第25話 サプライズ
「あ、あの……私はどこへ連れていかれているのですか?」
前回、ライリーの家へお邪魔してなぜか引き連れられてしまっているクララは、ライリーの執事「ジェイ」に問いかける。
クララの腕を取りながら歩いていたジェイは、クルリとクララに視線を向けると、ニコリと微笑んだ。
「クララ様がとても喜ぶところへ、ですよ」
「私が……喜ぶところ?」
「はい、ライリー様からのお願いです。実際に見せるまで秘密と言われているので、着いてからのお楽しみですよ」
どうしても行く先を教える気は無いらしい。そう言うと、また目線を前に向けたジェイ。
クララは、「自分が喜ぶところ」というものがどういうところなのか分からず、どこに行くかの見当をつけることも、これが果たして自分に良いことなのか判断することも出来ない。
どうすることも出来ないと察したクララは、おとなしくついて行くことにした。
***
建物内を歩くこと5分ほど。クララはジェイに連れられてとある一角にある部屋の前に立っていた。
「クララ様、ここですよ」
「……ここ?」
「はい」
相変わらずの笑顔のままジェイは大きく頷くと、勢いよく部屋のドアを開ける。
クララが中を覗いてみると、中では3名ほどの侍女が待機していて、何やらファッション関係の物が並んでいる。
「えぇ!? えっと……これはなんですか?」
「見ての通りですよ。さぁ、早くお入りになって」
ジェイに背中を押されるがままに部屋へ送り込まれるクララ。後ろを振り向くと、またジェイは笑顔をクララに向けた。
「それでは、クララ様。楽しんできてくださいませ。終わる頃にはライリー様とお迎えに上がりますので」
そのままバタンと閉じられるドア。動揺し続けているクララが部屋の中へと視線を向けると、待機していた侍女たちと目が合った。
「あ、あの……」
「こんにちは、クララ様。
「私はルーナです。今日はよろしくお願いしますね!」
「スーファですわ。よろしくお願いします」
侍女たちは自己紹介をすると、クララに向けてお辞儀をする。まだ混乱しているクララは、侍女たちに問いかけた。
「あ、あの……自己紹介、ありがとうございます。ですが、今日は何をするんですか……?」
そのクララの問いかけに信じられないと言ったように大きく目を見開く侍女たち。
なんだか、余計な罪悪感がわいてくる。
「もしかして、ライリー様から聞いていないのですか?」
「……はい。ジェイさんにも聞いたんですけど、ライリー様に止められているからダメだって」
そう答えると、侍女たちが纏っていた優しそうな雰囲気が一気に飛んでいった。
「全く……ライリー様はいつもこうなんだから」
「いきない家に来いと言われる身にもなってやって欲しいものです」
「そうですわ。
怒り……なのだろうか。この会話を聞いていると、このように人使いが荒かったことが何度かあるらしい。
とりあえずクララは三人の怒りを収めることに集中した。
「あ、あの」
「あ、申し訳ありません。ライリー様への怒りのあまり、ちょっとお見苦しいところをお目にかけました」
「あ、いいんです。それより……」
「あぁ、何をするか、ですよね。今日は、クララ様にファッションについて教えるよう、ライリー様から言われております」
「……ファッション?」
思わず言い直してしまったが、これは本当の事らしい。ラナ、ルーナ、スーファの三人は、姿勢を正したままコクンと頷く。
部屋に出ている物から推測すると、おおよそ服装の事なのだろうが、本当に合っているのかが分からずにキョトンとしてしまった。
「とりあえず、クララ様に似合いそうな洋服をお持ちしますので、ここで待っていてくださいね!」
「え、あ、はい」
クララの返事を聞いたか聞いていないかといったスピード感で洋服の方へと走っていく三人。
クララは、しばらく三人の洋服選びの様子を見ていることになるのであった——。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます