきますね。ふふふ、楽しみにしててください、すごいものがドロップしたので!」
『?』
「今日の放課後、伺いますね!」
機械仕掛けの蚕から0.5%くらいの確率で落ちる「シルバーシルク」、銀色に輝くこの糸は魔力伝導率が非常に高いの! つまりこれでマジックバッグを作れば……普通よりも大容量のものが出来上がるわ!
放課後になって私たちはユズちゃんの家にお邪魔していた。待つこと一時間ほどで、ミカンさんも帰ってきた。
「どうぞ、これがシルバーシルクです」
「これがシルバーシルク……。あの~こんな貴重なもの、本当に私が使っていいの……?」
(気になってさっき調べたら、マジックアイテムに使うシルクって迷宮の深層じゃないと取れないって。とっても貴重で、この糸一束でも10万円以上するんだよね~? ただのシルクでもそれだけするのに、それよりもレアなものってなったら……いくらするんだろ~!)
※層の名前
浅層:0~30層
中層:31層~60層
深層:61層~90層
極深層:91~120層
超深層:121層以降
(ドロップ率0.5%だからね、そりゃあ貴重だよ。けど、こんなことを言ってミカンさんにプレッシャーを与えちゃったらいけないわ!)
「もちろんです。ミカンさんなら安心ですし! それに、その糸って迷宮の浅層でとれるものなんで、そこまで貴重ではないんですよ」
※層の名前(ヒメ視点)
浅層:0~300層
中層:301層~600層
深層:601層~900層
極深層:901~1000層
超深層:1001層~1024層
(はわわ、浅層なはずないよね~! 多分あれだよね、私を緊張させないように嘘を言ってるんだよね~!?)
「が、頑張るね~!」
「それより、本当に加工代はいらないんですか?」
ミカンさんの刺繍の技術はそれこそ商売道具になるレベルのものだ。それを頼るのにお金を払わないのは失礼ではなかろうか、と私は思った。
流石に「じゃあ100万払え」って言われたら困るけど、数万円くらいなら出すべきでは……?
(既に私、【アイテム職人】になるために幾ら分の糸を使ったか分からないのに、これ以上お金を貰うわけにはいかないよ~!)
「いらないよ~! それを言うなら私だって姫香ちゃんにお金を払わないとだし~」
(魔方陣を教えてあげたりしたことの代金かな? あはは、いらないよー。あ、なるほど。ミカンさんもこんな風に思っているのかな)
「わかりました、それならお言葉に甘えますね。あ、そうだ。本番前にこちらのシルクを使って練習すればいいかと思います~」
「あ、ありがとう~。頑張るね~!」
(こ、これ全部で幾らなんだろ……。ひえええ~。うん、これだけして貰ってるんだから、全力で最高品質の物を作らないと!)
糸を受け取ると、ミカンさんはすごく真剣な表情になった。職人魂的なものに火が付いたのだろうか? うん、彼女ならいいものを作ってくれるだろう。楽しみね。
◆
それからまた一週間が経過した。ユズちゃんに聞くと「いい調子らしいよ~」とのことだが、こうも時間がかかるとは思ってなかったから心配だなあ。あ、もしかしたら学校行事とかと被ってしまった? それなら申し訳ない……。
さらに一週間が経過した土曜日、ようやくミカンさんから連絡がきた。
「お邪魔します。ミカンさん、こんにちは!」
「姫香ちゃん~! 見てみて、最高傑作だよ~!!」
「おお~! 確かにマジックバッグになってますね! すごいです!」
「それだけではないよ~! そのマジックバッグにアイスクリームが入ってるから出してみて」
「? ……わ、出てきた! え、冷たい?」
中から出てきたハー〇ンダッツは冷たかった。これってまさか……。
「うん♪ 時間停止機能も付けたよ!」
「な、なんですと?! すごいです、すご過ぎですーー!」
「えへへ、魔方陣を構築するのにすっごく時間がかかっちゃって……。納品が遅れてごめんね」
「いえいえ、全然そんなこと」
こうして私はマジックバッグを手に入れたのだった。
おかげでこれからの活動がスムーズに進みそうね!
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