新たな魔法

 卵を割って、卵黄と卵白に分ける。卵黄に牛乳・薄力粉・ベーキングパウダーを入れて生地を作る。卵白には砂糖を入れて泡立てる。メレンゲを作っているのだ。その後、メレンゲと生地をしっかりと混ぜて、オーブンで焼けば……フワフワなパンケーキの完成!

 養蜂の花園でドロップしたハチミツをたっぷりとかければ、今日の朝食の完成だ。


「今日の朝ご飯はハチミツパンケーキだよ!」


「すごーい! ふっくらしてて美味しそう!」


 お母さんはかなりの甘党。ここ最近、ハチミツクッキーやハチミツのパンケーキなどなどハチミツをよく食べる生活をしているけれど、その度に目を輝かせている。そろそろ飽きたって言われなくてよかったわ。

 前の毎日牡蠣生活では文句を言ったリンも、今回は嫌そうな顔をしていない。なんやかんや、女の子は甘い物が好きなのかな。私も好きだし。


「今日のお弁当にハチミツクッキーを入れてあるから、食後に食べてね」


「うん、ありがとね~!」



 そして次の日。今日も今日とて養蜂の花園で練習している時にそれは起こった。



特殊技能スキル〈コスチュームチェンジ〉を獲得しました〕



「やった、ついに来たわ!」


「どうしたの?」「どうかした?」「何かあった~?」


「三つ目のスキル〈コスチュームチェンジ〉を取得したの!」


「ホント?! 凄い!」「新たなスキル、興味深い」「すご~い!」


「三人ももうすぐ獲得できると思うわ」


 結局その日の内に、三人とも〈コスチュームチェンジ〉を獲得できた。毎日同じ訓練メニューで練習してるからね、やっぱり取得タイミングは同じみたいだ。


「で、で、で! これってどんなスキルなの?」


 ハルちゃんが興奮して小さくぴょんぴょん飛び跳ねる。可愛いけど、いったん落ち着いてもらって。


「〈コスチュームチェンジ〉はその名前の通り、別衣装に着替える魔法よ」


「別の衣装? この服以外の衣装があるの? もっと可愛い?」

「たぶん違うよ、ハル。きっと変わるのはデザインじゃなくって……」

「「なくって?」」


「お、リンちゃんはもう予想できてるかも? そう、変わるのは衣装のデザインじゃなくて色。つまり、属性が変わるわ」


「やっぱり」

「「属性が変わる?!」」



「つまり、〈コスチュームチェンジ〉は二つ目の属性魔法を手に入れた証拠だね。胸元についてるブローチを見せてもらうね」


「これ?」


 まずはハルちゃん。前までは白色の背景に大きく炎の模様が書かれているデザインだったけど、今は背景が薄っすら黄色になっている。つまり。


「ハルちゃんの二つ目の属性は土ね。土属性をイメージしながら、コスチュームチェンジって言ってみて」


「分かった! 〈コスチュームチェンジ〉! わわわ!」


 ハルちゃんの赤色の衣装がピカッと光り、次の瞬間には黄色をテーマにした衣装に切り替わっていた。髪色も、黄色になっている。


「すごい、すごい! 服が黄色くなった!」

「髪の色も変わった。不思議」

「かわいいよ、ハルちゃん!」


「そ、そうかな? ヒメちゃん、ど、どうかな?」


「すっごく可愛いわよ! 毎日愛でたい!」


「あ、ありがと!」



 次はユズちゃんのを見てみようかな?


「ユズちゃんのブローチの背景は水色。水魔法を覚えたみたいだね!」


「やった~! リンちゃんとお揃い!」


 ぎゅーっとリンちゃんに抱き着きに行くユズちゃん。リンちゃんはびっくりした表情になる。


「急に抱き着かないで。びっくりする」


「ご、ごめん! つい……」


「そんな不安そうな顔をしなくても、怒ってないから」


「良かった……。今度から気をつけるね」


「うん。衝動的な気持ちを抑えてこそ、真の強者なのだから」


「リンちゃん、カッコイイ……!」


 そうかな? 私からすると、ただの中二病……。っとそれはともかく。



 最後にリンちゃんのを見せてもらおう。


「リンちゃんの第二属性は土属性みたいね」


「そっか。ユズ、一緒だよ」


「うん!」


「ギュッてする?」


「うん!!!」



 この後、ハルちゃんが「私も~」と言って二人の間に飛び込んでいった。こ、こら! 百合の間に挟まってはいけません!


「ヒメも一緒に!」「ヒメもおいで」「ヒメちゃんも来て~♪」


「え、いいの?」


「「「もちろん!」」」


 何故私たちはダンジョンの中で抱き合っているのだろう……。ま、いいか。



「そういえば、私は……何色かな?」


「水色。ヒメも水属性みたい」


 そっか。じゃあまとめると


ヒメ:火・水

ハルちゃん:火・土

リンちゃん:水・土

ユズちゃん:土・水


 って感じね


「良い感じにばらけた」


「だね。じゃあ、早速だけど新しい属性で戦ってみようか。最初の内はコントロールが難しいから、一人ずつ次の属性の練習をしていこっか」


「はーい!」「それが良いと思う」「りょうか~い」



 私とリンちゃんはすぐに二つ目の魔法も使いこなせるようになった。一方で、ハルちゃんとユズちゃんはかなり苦戦している。うーん、出来れば早く次の狩場に移動したいところだけど、二人が第二属性が使いこなせるようになるまではここで練習だね。






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