第28話 謎の、病気……?
その日の夜。
学園で病気の噂が流れているシェイラの部屋には、このマレイド王国国王と王妃であるエルリッヒとセフィーラというクララにとっては最低で最悪な両親が揃ってやってきた。
「おぉ、シェイラ。可哀想に。病気なんて、辛いだろう」
エルリッヒが悲劇の父親を演じるかのような口ぶりで言う。まるで舞台の上で演技をしているかのようで、シェイラは正直うんざりし始めていた。
(お父様とお母様、お見舞いに来るのは良いのだけれど、病人はそっとしておいて欲しいわ……)
シェイラが風邪の症状を出してからもうかれこれ3日が経っている。
そんなシェイラを心配してエルリッヒとセフィーラは毎日のように、そして何時間も入り浸り大した話もしないで帰って行く。
国王と皇后なのだからもっと忙しいはずなのにこんなに時間を割けるのはなぜだろうと疑問に思ってしまうシェイラ。
でも、そっとして欲しいだとかなぜこんなに構っている時間があるのかなどを言う勇気など風邪のせいで消え去ってしまっているシェイラには、この面倒な両親を追い払う元気はない。
「ほら、エルリッヒ様。シェイラが辛そうに息切れをしてしまっています」
「本当だ。大丈夫か、シェイラ」
「は、はい……大丈夫です」
なんとか追い出すには大丈夫そうなフリをして逃げ切るしか方法がなくなってしまったとシェイラは、無理矢理な笑顔を作ってエルリッヒたちを安心させようとする。
しかし、この娘の気持ちも考えられない人たちを追い出すのは、それだけではむしろ逆効果だった。
「おぉ、シェイラ……! 辛くても我慢しようとするその姿勢! 偉いぞ!」
「シェイラ、私たちはずっとそばにいますからね」
正直言って頭を抱えたくなってしまうシェイラ。このまま何も考えず寝てしまおうかとも考えた。
しかし、ここで寝てしまっては意味が無い。
(クララ……心配しているでしょうね。お医者様は魔力不足症と言っていた。魔力が足りていないだけだから一週間もすればこの風邪は治るって。でも、それだけじゃない気がするのよ。
だから、家族の中で一番冷静に考えられそうなクララに相談したいのに。魔力が不足しているのは確かだから、思念通話魔法を使うわけにもいかないわ)
どうしてもクララに接触をしたいのに、侍女と両親のせいで声をかけることすらままならない事、そして何よりベットに寝込んでしまっている自分に対して怒りを覚えてしまったシェイラだった。
***
一方その頃、家に両親が入り浸っているのが嫌で帰る気にもなれないクララは、夕飯をライリーの家でごちそうになることにしていた。
この夕飯を一緒に食べるのを提案したのはライリーで、ゆっくりご飯を食べながらなら良い案が思いつくかもしれないという理由からだ。
「それにしても、ごめんなさい。ライリー様に迷惑をかけてしまって」
「いいよいいよ。迷惑だなんて思ってないし」
「……ありがとう」
微笑んで感謝の気持ちを伝えるクララ。それを見て、ライリーも微笑みかえす。
「それでさっきちょっと思ったんだけど、シェイラ様に思念通話魔法を使うのは出来ないの?」
「あのね、ライリー様? 姉様は病人なのよ? 思念通話魔法を飛ばしていきなり魔法を使わなきゃならなくなるなんて、姉様が可哀想じゃない」
「あ……確かに」
根本的なところが抜けてしまっていたような顔をするライリー。
クララは小さなため息をついてから、またライリーに目を向ける。
「とりあえず、明日姉様に会えるようにしたいから、学園で作戦を立てましょう。少し考えてきてもらっても良いかしら?」
「分かった。じゃあ、何か案を考えてくるよ」
「ありがとう、私も考えてくるわね」
快く引き受けるライリー。クララもうれしそうに微笑む。
そして、この後の時間はクララとライリーは純粋に夕飯を楽しむ時間に充てた。それが終わると、ライリーが見送る形でクララは帰っていったのだった。
つづく
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