第27話 噂と、心配事と

 クララがファッションについて色々教えてもらってから4日ほどが経った。


 クララとライリーの二人は相変わらずの仲で、冗談を言い合ったり魔法の訓練をし合ったりできる良き相棒となっている。


 そんな中、二人の所属している学園では、とある噂がたち始めていた。


「ねぇねぇ、あの噂、聞いた?」

「聞いた聞いた。あれでしょ? あの、転校生が来るかもしれないっていう」

「そっちじゃなくて、シェイラ様の噂の方」

「あぁ、そっち?」


 廊下で話す、女子生徒二人。自分たちが聞いてきた噂について話し合っているようだ。


「そう。シェイラ様、ここ2日間来ていないじゃない?」

「そうだね」

「だから、シェイラ様は何らかの病気にかかったんじゃないかって噂になっているでしょう?」

「う、うん」


 片方の女子生徒は前のめりに話していっている。もう片方の女子生徒は、 相づちを打ちながら真剣な態度で聞いていた。


「それでね、一部で流れてるこの噂の続きなんだけど……」

「なになに?」

「あの落ちこぼれ王女、クララ様が原因なんじゃないかって言われてるの」

「えぇっ!?」


 驚いてついつい大きな声を上げてしまう。あんまり大きな声で噂話をしたくない噂話を始めた彼女は、口元に人差し指を添えると、静かにするように伝えた。


「まぁ、噂話だから合っているとは思わないけど、でも、前からあの人のことが気に食わなかったのよ」

「そうなの?」

「うん。だから、この噂に乗っかろうと思って」

「噂に……乗っかる?」


 この噂に乗っかろうと思うと言った彼女は、顔に不気味な表情を浮かべ、何かを企むような目をしていたのだった。



***



 一方で、こちらはお昼休みの屋上。


 お昼ご飯を食べ終わったクララと、それを追いかけてきたライリーが集まっていた。


「はぁ……」


 外の景色を見ながらため息をつくクララ。横に立つライリーは、珍しくため息をついたクララに心配の目を向けた。


「クララ様? どうしたの? そんな深いため息をついて」

「どうしたもこうしたもないわ。今まさに起こっているのよ。大変な事が」

「大変な事って?」


 クララの言葉をリピートして問うライリー。ライリーに問われると、クララは目線をライリーの方へ向け、話を始めた。


「姉様が、ご病気なのよ」

「え? シェイラ様が?」

「えぇ、そう。でも、ご病気なのは分かっていても使用人たちが姉様に会わせてくれないからどんな様子なのかが分からなくて。ずっと気がかりでしょうがないのよ」


 更に深いため息をつくクララ。その上ライリーもクララの話に考え込み始める。


「シェイラ様……最近お疲れの様子だとは思っていたけど、ご病気なのは心配だな」

「そうなの。あの両親たちは姉様のご様子を知っているのかもしれないけれど、あんな人たちから情報を得られるとは思わないし……」


 あぁ、と、クララの両親の話を聞いていたライリーは納得したように頷く。


 クララもクララであんな文句や暴言ばかり言ってくる両親に頼りたくもないので、他にシェイラの情報を得る方法がないか考えたのだが、全く思いついていないのだ。


「俺が行っても……追い返されるだけだよね」

「えぇ、多分。私と仲良くしていること、両親にバレてしまっているからライリー様は行かない方が良いと思うわ。いらない暴言を受けることになるわよ」

「うん、それはちょっといやかな」


 苦笑いを返すライリー。ライリーの苦笑いを見て自分も苦笑いをしたい気分になったクララ。クララも苦笑いをした。


「やっぱり、シェイラ様のご様子とかは分かった方が良いよね。なんだか嫌な予感がするし」

「そうね。ライリー様には何か策があるの?」

「う〜ん。全く無いってわけではないけど、正確な情報を得られる可能性は低いよ」

「なら……あんまり意味は無いわね」

「うん」


 大きく頷くライリー。クララはまた良い策がないかどうかを探るため、考え込み始めてしまった。


 しかし、この日は良い案が出ないまま昼休みが終わってしまい、心配事を残したまま授業に出ることになってしまった。


 そして、ライリーの「嫌な予感」は的中していたと言うことを知るのは、もう少しだけあとのお話。


                               つづく

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