第33話 作戦準備
シェイラの病気の原因突き止め大作戦の内容が決まったこの日。
長くシェイラの部屋に居座っては侍女たちに不審に思われる上にシェイラの体にも悪いため、別の日に決行するということになった。
そして、ライリーが帰宅していった後。シェイラの部屋にはクララとシェイラの二人が残っていた。
「ねぇ、クララ」
「何ですか? 姉様」
クララが自分の部屋に戻ろうと準備を始めているところにシェイラは微笑みながら話しかける。
クララも、シェイラに話しかけられるのはうれしいため、無条件で振り返った。
「クララ、いつの間にライリー君と仲良くなったの? 私、クララがライリー君と仲良くしているのを見て驚いちゃった」
無邪気な笑みをこぼすシェイラ。
この言葉を聞いて、そういえばシェイラにライリーのことを話していなかったなと思い出したクララ。
あまり話す機会が無いため、ライリーのことを伝えるのは忘れていたようだ。
「あ、あのですね。実は、入学してから結構すぐに仲良くなったんです……」
入学してから一週間後に秘密を共有し合い、協力する仲間になったのだ。妖魔に対する対策を講じるために。
その一環として、妖魔の退治の手伝いもやっているのだが、クララが絶対に秘密にしておいてくれと念押ししていたため、シェイラの耳にも入らなかったのだろう。
「入学してから? じゃあ、クララの学園生活は充実しているのね? 良かったわ」
「え?」
シェイラのうれしそうな返事にびっくりしたクララ。不抜けた声を出してしまう。
しかし、それを気にしないシェイラは話を続けた。
「私ね、お父様やお母様があの調子だからクララの学園生活がすごく苦しいものになっているのでは無いかと思っていたのよ。だけど、ライリー君がクララの友達になっているのなら、安心だわ」
「姉様……!」
自分が病気で大変な時でさえも他人の心配をしてくれていたことに感動したクララ。
何も伝えていなかったことに怒るのでは無く、喜んでくれたことが何よりうれしかった。
「ありがとうございます。私、姉様の病気を治せるようにライリー様と頑張るので、待ってて下さいね!」
「えぇ、楽しみにしてるわ」
クララは現在やる気満々。
そんな良い雰囲気のままクララはシェイラの部屋から自分の部屋に転移していったのであった。
***
数日後、学園の屋上にて。
「あ、クララ様。ごめんね、呼び出しちゃって」
「いいのよ。それくらい。姉様のことでしょう? 家の事情に付き合ってもらっちゃってるんだもの。呼び出しはなんてこと無いわ」
当然のようにすまし顔をしているクララ。
そして、これまた当然のようにライリーの横に腰を下ろす。
「それで? どこに監視魔法を設置するの?」
「う〜ん。とりあえず、シェイラ様の部屋の前と王宮の入り口、それからクララ様の部屋の前に設置するのが良いかなって」
指を顎に当てながら話を進めるライリー。
クララも一瞬何も考えずにライリーの意見を肯定しそうになってしまったが、ふとおかしいところに気づいて指摘をする。
「ねぇ、なんで私の部屋の前に設置するの?」
「あぁ、えーっと、シェイラ様にもし危害を加えているんだったら、クララ様の部屋にも入って罪をなすりつけようとするかなーって勝手な予想から」
説明不足だったことに気づいたライリーは、クララが安心できるよう、ゆっくりと理由を説明していく。
それで納得できた様子のクララ。うんうんと頷いている。
「そうね。そういう理由だったら納得できるわ。私も安心だし。じゃあ、そこに設置しに行きましょう」
「うん! じゃ、作戦開始だね」
すっくと立ち上がる二人。
二人の目には、必ずシェイラの病気を治すという強い決意の色が現れているのであった——。
つづく
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