第36話 怪しい動き

「私は思うのです。彼女落ちこぼれ王女を、この学園から追放させるべきだと。皆さんも、そう思いませんか?」


 周りにいるクララをよく思っていない生徒たちに声かけをする女子生徒。


 この場にライリーやシェイラがいたら、真っ先に否定しただろう。1年C組の生徒に少しでも勇気があったなら、この話は無かったことになっただろう。


 しかしこのとき、この話をはっきり違うと言える者は誰もいなかった。


 この話に耳を傾けている者は皆、クララを良く思っていない人物なのである。


「確かに……。そうだよな。あの落ちこぼれと一緒の学園に通っているだなんて、俺たちは納得できない!」

「えぇ、私もそう思うわ」


 話が、どんどん大きくなる。


 ここで更に、事を大きくしたい人物がやってきてしまう。


「皆様、良いご決断だと思います」


 カータ・リリスをはじめ、シェイラとライリーを除いた生徒会のメンバーだ。


 この場にいるメンバーは五人。生徒会にあるまじき不気味な笑顔を浮かべ、この話に乗っかろうとしているようなのだ。


「我々も、そろそろ落ちこぼれ王女の排除に向けて動こうとしていたところです」

「そこで、皆様に我々と協力していただきたいことがあるのですが、よろしいですか?」


 副会長に続き、カータが自身に満ちた笑みを浮かべながら話をする。


 このあと、全員が頷くと生徒会のメンバーから告げられたクララ追放案が酷いものにも関わらず、賛成の声が多数上がってしまったのだった。



***



 こちらはクララとライリーのペア。


 今現在、クララはシェイラの部屋の前の監視魔法で撮られた映像を確認しているところだ。


「一番怪しそうな人は?」


 ライリーが手がかりを探し求めるようにクララへ問いかける。クララはしばらく難しい顔をしてから頷くと、すぐに口を開いた。


「アイーヌ……かしら。私の専属侍女だから姉様の部屋に入る必要は無いのに入室してる。しかも一人で」


 アイーヌはクララの事が嫌いなため、仕事もそれなりで終わらせ、シェイラ専属の侍女たちと仕事をしていることが多い。


 しかし、勝手にシェイラの部屋に入って何かをしていくことは無かったため、不信感を覚えたのだ。


「じゃあ、まずはそのアイーヌさんから調べていこうか。調べる方法なんだけど、まずは俺が同僚の人たちに話を聞く、ってことで良いかな?」

「えぇ、大丈夫よ。その間、私は何をすればいいかしら?」


 ライリーの言葉に頷いた後、クララは自分のやることについて問いかけた。


「アイーヌさんの部屋にも監視魔法を設置しておいて欲しいんだ。悪者かも知れないとはいえど、相手は女性だしね」


 そういうことなら、女性であるクララが設置しやすいということで納得がいく。


 クララは、大きく頷いた。


「えぇ。じゃあ、アイーヌが何をしているのか、突き止めるわよ!!!」

「うん!」


 二人は、やる気に満ちた表情でカフェテリアを後にしたのであった——。



***



「あの、何か下の階が騒がしいようですが、何があったんでしょうか?」


 ここはクララ追い出し作戦が発表された頃の職員室前。渡されたばかりの新しい制服に身を包んだ少年が、先生と共に職員室から出てくる。


「あぁ、生徒たちが何かをやっているようだな。仲の良い生徒なんだ。君は気にしなくていいよ」


 生徒の横に立った先生は、生徒たちの活動にはあまり干渉しないようにしようという意思を前面に出している。


 それを聞いた生徒の方は、あまり納得していないようだったが、コクリと頷いた。


「明日は転入初日。色々不安な事があるだろうが、困ったことがあったら言ってくれ」

「はい、ありがとうございます!」


 生徒は、満面の笑みで返事を返す。


 明日からの生活がどんなものなのか、期待に胸を弾ませながら廊下を去って行ったのであった——。


                               つづく

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