ミノタウロスの間
ミノタウロスの間に到着した私達。戦闘前に軽く休憩しつつ、作戦を伝える。
「三人とも、重要なことを話すからしっかり聞いてね。ミノタウロスは体長2メートルほどの大男……いや雄牛?……なの。大きな斧を振り回す、近接タイプの魔物ね」
「うわあ、怖いね! ラスボスって感じ!」
「あはは、まあ隠しボスであって、ラスボスではないよ? で、その攻撃はぱっと見は物理攻撃っぽく見えるけど、実は魔法なの。魔法の斧を生成して、それで攻撃してくる感じね」
「なるほど。という事は、対応するマジカルバリアで防げると」
「その通りだよ、リンちゃん! 例えば土属性の斧攻撃は、火属性のマジカルバリアで防げるわ」
「なんで土の攻撃を火で防げるのか、全く納得がいかない」
「あはは、ほんとなんでなんだろうね。えっとそれでね、ミノタウロスは戦闘開始とHPが半分になった時で属性が変わるの。例えば、戦闘開始時に火属性だったけど、後半は水属性……みたいに」
「ほえー」
「分かった、今までよりも厄介そう。腕がなるね」
「な、なんだか難しそう……」
「うん、無策で挑むと難しいわね。だから、先に役割を決めておくよ」
・属性の三すくみ構造
火<水<土<火……
・四人の属性
ヒメ:火・水
ハルちゃん:火・土
リンちゃん:水・土
ユズちゃん:土・水
・ミノタウロスが火属性の時(水が弱点)
ハルちゃんは参加せず
・ミノタウロスが水属性の時(土が弱点)
ヒメは参加せず
・ミノタウロスが土属性の時(火が弱点)
リン&ユズが参加せず
「ミノタウロスが属性を切り替える間、向こうは動かないけど無敵になるわ。要は『仕切り直し』みたいになる。だから、ミノタウロスが動くのを辞めて『ブオオオオ』って吠え出したら距離を取るように。事前に言っておくべきことはこんな感じかな?」
◆
「たのもー」
「「「たのもー」」」
私達はボス部屋に突入した。すると、部屋の端っこに座っていたミノタウロスが立ち上がって大声を上げた。
ブオオオオ!
「まずは……火属性みたいだね。ハルちゃんは下がって、私達が前に出るから。〈コスチュームチェンジ〉!」
「〈コスチュ~ム、チェンジ~♪〉」
ハルちゃん以外の三人が水属性に切り替わった。ミノタウロスがこっちに走ってきたので、三人同時にマジカルバーストを撃つ。
「「「〈マジカルバースト〉!」」」
ミノタウロスはダメージを受けてなお、闘志は消えておらず、私達に火の斧を振り下ろしてきた。
「「「〈マジカルバリア〉!」」」
ハルちゃんを守るように三人でバリアを張る。本当は誰か一人が張ればそれで十分なのだが、そういうのはもっと連携が上手くなってから。今はとにかく全員バリアを起動するようにしている。
「隙あり!」「今」
「「〈マジカルバースト〉!」」
攻撃を食い止められて、ミノタウロスは少しバランスを崩した。その隙に私とリンちゃんがマジカルバーストを放った。至近距離で攻撃を喰らったミノタウロスはズサッとノックバックした。
「リンちゃん、上手いね!」
「ヒメこそ、流石。ユズ、バリアが成功してもぼーっとしないように」
「ご、ごめん~!」
「次はユズも頑張ろうね」
「うん! 喰らえ~!〈マジカルバースト〉!」
…
……
………
ブオオオオオオ……!
戦闘開始から10分ほど経った時、それは起こった。突然ミノタウロスが金色のオーラを纏って大声を上げ始めたのだ。
「きゃあ! な、なに?」
びっくりしたのか、ユズちゃんが私に抱き着いてきた。私は安心させるように彼女の腰を引き寄せて言う。
「落ち着いて、ユズちゃん。これはさっき言った変身、属性が変わっているの」
「ひ、ヒメちゃんが私を抱き寄せてる……♪」
「? ユズちゃん、何か言った?」
「な、なんでもないよ~! びっくりしちゃっただけ」
「そう? ともかく、ミノタウロスから距離を取るよ!」
ブオオオオオオ……!
ミノタウロスから発せられるオーラが弱まる。そこには、青色の斧を持ったミノタウロスが経っていた。ちなみに、髪の毛の一部も青色になっている。
「水属性、今度はヒメを守らないとだね」
「「「〈コスチュームチェンジ〉」」」
私以外の三人が土属性に変身する様子を一歩後ろから眺める私。なんだか三人とも、頼りがいのある後ろ姿になったなあ、なんて感想を抱いた。
「さっきまで暇だったからね、今度はハルが! いっけー!〈マジカルバースト〉!」
「〈マジカルバースト〉」
「これでどう~? 〈マジカルバースト〉!」
三人にボコボコにされ、程なくしてミノタウロスのHPが底をついた。
ボフンというエフェクトの後に残ったのは……。
「無事お肉ゲットだね!」
「牛肉だあ! すっごー! 大きいね!」
ハルちゃんは、まるで大きな骨を与えられた犬みたいにはしゃいでいる。
「おいしそう。けど、下に敷いてある葉っぱはどこから来た?」
リンちゃんはダンジョンの謎に頭を悩ませている。そう、ドロップした肉は何故か葉っぱの上に乗って状態で落ちるのだ。流石ご都合主義の世界。
「どこの部位だろ~? ヒメちゃん、分かる?」
「ゴメン、お肉についてそんなに詳しい訳じゃないから……」
ユズちゃんはお肉の部位に興味があるみたい。けど、残念ながら私には見た目で肉の部位を当てることは出来ないなあ。
後から調べて分かったが、おそらく部位はサーロイン。霜降りが入った肉質がたまらないらしいわ!
「さてと。大きさ的には三人分くらいかな?」
ギリギリ四人で分ける事も出来ると思う、けど家に持って帰るには量が足りないよね。うちは私とお母さんの二人暮らしだけど、リンちゃんは3人家族、ハルちゃんは4人、ユズちゃんは5人家族だ。
「どうやって分けよう?」
「換金するか、それかまとまった量が溜まってから分配するか」
「せっかくのお肉だし、自分達で食べたいよね」
「じゃあ、まとまった量が溜まってから分配しよっか?」
「それか、どこかのタイミングで三家族合同で焼き肉パーティーを開くとか?」
「「「それいいね!」」」
そういえば、もうすぐ夏休みだ。機会を見計らって、どこかの海岸で焼き肉パーティーを開く事が決定したのだった。
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