第31話 優しい二人
クララとライリーの作戦は成功した。無事、クララがシェイラの部屋へ瞬間移動をすることが出来たのだ。
作戦の成功を喜ぶ二人は、顔を見合わせてお互いうれしそうに微笑む。
「く、クララ!?」
一方のシェイラは、クララがいきなり現れたことに目を見開いて驚いている。
「姉様がご病気だと聞いたので、私、どうしてもお見舞いにきたかったんです。それで、ライリー様にお願いをして手伝ってもらったんです」
「ライリー君に? クララ、いつの間に仲良くなっていたの?」
更に驚きの顔を見せるシェイラ。
これによって、クララはシェイラにライリーと仲良くしていることを伝えていないことを思い出す。
「はい。学園に入学してから少し経ったぐらいの頃に」
「俺が強引に友達になってもらえないか相談をしたんですよ」
二人はシェイラに素敵な微笑みを向けながら話を進める。
「そうそう、ライリー様、いきなり教室にやってきて私を呼び出すんだもの。あのときはびっくりしちゃったわよ」
「だって、あのときはクララ様を呼び止める方法が他に思いつかなかったんだからしょうがないじゃないか」
開き直るライリー。
しかし、それによってクララの機嫌が少々悪くなっていく。
「何よ! 私も悪くないわよ!!」
先程まであれほど仲よさそうに笑い合っていた二人は、いつの間にかにらみ合ってしまっている。
気づかぬ間にケンカが始まりそうになってしまったので、さすがにシェイラは止めに入る。
「ちょっと、二人とも。落ち着いて!」
そのシェイラの言葉で我に返るクララとライリー。お互いが顔をそらすと、気まずそうにそっぽを向いている。
「もう、ここでケンカをしても意味が無いでしょう?」
「「ご、ごめんなさい……」」
シェイラに叱られてしゅんとしているクララとライリー。小さく縮こまってしまった。
「それより、何か話したいことがあったと言っていた気がするのだけれど……」
「あ、そうでした!!」
シェイラのおかげでやっと本題を思い出すことが出来たクララ。
シェイラのいるベッドの横に椅子を持ってくると、ちょこんと座る。
「あの、シェイラ姉様がご病気と聞いて、何がお手伝いすることは無いか聞きに来たんです」
「生徒会でも心配しています。何かあったら教えて下さい」
クララの説明に付け足しをするライリー。
先程までの笑顔や険悪な雰囲気とは打って変わって真剣なムードに切り替わる。
それを見たシェイラは、なんだかうれしくなったようだ。
(クララ、それにライリー君……優しいのね。お父様やお母様とは大違いだわ。私もクララに相談したいと思っていたところだし、相談してみましょうか)
そう思うと、シェイラはニコッと笑い、本題に入る。
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね」
「はい、ぜひ!」
元気な声で答えるクララ。シェイラはクララに向けて一度頷いた。
「実は……私、魔力不足症みたいなの」
「「魔力不足症……?」」
クララとライリーが声をそろえて聞き返した。
「そうなの」
「魔力不足症って、あれですよね。魔力の使いすぎなどが原因でかかる病気ですよね……」
「えぇ」
大きく頷くシェイラ。
それを見て、クララは最近のシェイラの行動を思い返せる範囲で思い返してみる。
しかし、シェイラが魔力を使いすぎた場面など全く思い出せない。
「あの、私、シェイラ姉様が魔力を使いすぎていたかどうかが思い出せないんですけど……」
「俺も同じくです」
クララの言葉にライリーも同意する。
それを受けて、シェイラも当然だというように何度か頷く。
「えぇ、私も思い当たることが無いのよ。最近は魔力を使う機会があまりなかったから」
「シェイラ姉様も……?」
それでは、なぜシェイラが魔力不足症になってしまっているのか。
非常に大きな疑問が残る。
「だから、何か思いつくことはないかしら?」
シェイラは、この状況になった理由を問うている。
しかし、クララとライリーもすぐに思いつくはずも無く。
しばらく、シンと静まりかえってしまったのであった——。
つづく
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