第24話 ライリーの家
「で、ライリー様? 私、ここまで来たんだけど?」
ちょっとだけ怒り気味のクララ。そんなクララの思いとは裏腹に、ライリーはクララが来たのを確認すると何かうれしいことがあったときにするような笑顔を浮かべた。
「クララ様! 待ってたよ。今から俺の家に行くんだ。ちょっと付き合ってね」
「あなたの家に行くの? 私は良いけど、変な噂にならないかしら?」
クララが心配しているのは、婚約している訳ではないのに男女が一緒に家へ行くことを言っている。
普通、婚約をしていない場合は異性の家に訪ねるのはよくないものとされている。
しかし、今ライリーが言っているのはそれを無視した発言なのだ。
「まぁ、多分大丈夫。それに、俺の家はちょっと離れたところにあるから」
「あぁ、そうね。あなたの家が近いところにあって、万が一襲われでもしたら、私たち王国民があなたの国に顔向けできなくなるものね」
「そういうこと。それに、俺の国では友達とか仲間なら異性でも家に入れてオーケーだし」
「ここ……あなたの国ではないのだけど」
あきれた感情のこもった鋭い目をライリーに向けるクララ。まあまあとその視線をスルーしつつ、馬車の止まっているところへ足を向ける。
クララは微妙に納得していなかったのだが、ライリーの後ろをついていき、馬車へ向かう。
「ライリー様、馬車はどこにあるの?」
「この先をちょっと歩いていったところ。周りの目につかないように少しだけ分かりにくいところに止めてもらっているんだよね」
「へぇ〜。あなたも大変ね」
「クララ様ほどじゃあないけどね〜」
そう言うと、ライリーは斜め上を向いて歩き出す。それでもクララがついてきやすいように歩幅を合わせている。
そんな優しい気遣いがうれしいクララ。やっとライリーに付き合うのも悪くないと思うようになった。
「クララ様、一緒の馬車になっちゃうけど、いい?」
「もうそれしか選択肢がないのでしょう? なら、あなたと一緒に乗るしかないじゃない」
「さすがクララ様。物わかりが良い〜!」
「もう、早く行くわよ!」
照れくさくなったクララは歩く速さを速める。それに追いつくようにライリーも速く歩いていった。
***
「ついたよ。クララ様」
「え、えぇ」
ライリーの一声に、頷きながら眠そうに目をこするクララ。距離のあるライリーの家へ向かうとき、疲れから眠くなってしまったクララは、馬車の壁に頭を寄せて眠っていた。
ライリーは先に馬車から降りると、まだ眠そうなクララに手を差し出す。降りる手伝いをしようという心の表れだ。
素直にその好意を受け取って馬車を降りると、クララの目にはまず出迎えに来ていた一人の男性が目に入った。
「お帰りなさいませ。ライリー様」
「ただいま。今日はクララ様がいるんだけど、良いかな?」
「あぁ、ライリー様がおっしゃっていたお方ですね。お待ちしておりました。準備はできていますよ」
男性はクララにも笑顔を向ける。クララはライリー以外に初対面でにらみを向けてこない人を見たことがなかったので、警戒してしまう。
だけど、警戒する必要も無かったようだ。
「大丈夫、ジェイは俺が小さい頃から見てくれてる信頼できる執事だよ。クララ様が思っているようなヒドいことはしないから。俺が保証する」
「まぁ……私にちゃんと接してくれてるライリー様が言っているのであれば、本当なのよね。信じてみるわ」
「ありがとう」
うれしそうな笑顔を浮かべるライリー。クララもまた、小さく笑顔を返した。
「じゃあ、ジェイ。クララ様を案内してくれる?」
「はい、ライリー様」
クララのことを手招きするジェイ。クララは、チラチラと振り返りながらついて行く。
「ライリー様? 一体何が始まるの!?」
「まぁまぁ、楽しんでね〜!」
大きく手を振って送り出すライリー。クララの頭上にはクエスチョンマークが浮かんだまま、ジェイによって家の中へ連れ込まれたのであった。
つづく
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